岸田総理は「最悪のサッカーPK戦」を戦っているようなもの
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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が3月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。関係議員80人規模を処分する方向で調整に入った自民党派閥の裏金事件について解説した。
自民党の政治資金パーティー裏金事件をめぐり、関係議員80人規模を4月上旬にも処分へ
自民党は派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、安倍派・二階派の議員合わせて80人規模を4月上旬にも一斉処分する方向で調整に入った。また、岸田総理大臣は3月18日の参議院予算委員会で、議員に対する処分と衆院解散の時期について、処分前の解散は考えていないと明言した。
伝統歌舞伎のような政治をされても素人にはわかりにくい
宮家)私は立場上言いにくいこともあるのですが、外交担当ですので少し自由に言わせてもらいます。これは英語で言うと「Kabuki Play」でしょうね。
飯田)歌舞伎ですか?
宮家)歌舞伎は観ている側も筋書きを知っており、どういうセリフが出るかわかっているわけです。「本音は言わないぞ~」などと見得を切っている歌舞伎のようであり、玄人にとってはいいと思います。なぜなら企業・団体献金をやめて完全に可視化したら微妙な政治はできなくなり、結局は金持ちと独裁者がはびこる政治になるからです。少なくとも玄人はそう思っている。
飯田)完全に献金をやめて可視化すれば。
宮家)しかし、素人は「何を言っているのだ?」となりますよね。しかも我々のような素人は過去10年以上、安倍政権のもとで「スーパー歌舞伎」を見てきたわけです。スーパーですから、空を飛んだり、初めて観るようなことを突然するわけですよ。こうして素人の観客たちは「うわあ、すごい」という状況に慣れてしまったから、急に伝統歌舞伎を観せられても「あれ? 空は飛ばないの?」となりますよね。
飯田)「想像していたものと違うぞ」と。
宮家)伝統的な歌舞伎でもいいのですが、それは玄人の世界であり、素人には物足りないのではないか。これがまず第1点です。
「最悪のサッカーPK戦」を戦わなければならない岸田総理
宮家)もう1点、おもしろいなと思ったのは、やはり岸田総理にとってこのゲームは難しいということです。自民党に対する国民の信頼は地に落ちており、支持率も低い。だから起死回生の一手を打たなくてはいけないのですが、なかなか打てないのです。完全に防衛戦で、私に言わせれば「最悪のサッカーPK戦」です。自分のゴールに向けてPK戦をしているわけですから。
飯田)常にオウンゴールしているのですね。
宮家)意図的に外せば「外した」と怒られるし、入れたらオウンゴールですよね。どうやっても勝てないわけで、これは辛いと思います。完全に可視化することで、必ずしもいい政治になるとは思えません。なおかつ、それを本音として言っても、誰も信用してくれないし、素人にはウケませんので、総理も辛いだろうなと思います。
野党は対案を出して戦うべき
宮家)もう1つ言わなくてはいけないことがあります。野党が責めるのはけっこうなことです。しかし、何十年も前から見ているけれど、国会は相変わらずですよね。重箱の隅をつつくのはいいですが、「対案は何なの?」と思います。本当なら法律をつくって直すべきことを直さなくてはいけないわけです。自民党に対して「法案をつくれ」と言うなら、自分で対案を出せばいいではないですか。どうして出さないのかと思います。野党各党の意見が違うからなのか、団体献金に関して困るからなのかはわかりませんが、対案を出し、法案レベルの議論にして「この文言を入れるべきだ」「いや、抜くべきだ」などと議論するのが本来の国会議員ではないでしょうか。
飯田)対案を出して。
宮家)彼らはマスコミでもなければ検察官でもないのです。法律をつくる権限を持っている人たちなのですから、「法律をつくってくれ」と言いたい。
飯田)企業・団体献金をやめて、その分のお金をどこに出すのか。
宮家)目的は透明化だけではなく、その先にあるのは健全な政治をすることですよね。そのために何をしなくてはいけないのか実はわかっている筈なのに、目先の「選挙に負けないか、勝てるか」というようなことばかり考えているのかどうかは知りませんが、とにかく対案を出して戦うことが本来の政治闘争だと思います。
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