米ブリンケン国務長官が何度も中東を訪れる「深刻な事情」

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が1月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米ブリンケン国務長官とパレスチナ自治政府・アッバス議長の会談について解説した。

ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ラマラで会談するブリンケン米国務長官(左)と自治政府のアッバス議長。=2024年1月10日 AFP=時事 写真提供:時事通信

ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ラマラで会談するブリンケン米国務長官(左)と自治政府のアッバス議長。=2024年1月10日 AFP=時事 写真提供:時事通信

米ブリンケン国務長官がパレスチナ自治政府アッバス議長と会談

飯田)アメリカのブリンケン国務長官は年明けに中東を歴訪し、1月10日にはパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談しました。

宮家)ブリンケンさんはガザ地区とヨルダン川西岸地区について、あくまで「パレスチナ暫定自治政府の下で統治できるよう、暫定自治政府の改革の必要性について協議した」と言っています。要するに、パレスチナ自治政府が統治できていない、ということなのです。アッバスさんは確かにリーダーなのですが、選挙で選ばれていたのは2006年までです。

飯田)「何年前なのだ」という話ですね。

宮家)イスラエルもイスラエルですが、パレスチナ側も相当問題があります。

飯田)18年も前の選挙では、正当性にも疑問が出てきます。

宮家)人を育てないのか、居心地のよさにあぐらをかいているのかは知らないけれど、浮かばれないのはパレスチナの一般庶民です。ガザにはハマスがいて、やりたい放題やっています。2006年の選挙でハマスが勝ったのですが、ハマスもそのあと選挙をやっていないのだから、民主主義とは程遠い、さみしいなという気がします。

ブリンケン国務長官が何度も中東へ行く本当の理由

宮家)アメリカの国務長官は去年(2023年)も含め、最近何回も中東へ行っています。なぜ相当な働きかけをしているのか。もちろん、アッバスさんに「しっかりやれよ」と言い、ネタニヤフさんに「やりすぎるなよ」と働きかける意味もありますが、我々にとって最も大事なことは、この問題がガザ地区だけに収まらず、ヒズボラ……レバノン南部へ拡大しているわけですよね。

飯田)そうですね。

宮家)それだけではなく、イエメンにはフーシ派がいて、彼らはなぜか巡航ミサイルを持っているのです。イエメンで巡航ミサイルがつくれるとはとても思えません。どこかの国が援助しているに違いないのだけれど、そういう形で今や戦闘は紅海にまで拡大しているわけです。先日、イラン国内で爆破テロがあり、「あれはイスラエルだ」「いや、そうではない」といった議論もありましたが、結果的にはイスラム国(IS)によるものでした。

飯田)イスラム国(IS)が犯行声明を出しました。

宮家)イランをめぐっては、ああいう形で物事が複雑化しています。いままでは、イランとアメリカは直接戦わなかった。イランはハマスやヒズボラ、フーシ派を使って代理戦争をしてきたわけです。それが今後はどこかで間違って、シリアでは一部行われていたけれど、イランが直接アメリカを叩くなどの事態になれば、今回の戦闘がガザに限定された小競り合い程度だったものから湾岸地域に波及するかも知れない。もしそれが海上戦闘になった場合、下手をするとそれはホルムズ海峡で行われるのです。日本の石油の約9割、天然ガスのかなりの部分が止まってしまう可能性もあります。

飯田)海上での戦闘になれば。

宮家)備蓄があるから、すぐに影響が出るとは思わないけれど、そんな状況になるかも知れません。「それなのに、日本はちょっとのんびりしすぎではないか?」と思います。ブリンケンさんは今戦闘を拡大させないように一生懸命なのですから。

飯田)何とか抑えようとしている。

宮家)単にパレスチナやイスラエルだけではなく、周辺のアラブ諸国を全部回っていますから、相当大きな危機感を持っているのだと思います。

イランが石油タンカーを拿捕

飯田)1月11日、イランがマーシャル諸島船籍の原油タンカーをオマーン湾で拿捕したと発表しました。拿捕されたのは「セント・ニコラス」で、アメリカが2023年に制裁違反として拿捕した船舶です。イラン側は米国の対イラン制裁に対する報復措置だと説明しているようです。

宮家)これまでのように戦闘がコントロールされているならいいのですが、コントロールされていない場合の恐ろしさを考えなくてはいけません。

飯田)そして、我が国にとっても他人事ではない。

宮家)そういうことです。日本のエネルギーは大事ですよ。

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