「米軍によるフーシ派攻撃」は、東アジアの安全保障にも大きな影響を与える

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地政学・戦略学者の奥山真司が1月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。アメリカによるテロ組織再指定を「滑稽だ」と批判したフーシ派の指導者、アブドルマリク・フーシ氏について解説した。

2023年9月28日、米アリゾナ州テンピで演説するバイデン大統領(米アリゾナ州テンピ) AFP=時事 写真提供:時事通信

2023年9月28日、米アリゾナ州テンピで演説するバイデン大統領(米アリゾナ州テンピ) AFP=時事 写真提供:時事通信

フーシ派指導者が、アメリカによるテロ組織再指定を批判

イエメンの親イラン武装組織フーシ派の指導者アブドルマリク・フーシ氏は1月18日のテレビ演説のなかで、アメリカによるテロ組織再指定を「滑稽だ」と批判。アメリカやイギリスの攻撃に対抗を続けると強調した。

飯田)フーシ派が紅海で商船を狙って攻撃を仕掛けていることに対し、アメリカなどが既にオペレーションを始めています。

奥山)報復措置という形で攻撃を仕掛けています。特に今回はアメリカ、イギリス、オランダ、バーレーン、カナダ、オーストラリアが共同で空爆を行い、それに対抗してフーシ派もミサイルやドローンで米国企業所有の貨物船を攻撃しています。

紅海でのフーシ派の攻撃が与える世界経済への影響

奥山)これは世界経済にとって、とんでもないインパクトがあります。紅海の出口であるバブ・エル・マンデブ海峡や、その先のスエズ運河は、世界の海運の約3割が通ると言われています。ここを攻撃されたことで世界の貨物はいま、アフリカの先端にある喜望峰を回らなければならないのです。例えばIKEAのように中国でつくった家具などをヨーロッパへ運ぶ場合、貨物船がスエズ運河を通れないので、わざわざ南回りで行く必要がある。そうなると10日前後のタイムロス、および燃料費も約3割増しになるのです。

飯田)そうですね。

奥山)このインパクトは大きい。「どこまでアメリカがフーシ派を抑えるのか」ということについて、疑問に思っている部分もありました。2010年代に入ってからは、オバマ政権が「我々は世界の警察官ではない」と宣言しています。

世界の覇権国であるアメリカが「世界経済に影響を与える海の通り道を潰すものを許さない」という意思を示したことは大きい

奥山)ところが今回、バイデン政権はアメリカ主導で報復措置を行った。世界の海の通り道は国際的にみんなが使うもので、それが世界経済を下支えしている。ある意味のインフラではないですか。

飯田)インフラですね。

奥山)そのインフラを邪魔するフーシ派に対し、攻撃する形で「守ろう」という意思を示したことは、評価するべきだと思います。アメリカは覇権国と言われ、世界秩序を守る能力を持っていた。ただ、世界のグローバルな公共財である「海の通り道を守る」という意思はあまり持っていないと思われていました。しかし今回、「世界経済に影響を与える海の通り道を潰すものは許さない」と示したのは、意義があると思います。

東アジア地域の安全保障に関して「アメリカの意志を試す」という意味でも大きい

飯田)海の安全や自由をここまでアピールしたのは、南シナ海における中国への牽制という意図もあるのですか?

奥山)それもあると思います。今回の話は、東アジア地域の安全保障に関しても、アメリカの意志を試すという意味では大きい。東アジアに絡む問題だと、今回フーシ派は対艦弾道ミサイルを商船に対して撃ち込んでいます。イラン製だと言われていますが、同じく対艦弾道ミサイルを開発している国として、DFシリーズで知られる中国がいるではないですか。

飯田)「東風」などと呼ばれています。

奥山)今回、対艦弾道ミサイルが使われ、それに対してアメリカが「徹底的に潰す」という姿勢を見せたのは重要だと思います。

フーシ派をアメリカ側が逆に抑え込む形で、紅海の海の道を守ったことは大きい

飯田)今後、フーシ派、あるいはその裏にいるイランがどう出てくるのか。イスラエルの問題が直接的な引き金だと言われていますが。

奥山)フーシ派自身が「神は偉大なり。アメリカに死を。イスラエルに死を。ユダヤ教徒に呪いを。イスラムに勝利を」というスローガンを持っているのです。そういう団体が、「イスラエルやアメリカに対抗しなければならない」と自分たちの目標を掲げ、彼らのなかで1つの正当化の理由としている。それをアメリカ側が逆に抑え込むような形で、紅海の海の道を守ったのは、大きな意味がある行動だと思います。

日本がシーパワー側に寄っていくことを改めて示した

飯田)紅海の入り口、バブ・エル・マンデブ海峡の先には、自衛隊の拠点が置かれたジブチがあります。海賊対処に関しては日本も動いていますが、今回のオペレーションには入っていない。

奥山)日本政府が攻撃自体を支持しているわけではありませんが、意義としては賛成しているので、海の安全がグローバル経済、ひいてはリベラルな国際秩序に直結することは認識しています。シーパワー側に寄っていくことを改めて示したのです。

飯田)もともとのシーパワー国であるオランダは入っています。

奥山)かつてオランダが、海で世界の覇権を握っていた時代がありましたが、オランダは未だにヨーロッパ最大の港であるロッテルダム港を持っています。オランダが今回入ってきたのは、「我々の海運・物流を絶対に守る」という強い意思によるものだと思います。

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