#57 村上宗隆 日本人選手最多 シーズン56号
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◎2022年10月3日 神宮球場
DeNA 0 2 0 0 0 0 0 0 0 =2
ヤクルト 0 0 5 0 0 2 1 0 X =8
HR(DeNA)ソト17号
(ヤクルト)キブレハン6号 内山4号 長岡9号 村上56号
「さあ、4打席目。この打席が今シーズン最後になる可能性が出てきました。神宮・143試合目。55号を放ってから13試合。ここまでは60打席、ホームランから遠ざかっている村上。ピッチャーは入江です。第1球を投げた。打った!初球打ち、ライトへ! 決めた村上、ガッツポーズ! 56号ホームラン! 神宮球場は総立ち! 初球打ち。打った瞬間、スワローズファンのもとに日本プロ野球史に残る一撃を放った村上宗隆! 令和の三冠王、22歳、今シーズン最終戦の最終打席で決めました! ホームイン! ついに村上宗隆、王貞治を抜いて日本選手シーズン最多本塁打を達成!」(実況:清水久嗣アナウンサー)
2022年10月3日、神宮球場。ヤクルトのレギュラーシーズン最終試合となるDeNA戦は超満員だった。私もあの日神宮にいた1人だが、観客の期待は「村上宗隆の56号を生で観たい」だった。
この年、2試合またぎでプロ野球新記録の「5打席連続本塁打」を放つなど、驚異的なペースでホームランを量産していた村上。ヤクルトの主砲としての第1目標である「リーグ連覇」は9月25日にすでに果たし、「令和初の三冠王」という2つめの大目標も、試合前の時点でほぼ確定。あとはもう1つ、1964年の王貞治を抜く「日本選手歴代最多のシーズン56号」という偉業を達成するのみだった。2013年、W・バレンティンの56号を生で観た私としては、村上の56号もぜひ生で観たいと思い、バレンティンのときと同様、神宮球場に日参した。
「さすがに村上も人の子なんだな」と思ったのは、9月13日の巨人戦で54号・55号を打って一気に王に並んでから、ホームランがピタッと出なくなったことである。「バレンティンを抜く61号も打つだろう」と思っていたのに、そこからまさかの13試合連続ノーアーチ。すでにバレンティンが更新したにもかかわらず、やはり「55号超え」は特別なことであり、優勝や三冠王とは別種のプレッシャーが掛かるんだな、と感じた。
迎えたレギュラーシーズン最終戦。この試合がラストチャンスだ。4打席は回って来るはずで、DeNA投手陣も勝負してくれるはず。ただ、1つだけ問題があった。そう、「打率」との兼ね合いである。村上は本塁打・打点の両方で2位以下を大きく引き離していて、2冠は確定。残る首位打者は、2位の中日・大島洋平が打率.31422で全日程を終えていた。村上が最終戦でもし4打席ノーヒットだと、打率.31417で大島を下回ってしまう。よってヤクルト・高津臣吾監督は「3打席ノーヒットなら、そこで村上を交代させる」ことにした。そこで一発打てるかどうか?
球場全員が注視した第1打席は、セカンドゴロ。場内に「あ~」というため息が漏れ、私も「これは厳しいかな……」と正直思った。第2打席も凡退していたら、おそらく記録更新はなかったと思う。この打席、村上はレフト前にヒットを放って打率を上げ、もし第3打席で凡退しても第4打席に立てることになった。観客もそれは承知で、ヒットが出た瞬間、あちこちから「よし!」という声が上がった。私もそう叫んだ1人だ。
このヒットでリズムをつかんでくれたかな、と思いきや、第3打席はファーストゴロ。打球が上がる気配がなく「やっぱり出ないか……」と半分諦めかけたが、でももう1打席ある。場内に東京音頭が流れ、緑色の傘の花が開いた直後の7回、先頭で村上に第4打席が回って来た。これが村上にとってのレギュラーシーズン最終打席。本当のラストチャンスだ。DeNAはこの回から入江大生をマウンドへ。
初球だった。村上は、入江が内角高めに投じた151キロのストレートを完璧にとらえると、その瞬間「行った」と確信したのだろう。ゆっくりと歩き出し、ベンチに向かって笑顔でガッツポーズ。雄叫びを上げた。打球は美しい放物線を描き、スタンドイン。これまで聞いたことのないどよめきが球場を包んだ。「歴史的瞬間を観た」という興奮と、目の前でダイヤモンドをゆっくりと一周するスラッガーへの称賛、そして最後の最後に、素晴らしいアーチを見せてくれたことへの感謝の思い……自然とスタンディングオベーションが起こり、私も立ち上がって拍手を送った。
さまざまな重圧に打ち克って、偉業を達成した村上。試合後の会見で「苦しいときに気持ちを変えてくれたのは?」と問われ、こう答えた。
「自分の気持ちを変えるのも自分の気持ち次第。もちろんいろんな人から、たくさんの方から励ましの言葉をもらったりしますけど、そういう気持ちは僕にしかわからないところもある。僕自身が向き合って、僕自身の心で解決することが一番」
<チャッピー加藤>





