世界の優れた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞(公益財団法人 日本美術協会主催)の第34回受賞者が、9月12日、ワシントンDC、ロンドン、パリ、ローマ、ベルリン、東京の各都市で発表された。
今年の受賞者には、鉛筆や木炭で日用品や自然を緻密に描き出す一方、第二次大戦や難民キャンプでの経験を彷彿とさせるモチーフの作品で知られるヴィヤ・セルミンス、光、水、風など自然界の基本的要素を駆使したインスタレーションで知られ、地球温暖化問題に向き合う創作活動を続けるオラファー・エリアソン、西アフリカの故郷の学校、医療施設などのプロジェクトを手がけ、伝統と先進技術を融合した建築プロセスを通して地域経済を活性化させてきたディエベド・フランシス・ケレ、グラミー賞でジャズ部門とクラシック部門を同時受賞し、「黒人のジャズ」、「白人のクラシック」という固定観念を覆し、音楽界全体に大きな影響を与えたトランペット奏者のウィントン・マルサリス、舞踊、絵画、照明、彫刻、音楽、脚本と、さまざまな芸術を融合し、独自の演劇世界を創造する演出家、舞台美術家、デザイナーのロバート・ウィルソンの各氏が選ばれた。
また、同時に発表される第26回若手芸術家奨励制度の対象団体には、米アラバマ州の貧しい農村地区で、建築を学ぶ学生が住宅、公共建築などを建設し、地域の活性化に貢献しているルーラル・スタジオと、ニューヨークのハーレム中心部で2~18歳の生徒に音楽、ダンス、演劇、ビジュアルアート、デザインを教えるハーレム芸術学校の2団体が選ばれた。
■ 絵画部門 ヴィヤ・セルミンス (アメリカ)
■ 彫刻部門 オラファー・エリアソン (アイスランド/デンマーク)
■ 建築部門 ディエベド・フランシス・ケレ (ブルキナファソ/ドイツ)
■ 音楽部門 ウィントン・マルサリス (アメリカ)
■ 演劇・映像部門 ロバート・ウィルソン (アメリカ)
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第26回 若手芸術家奨励制度 対象団体
■ ルーラル・スタジオ (アメリカ)
■ ハーレム芸術学校 (アメリカ)
授賞式典は、10月18日(水)に東京・元赤坂の明治記念館で行われる。5部門の受賞者には、それぞれ顕彰メダルと感謝状、賞金1500万円が贈られる。若手芸術家奨励制度の2団体には、9月12日(火)にワシントンDCでの発表記者会見の席上、奨励金250万円がそれぞれ贈られた。
第34回 高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者
絵画部門 ヴィヤ・セルミンス(アメリカ)
ニューヨーク・ロングアイランド在住の女性画家。緻密で繊細な筆致の絵画、ドローイングで知られる。
彫刻部門 オラファー・エリアソン (アイスランド/デンマーク)
ベルリンとコペンハーゲンを拠点に活動する美術作家。色、光、霧など自然界の要素を取り込み、人の知覚や認識に揺さぶりをかける作品で知られる。
建築部門 ディエベド・フランシス・ケレ (ブルキナファソ/ドイツ)
故国ブルキナファソを中心にアフリカ各地で、地元の材料や伝統的な知恵をいかしながら、サステナブル(持続可能)な建築を数多く手掛けてきた。
音楽部門 ウィントン・マルサリス(アメリカ)
ジャズ・ミュージシャン、作曲家、バンド・リーダー。卓越したトランペット演奏で、ジャズをアメリカ独自の芸術として保存・発展させる活動を続け、クラシック界でも名高い。
演劇・映像部門 ロバート・ウィルソン(アメリカ)
前衛的な作風で知られる米国の演出家。舞台美術や照明なども手掛け、ビジュアルアーティストの第一人者でもある。ドローイング、彫刻、家具のデザイン、ダンスの振り付け、作庭、建築など創作活動は幅広い。
第26回 若手芸術家奨励制度 ルーラル・スタジオ(アメリカ)
ルーラル・スタジオは、米国アラバマ州東部のオーバーン大学が建築学部のプログラムとして、州西部ニューバーン(人口180人弱)で運営する設計施工建築事務所である。
近年は、「住宅という土台の上に、他にどのような手伝いができるか」という発想で、食料、排水、教育、インターネットなど、社会の基本に対する不安に目を向け、野菜の自給自足や排水の浄化プログラム、住宅の管理費用を予測することで光熱費のむだを省くというプロジェクトにも取り組んでいる。
第26回 若手芸術家奨励制度 ハーレム芸術学校( アメリカ)
ハーレム芸術学校は、米国ニューヨークのハーレム中心部で毎年1,600人の生徒を指導している文化芸術センターである。
生徒は2歳から18歳が対象で、入学は自由。オーディションが必要な場合も芸術への関心を確認する程度で難しいものではない。生徒の80%がアフリカ系とラテン系の米国人。75%が経済的支援を受けている。年間予算は550万ドルで、その7割を寄付金で賄っている。トランペット奏者のハーブ・アルパートも2010年以来、計1,750万ドルを支援している。