政策アナリストの石川和男が12月21日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。イギリス議会下院で11月29日、「安楽死」に関する法案が賛成多数で可決されたことに関連し、「安楽死」と「尊厳死」の違いや日本で法制化の動きが進まない背景について専門家と議論した。
イギリス議会下院は11月29日、終末期の成人患者が薬物の投与などによる「安楽死」を選ぶ権利を認める法案を、賛成多数で可決した。今後、2回目の下院採決を経て、上院で審議される。欧米では、終末期の患者は苦痛に耐え続けるのではなく、尊厳を保ったまま最期を迎える権利があるとして、「死を選ぶ権利」の法制化や議論が進んでいる。一方で、こうした動きに対して患者が周りに介護や経済面の負担をかけないようにと死を選ぶことにつながるおそれがあるなどとして、反対の声も上がっている。
今回のイギリス議会下院における「安楽死」法案の可決について、番組にゲスト出演した日本尊厳死協会副理事長の野元正弘氏は「驚いている。今までも比較的規模の小さな国で(安楽死に関する法制化は)進んできたが、人口7000万人弱もいるイギリスのような大きな国でも制度化されるんだな、非常に議論が進んでいるんだなと実感した」と感想を述べた。
また、「安楽死」と「尊厳死」の違いについて「日本語では全く違う。尊厳死は自然死で、希望しないかつ回復する可能性のないときに、延命の目的だけで医療をしないで欲しいというもの。安楽死は、薬や注射等で積極的に死期を早めるというもの」と解説。日本国内で法制化の議論が進まない背景については「人が亡くなるのを目の前で見る機会が多いと、亡くなっていく人の心はこういうものなんだなとみんなイメージが持てるが、今は圧倒的に病院の中で最期を迎えるため、あんまり(人が亡くなるのを)目にされることがないというのが日本で(議論が)盛り上がりにくい理由のひとつ」と指摘した。
そのうえで、国内でも“ガイドライン”は存在するとして「例えば、脳死で回復する可能性がないようなとき、医学的に治療を終わりにできるよう学会が作ったガイドラインは一応ある。ただ、どなたかが『これはいかん、呼吸を止めて死なせたではないか』と言って、訴えられると司法は動かざるを得ない。そうすると、医療の現場としては治療を続けることが気の毒だという状態になっても、そういうこと(法的に訴えられること)があり得るかなと思うと(延命治療を)続けざるを得ない」という現状を語った。
野元氏は、自身が回復する見込みがない状態に陥ったとき、どうしたいのかを生前の元気なうちに十分考え、希望を家族など身近な人々に方針を表明しておく「リビングウィル」という概念をまずは大切にするところから始めるべきと提唱した。
石川は「厳密に言うとガイドラインは法律ではない。法的に訴えられると、ガイドラインがあるからと言って延命治療をしなかった医師の判断が覆され、極端な言い方をすると罪なんだといって訴えられて医師が負けるケースもある。 そうなると、医療従事者にとっては非常にリスクの高いことになる」と指摘。「現場の医療を円滑に進めるということからすると、議論がもっと盛り上げないといかんのじゃないかと思う」と持論を述べた。
番組情報
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※2024年4月6日(土)までは『石川和男のエネルギーリテラシー』