中国が「MI6のスパイ拘束」を発表した「2つの目的」
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キヤノングローバル戦略研究所主任研究員でジャーナリストの峯村健司が1月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。英情報機関「MI6」のスパイを拘束したという中国の発表について解説した。
中国が英情報機関「MI6」のスパイを拘束したと発表
飯田)中国がイギリスの情報機関「MI6」のスパイを拘束したと発表しました。
峯村)気軽に「発表」と言いますが、私が中国にいた時代ではあり得ない話です。そもそもスパイ組織である国家安全省が、中国のSNSである「微信(WeChat/ウィーチャット)」を使うなど信じられません。積極的に発表し始めたのはまだ1年ぐらいですが、衝撃ですよね。しかもスパイ事件の内容を総統ディテールを含めて発表しています。これは習近平政権3期目のいちばんの特徴です。
発表することの2つの目的
飯田)積極的に表に出すことで、抑止力になるのですか?
峯村)理由は2つあります。1つは国内に対する警鐘・警告ですね。「わかるかお前ら、こうなるぞ」という見せしめが1つ。
飯田)「海外に協力するとこうなるぞ」と。
峯村)あと、例えば今回はイギリスのMI6でしたが、アメリカのCIAなどに対しても、「お前らは散々やっているけれど、我々だってお前らを捕まえているのだぞ」という報復ですよね。
飯田)なるほど。去年(2023年)にCIA長官が、「壊滅していた中国国内のネットワークが再建できた」というような話をしていましたが。
2010年から12年にかけてCIA協力者が国家安全省のなかで公開処刑 ~以来、人的ネットワークは修復されていない
峯村)私が古巣(朝日新聞)にいたときに書いたのですが、2010年から12年にかけて、十数人のCIA協力者が処刑されたのです。ダブルスパイがいて、そのスパイが連絡先から本名や暗号まですべて漏らしていたことがあり、公開処刑もされています。公開処刑と言っても市内で行ったわけではなく、国家安全省のなかの庁内で射殺したと言われており、庁内放送で流したらしいのです。
飯田)省庁のなかで。
峯村)「こうなるぞ」という見せしめですよね。かなり壊滅的な被害が出たと言われましたが、そのあと、いろいろな方法で改善し、かなり当時のレベルに戻ったとは言われています。ただ、この人的ネットワークを「ヒューミント」と言うのですが、人を使ったスパイに関してはまだ回復できていないようです。
飯田)そうなのですね。
峯村)その足りない分を、例えばサイバーなどのやり方で補い、何とか戻している状況ですが、私の聞いている話だと人的ネットワークは戻っていないようですね。
飯田)では、今回のニュースも、せめぎ合いの1つかも知れない。
峯村)完全にそうですね。今度はイギリスの諜報機関に対しても「宣戦布告だ」という意味が込められています。
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