台湾上空「衛星通過」は 中国の「影響力工作」が洗練化されている1つの例

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キヤノングローバル戦略研究所主任研究員でジャーナリストの峯村健司が1月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。台湾上空を通過した中国の衛星について解説した。

中国の習近平国家主席=2022年10月、北京の人民大会堂(共同) 写真提供:共同通信社

中国の習近平国家主席=2022年10月、北京の人民大会堂(共同) 写真提供:共同通信社

中国の衛星が台湾上空を通過

台湾国防部の発表によると、1月9日午後3時すぎに中国が発射した衛星が台湾本島南部の上空を通過し、携帯電話を通じて住民に警戒を呼び掛けるメッセージが警報音とともに届いた。

飯田)ものものしい話ですね。

四川省の西昌衛星発射センターから打ち上げられた衛星

峯村)これは「来たか」と思い、すぐに台湾に連絡しました。しかし、送られてきたメッセージを見たら、台湾語では「衛星発射」と出ていたのですが、英語の方を見たら「ミサイル」と出ていて、「これは何だ」と思っていました。あとで台湾国防部がお詫びを出していましたが、結果としては衛星だった。

飯田)衛星だった。

峯村)実際、中国の報道を見ていると、同じタイミングで四川省の西昌衛星発射センターから衛星を載せたロケットを打ち上げたと発表しています。「アインシュタイン・プローブ衛星」というらしいですが、これを打ち上げたそうです。この宇宙センターはすでに500回以上衛星を打ち上げています。

飯田)衛星打ち上げを。

峯村)おそらく、それを台湾側が「ミサイル」と捉えたのではないかと見ています。それだけ台湾がピリピリしているということです。打ち上げたロケット自体がもともと、中国の「東風5号」と呼ばれる大陸間弾道ミサイルと同じベースでつくったものなので、見分けるのはかなり難しい。上に乗っているのが「衛星なのか、弾頭なのか」で全然違ってくるため、間違えても仕方がないところはあります。

今回の衛星打ち上げは中国の「影響力工作」が洗練化されている1つの例

飯田)この一報が入ったとき、かつて台湾海峡でミサイル演習を行った結果、中国が意図しない人が勝ったことがあったではないですか。総統選に向けて、また下手を打ったのかと思ったのですが、そこはどうなのですか?

峯村)さすがに中国も学習しています。私もギリギリで中国が何か軍事的挑発をやってくるのではないかと思っていましたが、やはり2019年のトラウマがあるのでしょう。蔡英文さんの支持率が10%台まで落ち込んだなか、習近平氏が強硬に「武力行使も辞さない」と1月の頭に発表してしまい、「大変だ」となって(蔡英文さんの)支持率が持ち直したことがあったので、「強硬ではダメなのだ」と。いわゆる影響力工作が洗練化されている1つの例だと思います。中国はうまくやっていますね。

飯田)今回もそう思わせたけれど、「違うよ、これは衛星だよ」と即座に出した。

民進党が知っていて利用した可能性も

峯村)一方で、これを民進党側が利用したところもあると思います。誰が見ても衛星発射センターだとわかるわけですし。

飯田)打ち上げたところが。

峯村)ICBMはアメリカを射程に収めており、台湾を攻撃するものではありません。あえて総統選前に危機感を煽る。民進党の支持を得るためにこういう発表をした可能性もゼロではないと思います。

飯田)お互いにやり合っている。

峯村)台湾は親日だし、皆さん、いいイメージを持っていますが、もともと国民党の流れがある人たちです。中国と同じルーツがあるわけで、只者ではありません。影響力工作やスパイなど、そういうところは彼らも巧みにやっています。

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FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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