#54 北川博敏(近鉄)代打逆転満塁サヨナラ優勝決定ホームラン
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◎2001年9月26日 大阪ドーム
オリックス 0 0 0 3 1 0 0 0 1 =5
近鉄 1 0 0 0 0 1 0 0 4X =6
HR(オリックス)相川2号
(近鉄)川口18号 北川6号
「さあ、果たして“ミラクルバファローズ”なるかどうか。ボールカウントは2ストライク・1ボール。投球は4球目。ピッチャー大久保、第4球を投げました。打った! いい当たり! サヨナラホームランか? 伸びていく! 伸びていく! 入った! ミラクルバファローズ! ミラクルバファローズ! ピンチヒッター・北川、劇的なサヨナラホームラン! 満塁ホームラン! この瞬間、近鉄バファローズ、12年ぶり4回目の優勝が決まりました! 奇跡です! ミラクルです! 今、北川がみんなに囲まれてホームイン! ホームイン! ホームイン!」(実況:小野浩慈アナウンサー)
もし自分がマンガ家で、少年誌に野球マンガを連載していたとしよう。「これに勝てば優勝という試合で、代打で出たバッターが“逆転サヨナラ満塁ホームラン”を打って優勝が決まる、っていうストーリーはどうだろう?」と編集者に提案したら、即却下されるだろう。「いやいや、いくらマンガでもリアリティがなさすぎますよ。そんなことが起こるわけないでしょう! 読者にバカにされますよ!」と。
ところが、そんなあまりに“出来すぎ”なストーリーが、現実に起こってしまったのだ。2001年、前年のリーグ最下位から一転、首位を走り“ミラクルバファローズ”と呼ばれた近鉄バファローズである。9月24日、主砲・中村紀洋が西武のエース・松坂大輔から劇的な逆転サヨナラ3ランを放って、優勝マジックを「1」とした話は前回取り上げた。それだけでも十分に“伝説”だが、この年の近鉄は神懸かっていた。翌25日は試合がなく、1日おいて26日、さらなる奇跡が起こる。
近鉄が勝てば12年ぶりのリーグ優勝が決まるこのゲーム、本拠地・大阪ドーム(現・京セラドーム大阪)に迎えた相手はオリックスだった。3年後のオフ、両球団は合併することになるのだが、この時点では選手もファンも、そんなことは夢にも思っていない。また当時のオリックスの指揮官は仰木彬監督であり、元近鉄の監督でもあった。愛弟子・梨田昌孝監督が、自分が退いたあと低迷していたバファローズを立て直し、優勝まであと一歩に導こうとしていることは嬉しさもあったろうが、それと勝負は別。オリックスは優勝争いに関係ない立場だったが、仰木監督は絶対に胴上げを阻止しようと真剣に戦った。
試合は、近鉄が初回に1点を先制したが、先発のショーン・バーグマンが、味方のエラーも絡んで中盤に4失点、逆転を許してしまう。一方、近鉄が誇る“いてまえ打線”は、オリックス先発のルーキー・北川智規を打ちあぐね、7回に川口憲史のソロ本塁打で1点を返すのがやっと。仰木監督は8回途中からクローザー・大久保勝信を投入して逃げ切りを図り、9回に相川良太のソロアーチでさらに加点。近鉄は2-5と3点のビハインドを背負って最終回の攻撃を迎えることになった。
「ああ、きょうの胴上げはないか」というムードが漂ったが、さすがはミラクルバファローズ、神通力はまだ消えていなかった。この回先頭の6番・吉岡雄二がレフト前ヒットで出塁すると、続く7番・川口は一塁線を破る二塁打を放って無死二・三塁のチャンスを作る。ここで代打・益田大介が四球を選んで、無死満塁の大チャンス。ここで9番・古久保健二(捕手)の代打として梨田監督が選んだのが、北川博敏である。
北川は2日前の西武戦でも、松坂からホームランを放ち、中村のサヨナラ弾のお膳立てをしている。北川なら何かをやってくれるという確信があったのだろう。「古久保のところで、代打で行くぞ」と北川に事前に告げていた。実は北川、前打者の益田の打席を「四球だけは勘弁してくれよ」と思いながら観ていたという。というのは、自分が併殺打が多いのをわかっていたからだ。
二・三塁のままならゲッツーの可能性は低い。走者を還すか、一塁は空けておいてくれ……という北川の願いとは裏腹に益田は四球で歩き、塁はすべて埋まってしまった。緊張して打席に入った北川。初球はど真ん中の絶好球だったのに、手が出なかった。2球目はファールで追い込まれたが、3球目は焦ってボール球に手を出さず見極めた。これで北川は落ち着いたという。
4球目はスライダー。ストライクゾーンに来たので、北川は迷わず振り抜くと、打球は大きな放物線を描いて左中間スタンドへ! ウソみたいな「代打・逆転・サヨナラ・満塁・優勝決定ホームラン」が本当に現実となった。しかも6-5と“お釣りナシ”の逆転弾。こんな出来すぎた話があるだろうか? チーム12年ぶり、前年最下位からのVはパ・リーグ初の快挙だった。ベンチから飛び出した近鉄ナインに手荒い祝福を受けた北川は、後にこう語っている。「ホームでもみくちゃにされていたら、いつの間にか胴上げが始まっていたんです。サヨナラホームランを打ったのに、輪に入るのが遅れたのは、今だから言える笑い話です」
<チャッピー加藤>





