同じ「アナウンサー」でも、「スポーツアナウンサー」はちょっとまた違う職種だったりする。吉田尚記アナは音楽やアニメの「現場」にいるのに対し、スポーツアナは野球場やスタジアムといった違った「現場」にいる事が多いため、じっくりとお話を聞けるチャンスが少ない。
そこで行われた、スポーツアナウンサー煙山光紀とアナウンサー吉田尚記の対談。
今日は第2回。
2人の話は、プロ野球中継とは何か?という流れに・・・・・・・・
煙山:ショウアップナイターは今年で50周年を迎えて、ファンクラブが出来るくらい、歴史の長いコンテンツなんです。だから、歌舞伎や落語のような“型”というものがあるんですよね。これまでも、野心的なディレクターが新しい試みをするんですが、ことごとく弾き返されてしまって・・・ どうしても、浮くんですよね。新しい取り組みをしても、形が出来上がっているので、そぐわない事が多い。
吉田:それは分かるかも。プロ野球の実況アナは、歌舞伎役者のような世界があると思う。
煙山:たとえば、「~であります」といった表現は、普段は使わないと思いますが、野球中継の場合は、それが自然と通用するんですよね。そういった型があって、30代より上には通用していると思うんです。ただ、10代・20代のリスナーがナイター中継を聞いて、どう思っているのかを知りたいですね。面白いと思ってくれているのか、訳の分からない遠い存在なのか、気になります。
吉田:たしかに、「右中間をボールが転々」と言ったときに、“ライトとセンターの間をボールがバウンドしながらフェンスに向かって転がっている“といったイメージが皆で想起できる・・・これって不思議な事なんですよね。何も分からない人には、まず“右中間って何?”っていう所から説明する必要があるし、「ボールが転々」という部分も“ボールがいくつもあるんですか?”と思われてもおかしくない。なのに、すべて伝わるのは、一種の伝統芸の世界で、それが若い人にどう伝わっているかは気になりますね。
煙山:「右中間、破ったー!ボールが転々」というのを10代の人に聞かせたときに、「はぁ?」と思われるんじゃないか、若干不安だったりします。だから、僕はあまり“右中間”という言葉を使わないんです。どちらかというと、「ライト・センター共に追った・・・」みたいな言い方をします。けれども、「ショートから、セカンドにトス。フォースアウト!1塁に転送!1塁もアウト!6-4-3のゲッツー!!」といったように、“6-4-3”のようなお決まりのフレーズは野球の好きの人には言ってあげたい。
吉田:確かに、“6-4-3”は言って欲しいお約束のフレーズで、その瞬間、「成田屋!」みたいな世界ですよね。
煙山:そのミックスのバランスを考えなくてはいけないかな?と思っていますね。
吉田:僕、あまり知られていないんですが、基本、オタク気質なので、野球は大好きですからね。“ベースランニングはどちらの足でベースを蹴るべきか?”なんかは理解していますからね。(中略 ~ 吉田アナによるベースランニングに関する熱い説明)中学生の時に、スワローズのファンクラブに入っていて、神宮球場に行ったときは必ずラジオを聴いてたんですよ。山田透アナウンサーの声はよく聴いてましたね。実際には、入社後に、「あ、あれ山田透アナだったんだ・・・」と気づいたんですが(笑)
煙山:ラジオを聴かない選択肢は無かったの?
吉田:聴かない選択肢もありますけど、ラジオを聴いた方がより分かるんですよ。
煙山:まさに歌舞伎だよね。
吉田:たしかに!イヤホンガイドみたいな物ですよね!しかも、当時は情報量が少なかったので、ラジオを聴くしかなかったので、型が分かるまで、聴くガマンが出来ていたんですよね。
煙山:ネットのサービスはとても便利なので、ネットをしながら、ラジオを聴いてもらえないかなぁ?なんて思ったりしています。歓声が聞こえたたり、ものすごい形相で打席に入っているとか、顔が真っ赤になって、汗が滴り落ちているとか、それはラジオだから伝えられる熱気だと思う。それに興味を持ってもらえると嬉しいですね。
プロ野球中継は歌舞伎に近い・・・その言葉は非常にしっくりと来る。型にハマった良さを残しながら、いかに新しいファンを獲得していくか・・・その工夫が今後の腕の見せどころだろうか。
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