絵本作家・田島征三 食べられなくなってしまった僕を救ってくれた恩人

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黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(11月8日放送)に絵本作家の田島征三が出演。ENEOS児童文化賞受賞の感想について語った。

絵本作家・田島征三 食べられなくなってしまった僕を救ってくれた恩人

田島征三

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。11月8日(月)~11月12日(金)のゲストは絵本作家の田島征三。1日目は、ENEOS児童文化賞受賞の感想について---

黒木)田島さんは50年以上にわたって絵本を描き続けていらっしゃる絵本作家でいらっしゃいますが、絵本だけでなくて絵画、イラストレーション、エッセイなども発表されて、流木や木の実など自然の素材を使ったアートワークも手掛けてらっしゃるそうですね。2021年6月、第56回ENEOS児童文化賞を受賞されました。おめでとうございます。

田島)ありがとうございます。

黒木)このENEOS児童文化賞は1966年に創設され日本の児童文化の発展に大きな業績をあげた個人または団体を顕彰する賞です。2021年は半世紀以上にわたって常に斬新で意欲的な挑戦を続け絵本文化をけん引してきた功績から田島征三さんが受賞されました。本当におめでとうございます。いかがでしたか?

田島)初山滋さんが最初の画家としての受賞者であり、長新太さんや瀬川康男さんなど、僕が尊敬をして、また友達のように慕っているような方が受賞されている賞であるので、この賞だけは、「えらいものをいただいてしまった」「僕でよかったのかな」という謙虚な気持ちになりました。

黒木)尊敬する方々やご友人が受賞されている賞であっただけに、ということですか?

田島)そうですね。僕は『ちからたろう』でいろいろな賞をいただいて世の中の人に知られたのですが、文章を書いたのは今江祥智さんです。今江祥智さんがいなければ、僕はこの仕事をしていなかっただろうと思います。

黒木)今江さんがいなければ。

田島)最初に出した絵本は『ふるやのもり』というもので、福音館書店の月刊絵本「こどものとも」から出ました。その本を出してくれた松井直さんは日本のいまの絵本を盛り上げてくれた功労者ですが、その松井さんと今江さんもこの賞を受けているのです。そんなところへ僕がご一緒させていただいていいのかしらという感じです。

黒木)いまおっしゃった『ちからたろう』は、今江さんが書かれた物語がより引き立つと言うのでしょうか。

田島)『ふるやのもり』という本は今江祥智さんも褒めてくれて、長新太さんや瀬川康男さん、堀内誠一さんなど皆さんが褒めてくれたのに、全然売れなかっただけでなく、「これは芸術家が芸術家ぶって子ども好みでない色を使ってとんでもないことをした」、「子どもの本の美しい花園を芸術家のエゴという泥靴で踏みにじるようなものだ」と新聞の評が出たのです。そんなことでとんでもなく不評を買って、僕は本当に食べていけなくなってしまったのです。

黒木)不評であったために。

田島)それを今江さんが助けてくれて、ポプラ社に『ちからたろう』の文章を持って行って、「これは田島征三に描かせろ」と言って僕に強引に描かせるようにしてしまったのです。

黒木)そういう素敵な思い出があるのですね。

田島)にもかかわらず僕は「文章が長すぎて絵が思い切り描けない」などと言って、今江さんに文句を言ったりしていました。今江さんも怒って「馬鹿野郎、ここがいちばんいいんだ」などと言って喧嘩しながらできた本です。

黒木)そうして生まれた『ちからたろう』なんですね。そういった田島さんの活動などを今週はいろいろとうかがいたいと思います。

絵本作家・田島征三 食べられなくなってしまった僕を救ってくれた恩人

田島征三

田島征三(たしま・せいぞう)/ 絵本作家

■1940年・大阪府生まれ。幼少期を高知県で過ごす。
■多摩美術大学図案科卒業。東京日の出町で、ヤギやチャボを飼い、畑を耕す生活をしながら絵画、版画、絵本などを創作。
■1965年、初めての絵本『ふるやのもり』を出版。
■1969年、『ちからたろう』で第2回ブラチスラバ世界絵本原画展・金のりんご賞を受賞。後に同展国際審査委員を務めるなど日本を代表する絵本作家として活動。絵画・絵本・イラストレーション・エッセイ・造形作品等を発表し続けている。
■1998年より静岡県伊豆高原に移住し、木の実との新しい出会いもあり、近年、木の実など自然の素材を使ったアートを本格的に展開している。
■2009年、新潟県十日町市の廃校になった小学校を丸ごと絵本にした『空間絵本』を制作。廃校となった小学校の校舎を再利用し「絵本と木の実の美術館」を開館した。
■2011~2018年、日中韓平和絵本プロジェクトに尽力。
■2013~2019年、香川県大島のハンセン病元患者の療養所で、『青空水族館』『森の小径』『Nさんの人生・大島七十年』を制作。
■傘寿を迎えた2020年、少年時の原体験をモチーフにした絵本『つかまえた』で、生きものの命と向き合った生々しい感触を躍動的に再現するなど、デビュー以来、半世紀以上にわたって常に斬新で意欲的な挑戦をし続けている。
■2021年「第56回ENEOS児童文化賞」を受賞。

番組情報

黒木瞳のあさナビ

毎週月曜〜金曜 6:41 - 6:47

番組HP

毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳

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