世界の優れた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞(公益財団法人 日本美術協会主催)の第35回受賞者が、9月10日(日本時間10日18時)、東京、ロンドン、パリ、ローマ、ベルリン、ニューヨークの各都市で発表された。
今年の受賞者には、見知らぬ人々を自宅に招き、自身のベッドで眠る姿を撮影、インタビューを加えて作品にするなど、写真と言葉による作品で知られるソフィ・カル、椅子やテーブルなどの日常的な素材を用いて、政治的暴力から生じる喪失、悲哀、記憶、痛みなどの感情を表現するドリス・サルセド、創造性と革新性で建築に新たな可能性を切り拓き、災害支援において建築家としての新たな役割を実践する坂 茂、モーツァルト、シューベルトを主なレパートリーとし、音楽教育から社会活動にも取り組み、世界各地で後進の指導を行なっているピアニストのマリア・ジョアン・ピレシュ、時代の奔流に向き合う人間を描き、多くの観客を魅了する映画で、2度のアカデミー賞監督賞を受賞した台湾出身のアン・リーの各氏が選ばれた。
また、同時に発表された第27回若手芸術家奨励制度の対象団体には、インドネシア・ジャカルタで音楽、ダンス、演劇、文学、映画、美術など、さまざまなジャンルの表現活動を推進し、若手芸術家を支援している民間の複合芸術施設、コムニタス・サリハラ芸術センターが選ばれた。
■絵画部門 ソフィ・カル(フランス)
■彫刻部門 ドリス・サルセド(コロンビア)
■建築部門 坂 茂(日本)
■音楽部門 マリア・ジョアン・ピレシュ(ポルトガル/スイス)
■演劇・映像部門 アン・リー(台湾)
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第27回 若手芸術家奨励制度 対象団体
■コムニタス・サリハラ芸術センター(インドネシア)
授賞式典は、11月19日(火)にオークラ東京で行われる。5部門の受賞者には、それぞれ顕彰メダルと感謝状、賞金1500万円が贈られる。若手芸術家奨励制度の対象団体には、9月10日(火)に東京での発表記者会見の席上、奨励金500万円が贈られた。
第35回 高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者
絵画部門 ソフィ・カル(フランス)
フランスを代表するコンセプチュアル・アーティストの一人。他者へのインタビューを通して詩的な要素を含む話を探求し、写真と文字を組み合わせた作品を発表してきた。
演劇・映像部門 アン・リー(台湾)
米国を中心に活動する台湾生まれの映画監督。洋の東西を問わず、時代の奔流と向き合う人間を描く芸術性と、多くの観客を引きつける娯楽性を両立させた作品を生み出し、世界的な名声を得ている。
彫刻部門 ドリス・サルセド(コロンビア)
南米コロンビア・ボゴタを拠点に活動している彫刻家、インスタレーション・アーティスト。暴力、喪失、記憶、痛みをテーマに、そのメタファー(隠喩)として椅子など木製家具や衣類、花びらといった身近な素材を再利用、再構築しながら表現している。
建築部門 坂 茂(日本)
独創的な素材、紙管の選択と革新的デザインで建築に新たな地平を切り拓いた。
音楽部門 マリア・ジョアン・ピレシュ(ポルトガル/スイス)
現代を代表するピアニストの一人。3歳のときに独学でピアノを始め、4歳で初舞台を踏む。譜面を読むより先に、曲を耳で覚えて弾いていたという。
第27回若手芸術家奨励制度 コムニタス・サリハラ芸術センター(インドネシア)
コムニタス・サリハラ芸術センターは、音楽、ダンス、演劇、文学、映画や美術などの多様なジャンルで表現活動を推進する、インドネシア初の民間複合文化施設。軍事政権下で芸術活動の自由を求めて1995年に誕生した組織のコムニタス・ウタン・カユ(KUK)が母体で、2008年、アーティスト、ライター、ジャーナリストらの支援で首都ジャカルタに設立された。「サリハラ」はクマツヅラ科の花の名に由来する。
活動の趣旨は、思想と表現の自由を守る芸術活動を推進し、多様性を尊重して、芸術的資源、知的資源を育成すること。そのために長期的な視野で実験的なプログラムを支援し、観客が批判的な目を養うことにも取り組んでいる。
センターでは、3,800平方メートルの敷地に、ブラックボックス型(舞台と客席が一体となった四角い空間)の室内劇場、ダンスと音楽のスタジオ、アートギャラリー、ショップ、カフェなどがあり、演劇やダンスの公演、音楽コンサート、展覧会、読書会、討論会、ワークショップなど、年間100件以上のプログラムを実施している。