絵本作家・わたなべはるかさん~夢を叶えるきっかけは路上での販売
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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
今回は番組あてに、こんなお手紙をいただきました。
「八木さん いつも楽しくラジオを聴いています。私は4月に絵本を出版しました。高校生のときに絵本作家になりたいと思ってから、路上でポストカードを販売したり、10年ほど経ってようやく夢のスタートラインに立てました。そんな絵本を、八木さんの優しい心で読んでもらえたら嬉しいです……」
きょうは、路上での様々な出会いを通じて成長し、長年の夢を叶えた絵本作家さんのグッとストーリーをご紹介します。
2019年4月に出版された絵本『すきってなぁに』。ブルーの背景と幻想的な絵が印象的なこの作品。物語は、小さくてかわいい主人公の男の子と、青い鳥のこんな会話で始まります。
「みんな だれかを すきっていうけれど すきって どんな きもちなんだろう」
青い鳥は、男の子の問いかけにこう答えます。
「めに みえるもの すべてが かがやいて みえるよ。ありふれていた まいにちが とくべつに おもえるんだ」
「とっても かなしくなるときも あるよ。ひとりだったときよりも ひとりぼっちになったきがして むねが くるしくなるんだ」
男の子は、ぞうさんやうさぎさんなど、他の動物たちにも「すきってなぁに?」と問いかけて行きます。その答えを通じて「誰かを好きになる」という気持ちは何なのかを考えて行く男の子……。
この絵本を描いたのは、都内在住の女性絵本作家・わたなべはるかさん、30歳。
「私、思っていることをうまく言葉にできないタイプだったんです」と言うわたなべさん。心の奥にあるモヤっとした思いを表現する手段が「絵」でした。高校時代、ノートに落書きをしていたら、それを見た先生に「あなたの絵、面白いわね。ポストカードにしてみたら?」と言われ、「ああ、私、絵が描けるんだ!」と初めて自分の才能に気付いたそうです。
友達に「文章も面白いね」と褒められていたこともあり、「絵本作家になろう」と心に決めました。
大学生になって「思うだけではダメ、行動に移さないと」と考えたわたなべさん。新宿駅新南口近くの路上で、自作のイラストを売っている男性を見掛け「これだ!」とひらめき、すぐに声を掛けました。
「私も隣で絵を売っていいですか?」……その男性は驚きながらも親身になって、わたなべさんにアドバイスをしてくれました。それから毎週、大量に絵を描き、路上でポストカードを販売するようになったわたなべさん。やがてファンも付き、仕事の依頼も来るようになりました。
「牧場を経営しているんですが、牛のイラストを描いてもらえませんか? この絵が入った名刺を作りたいんです」
「結婚式のウェルカムボードを描いてください」
なかには「知り合いのカフェに絵を展示しませんか?」というお客さんも現れ、個展を開いたことも。
「路上に出て、たくさんの人と知り合ったことで、いろいろ道が開けました」
友達に子どもが生まれたとき、自分の描いたイラストを繋ぎ合わせ、絵本にして贈ったわたなべさん。たいへん喜ばれたので、別の絵本を作ったら買ってくれる人もいて、自信を深めて行きました。
29歳になったとき、「30歳までに出版社から絵本を出そう」と決意を新たにしたわたなべさんは、文芸社が主催するコンクールに応募。『すきってなぁに』がみごと入選し、この春、出版が決定。ついに「絵本作家になる」という長年の夢を叶えました。
物語の最後、主人公の男の子は「すきって きもちを ぜんぶ あつめたら きみだった」と気付き、こんな決心をします。
「きみに あいに いこう。めには みえないけれど きみを すきって きもちが こんなにも ぼくのなかに あるってこと つたえたいんだ」
わたなべさんは言います。「大切なのは、1歩前に踏み出す勇気です。私も自分の絵をみんなに見てもらいたいという思いが、路上に出るきっかけになりました。これからも、みんなが楽しんでくれるものを作って行きたいですね」
八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50
番組情報
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