ジャーナリストの佐々木俊尚が2月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。反対多数で否決された盛山文科大臣に対する不信任決議案について解説した。
盛山文部科学大臣に対する不信任決議案、反対多数で否決
衆議院は2月20日に本会議を開き、2021年の衆院選で世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体から支援を受けたとの疑惑をめぐり、立憲民主党が提出した盛山文科大臣の不信任決議案を与党と日本維新の会などの反対多数で否決した。
飯田)野党の対応が割れた形になりました。
旧統一教会への解散命令請求をはじめ、就任後の仕事に影響は出ていない
佐々木)旧統一教会と関係が深いため、文科大臣としての職責を果たしていないのであれば問題だと思いますが、実際には就任後、旧統一教会に関しては解散命令請求も行い、いまも行政手続きまで進めています。何も影響はなかったことが1つ。
飯田)さまざまな手続きに。
佐々木)もう1つは、例えば写真を一緒に撮っていたとか、握手したから「関係がズブズブだ」と言うのだけれど、そうでしょうか? 朝日新聞によると、旧統一教会系の機関誌を受け取っていたと報道されていますが、盛山さんは「勝手に送ってきたのでわからない」と言っており、おそらくその通りなのだと思います。
選挙中に多数送られてくる政策協定には端からサインしているのが実態
佐々木)もう1つの問題は政策協定です。旧統一教会と政策協定があったのではないかと言われています。「政策協定」という言葉だけ聞くと、旧統一教会と政治的につながっているのではないかという話になるのですが、先日、ある番組で舛添要一さんと一緒になったのです。
飯田)舛添さんと。
佐々木)舛添さんは東京都知事を務め、その前は参議院議員で労働大臣に就任するなど、選挙をたくさん経験されています。都知事を辞めて7年ぐらい経つので、いろいろ喋ってくれたのですよ。話によると、ものすごくたくさんの団体から政策協定の文書が送られてくるそうです。選挙期間中は忙しいので、とにかく来たものに端からサインして渡しているだけだから、「中身なんか殆ど見ていませんよ」と言っていました。見ていないのもどうかと思いますが、選挙というのはそんなものなのだと思います。それをもって「政策協定があったからけしからん」と言い切っていいのかどうか。
盛山大臣を責めるより、日本の選挙実態を根本的に変えるための議論をするべき
佐々木)もちろん、なかには本当に納得して政策協定にサインしている人もいるだろうから、批判がまったく無意味だとは言いません。しかし、実態として選挙時はとにかく少しでも支援が欲しいので、選挙中に政策協定を申し込まれたら、次々とサインする。「写真を撮りたい」と言われれば一緒に写真を撮り、「サインをください」と言われたらサインする。日本の選挙はそうやってきたわけですよね。
飯田)日本の選挙は。
佐々木)もちろん自民党だけではなく、野党側だって重々承知の上で国会で攻撃しているわけです。「いけない」と言えばいけないのだけれど、実態としてそういう選挙戦を長年日本の政治がやってきたのも事実です。そうすると、たまにこうやって注目を浴びた盛山大臣のような人を「ズブズブだ」と責めるよりも、「実態を根本的に変えた方がいいのではないか」という議論に持っていかなければ、意味がないと思います。
飯田)結局「あの人のことは知っている」とか、「一緒に写真を撮ってくれていい人だった」というようなところが投票の動機になることもある。鶏が先か卵が先か、という関係性ではありますが。
政治資金の使い方も「グレーの部分が多すぎる」構造を変える議論をするべき
佐々木)政治献金の裏金問題もありました。政治献金を裏金として自分の懐に入れ、鯉を買ったり大豪邸を建てたりしているイメージがあるけれど、いまの政治家はそんなに私腹を肥やせないですから、実際は普通のマンションに住んでいる方がほとんどです。結局、そのお金は結婚式に持っていくご祝儀に使ったり、香典に使ったり。なかには表に出せないお礼をしなければいけないケースもあって、そのような目的で使っているのであって、別に私腹を肥やしているわけではないのです。
飯田)実際には。
佐々木)ただ、「裏金扱いがいいのかどうか」と言うと、よくはないわけです。全体として選挙の在り方も、政治資金の使い方もグレーの部分が多すぎる。これをもっと正常化するためには、1人ひとりをあげつらって「けしからん」と言うよりも、構造を変える方向に持っていくべきではないでしょうか。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。