絵本作家・田島征三 「怖過ぎる」とクレームが来て出版社が全部回収・裁断してしまった絵本

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黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(11月10日放送)に絵本作家の田島征三が出演。絵本『くもだんなとかえる』について、また新潟県にある木の実の美術館について語った。

田島征三

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。11月8日(月)~11月12日(金)のゲストは絵本作家の田島征三。3日目は、絵本『くもだんなとかえる』と木の実の美術館について---

黒木)『ちからたろう』で金のりんご賞を受賞なさって、いろいろなところから仕事が舞い込むようになって、それでもっと違ったものを描こうと思われて描いた本があるということですが。

田島)『くもだんなとかえる』というアフリカの民話がもとになっている絵本です。松谷みよ子さんが再話されていて、素晴らしい方の再話ですから文章も素晴らしいです。「くもだんな」の絵は恐ろしいのですが、その女房というのがもっと恐ろしいのです。密林のなかの話なので、だいたい怖い話なのです。その怖い話をもっと怖く描いてしまったのですね。

黒木)それで出版社の方にクレームが来た。

田島)そういうことで出版社としても困って、全部回収して裁断してしまったのです。

黒木)どんなにお子さんが怖がったか。でもそれは田島さんがもっと恐ろしいものを描こうと思われたからそれが完成したのですよね。

田島)そうです。怖がってほしかったのですよね。「老人は暗闇に向かって話しはじめた」という書き出しなのですよ。そして物語が終わったときに「“そうだったんだね”と暗闇は答えた」という感じで暗闇が1つのキャラクターを持って現れているわけですから、怖いですよね。

黒木)でもその文章だけ聞いていると、とても情緒がありますよね。

田島)いい文章なのですよ。

黒木)絵本作家としてだけではなくて、長年にわたってアート作品の創作も続けていらっしゃいます。流木や木の実を使ったものの美術館、そちらの方のお話も教えてください。

田島)十日町という新潟県でも過疎地です。そういうところを盛り上げようということで、2000年に「越後妻有トリエンナーレ」というのが始まったのです。その一環として廃校を美術館にしようということになりました。その小学校がなだらかな傾斜のいちばん下にあるのです。そこに住んでいる方は、みんなこの小学校の卒業生で、みんなの小学校だったのです。在学生が3人しかいなくなって廃校になった。

黒木)3人しかいなくなって。

田島)廃校になったので壊すしかないとなったときに、父兄の方たち、その村の人たちが「これを壊してしまったら俺たちの思い出は全部なくなってしまうのではないか」ということで僕が行って、僕の絵を飾る美術館にしろと言われたのだけれど、僕の絵を飾るのではなくて、この小学校全体をまるごと作品にしたいと思ったのです。最後の3人の子どもたちが主人公になった物語が、その校舎のなか全体に繰り広げられているという空間絵本ですね。それを流木や木の実でつくってあるという美術館です。

黒木)アートの空間ということですね。そこは観ることはできるのですか?

田島)できます。壁には、いままでの子どもたちの描いた絵などがそのまま貼りっぱなしなのですが、入るとこの絵本の世界へ入ることができるのです。

黒木)そうなのですね。

田島)元の校長室などが素敵なカフェになっているものだから、親子連れだけではなくて若いカップルなどが多いのです。

黒木)写真拝見させていただきましたがすごいですね。迫力がありますね。

田島)迫力があるでしょう。楽しいのですよ、すごく。

田島征三

田島征三(たしま・せいぞう)/ 絵本作家

■1940年・大阪府生まれ。幼少期を高知県で過ごす。
■多摩美術大学図案科卒業。東京日の出町で、ヤギやチャボを飼い、畑を耕す生活をしながら絵画、版画、絵本などを創作。
■1965年、初めての絵本『ふるやのもり』を出版。
■1969年、『ちからたろう』で第2回ブラチスラバ世界絵本原画展・金のりんご賞を受賞。後に同展国際審査委員を務めるなど日本を代表する絵本作家として活動。絵画・絵本・イラストレーション・エッセイ・造形作品等を発表し続けている。
■1998年より静岡県伊豆高原に移住し、木の実との新しい出会いもあり、近年、木の実など自然の素材を使ったアートを本格的に展開している。
■2009年、新潟県十日町市の廃校になった小学校を丸ごと絵本にした『空間絵本』を制作。廃校となった小学校の校舎を再利用し「絵本と木の実の美術館」を開館した。
■2011~2018年、日中韓平和絵本プロジェクトに尽力。
■2013~2019年、香川県大島のハンセン病元患者の療養所で、『青空水族館』『森の小径』『Nさんの人生・大島七十年』を制作。
■傘寿を迎えた2020年、少年時の原体験をモチーフにした絵本『つかまえた』で、生きものの命と向き合った生々しい感触を躍動的に再現するなど、デビュー以来、半世紀以上にわたって常に斬新で意欲的な挑戦をし続けている。
■2021年「第56回ENEOS児童文化賞」を受賞。

番組情報

ENEOSプレゼンツ あさナビ

毎週月曜〜金曜 6:43 - 6:49

番組HP

毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳

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