#58 山田哲人(ヤクルト)日本シリーズ初の1試合3打席連続弾

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#58 山田哲人(ヤクルト)日本シリーズ初の1試合3打席連続弾

 

◎2015年10月27日 神宮球場

ソフトバンク 0 2 0  1 1 0  0 0 0 =4

ヤクルト   2 0 1  0 2 0  0 3 X =8

HR(ソフトバンク)今宮1号 明石1号

(ヤクルト)山田1号・2号・3号 畠山2号

 

「(千賀)第5球、投げた。打ちました! これもレフトに上がったぞ! さあどうだ? スタンドはバンザイだ! バンザイだ! バンザイだ! 入った! ホームラン! なんとなんとなんと、山田哲人、3打席連続ホームラン! 逆転に成功! 山田、1試合3ホームランは日本シリーズ史上初! なんと驚き、ライナー性の打球。今度はレフトスタンド、沈黙のソフトバンク、黄色いスタンドに打ちました! 逆転、5対4!」(実況:師岡正雄アナウンサー)

 

「自分の思ったとおりにバットが振れたので、ボールが飛んで行った。3打席目はホームランを狙っていなかったですけど、強い打球を打とうと意識した結果がホームランにつながりました」(試合後、山田のコメント)

 

2015年の日本シリーズは、真中満新監督(現ショウアップナイター解説者)のもと、セ・リーグを14年ぶりに制した東京ヤクルトスワローズと工藤公康新監督(来季から中日ドラゴンズ監督)のもと、パ・リーグ連覇を果たした福岡ソフトバンクホークスの対決となった。ともに就任1年目でリーグ優勝を果たした指揮官の対決となったこのカードには、もう1つの見どころがあった。「トリプルスリー対決」である。

 

同一シーズンに「打率3割、30本塁打、30盗塁」を達成する「トリプルスリー」。安定してヒットを打つ能力と、打球を遠くへ飛ばす能力、バッテリーのわずかな隙を突いて次の塁を陥れる能力はどれもまったく別の才能で、そのすべてにおいて一流の数字を残すことは並大抵のことではない。過去10人しか達成者がいないことでも難しさがわかるが、2015年はなんとセ・パ両リーグでトリプルスリー達成者が生まれた。ヤクルト・山田哲人と、ソフトバンク・柳田悠岐である。

 

2015年の山田の成績は「打率.329、38本塁打、34盗塁」で本塁打王と盗塁王のタイトルを獲得(両タイトルの同時獲得は史上初)。柳田は「打率.363、34本塁打、32盗塁」で首位打者に輝いた。トリプルスリー達成は2002年の西武・松井稼頭央以来13年ぶりの快挙で、山田も柳田もチームの優勝に大きく貢献。ともにこの年のリーグMVPに輝いている。山田はその後も、2016年・2018年にトリプルスリーを達成。複数回達成したのは山田だけで「ミスター・トリプルスリー」と呼ばれている。

 

私はこのシリーズ、山田と柳田の対決見たさに福岡ドーム(当時の名称は「ヤフオク!ドーム」)へ足を運んだ。福岡では第1戦・第2戦ともソフトバンクが勝利。山田が7打数1安打と完全に封じられたのが痛かった。移動日を挟んで、東京に戻った私は、第3戦もチケットが手に入ったので神宮球場で観戦。空調の効いたドームと、秋風が肌寒く感じた屋外球場では印象がまったく違ったのを覚えている。

 

福岡で連敗したヤクルトは、この試合に勝たないと後がなくなる。ソフトバンクに傾いていた勝負の流れを再び引き寄せたのが山田だった。まずは初回、ソフトバンク先発・中田賢一からバックスクリーン左に先制の2ランを放つ。ソフトバンクは直後の2回に2点を挙げて試合を振り出しに戻したが、ならばまた打つのみ。山田は3回、再び中田からバックスクリーン左にソロアーチを放って突き放す。しかしさすがは王者・ソフトバンク。4回に今宮健太、5回に明石健志がそれぞれソロアーチを放って逆転した。

 

そのときの体感で言うと、広いドーム(当時のヤフオク!ドームはまだ外野にテラス席が設置されていなかった)から神宮に来ると、観ていて狭く感じたし、「きょうはやけにホームランが出るなあ」と思った。ならば、山田にもう1本出ても不思議はない。3-4と逆転された直後の5回裏、ヤクルトは2死ランナーなしから2番・川端慎吾が四球で歩き、3番の山田に打席が回った。

 

ここでソフトバンク・工藤監督は中田を諦め、千賀滉大にスイッチ。千賀は山田と同学年で、プロ入りも同期。2015年は右肩痛から復活した年で、ポストシーズンはリリーフで起用されていた。山田も「自分のところで千賀を当ててくる」という予感はあったという。カウント3-1から千賀が投じた5球目、インハイのストレートを、腕をたたんで振り抜いた山田。打球は詰まりながらも左翼スタンドに落ち、3打席連続となる逆転2ラン! 一発出そうな雰囲気はあったが、本当に打つとは……観ていて鳥肌が立ったのを覚えている。

 

日本シリーズ史上、試合をまたいでの3打席連続アーチは1970年に長嶋茂雄が達成しているが、1試合3連発は史上初の快挙だった。しかも3発とも、ゲームの主導権をヤクルトに引き戻す価値ある3発。この後、畠山和洋のホームランなどで加点したヤクルトは8-4で快勝した。結局、このシリーズでヤクルトが勝ったのはこの試合のみで、4勝1敗でソフトバンクが日本一に輝いたが、「山田が3連発を放ったシリーズ」として記憶しているファンは多い。そのぐらいインパクトのある3発だった。

 

<チャッピー加藤>

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