5月15日でJリーグがスタートして23周年を迎えました。
その記念の日に、熊本地震後に活動を休止していたJ2ロアッソ熊本が復帰戦を行いました。
試合が行われたジェフユナイテッド市原・千葉のホーム、フクダ電子アリーナには、1万4,163人と、通常の2倍以上のサポーターが足を運びました。
結果はジェフ市原が2対0と完勝でしたが、スタンドからの視線は、巻誠一郎に注がれていました。
ワールドカップドイツ大会に出場した、元日本代表が久々の先発出場。
熊本へ届け!と精いっぱいのプレーを披露しました。
熊本・宇城市出身の巻が故郷へ戻ったのは2014年。
ジーコジャパンで全国区となり、ドイツ大会の秘密兵器と期待を集めましたが、その後は所属していたジェフユナイテッド市原・千葉を戦力外になって、ロシアのFCアムカル・ペルミ~中国の深圳宇恒足球倶楽部~J2の東京ヴェルディ1969と渡り歩き、故郷熊本へ。
熊本ではここ一番のシーンで投入される切り札的の存在として、地元では絶大な人気を誇っています。
今季、熊本はスタートから好調でしたが、地震発生後5試合のブランクが空きました。
でも、巻は地震発生直後から率先して被災者支援に立ちあがりました。
どうすればいいのか。それを考え、まずは知人を頼り、福岡に倉庫を借りて基地をつくることから始めたそうです。
SNSを使い「ここに、巻宛で物資を送ってください」と発信。
特に、かつて所属していた市原からは、ありとあらゆる14トンもの支援品が届きました。
巻が「本当に有難かった」と話していたのは、すぐに配布できるように、梱包がいき届いていたことだったそうです。
連日、トラック10台で各避難所を回っていました。
練習を再開したのは5月2日。
もちろん、この日は、「絶対に勝って熊本へ勝ち点3を届ける」と気合が入っていましたが…。
そうはいっても、気力で勝てるほど、プロは甘くはありません。
5試合、遠ざかっていた熊本イレブンは頑張っているものの、コンビネーションなどはいまひとつでゴールは遠かった。
試合中、巻の脳裏には、自身を見出した、育ての親といっていい、イビチャ・オシムさんの言葉が何度も過ったそうです。
『考えながら、走れ』
『巻には、巻にしかできないことがある』
1ゴールでも熊本に届けたかったから、むなしさがあります。
だけど、誰も攻めることはできない。
みんながゴールを目指して、最後まで足を動かし続けていたから。
と唇を噛んでいたました。
次節は22日、J1柏の日立柏サッカー場で、水戸を迎えてホームゲームを主催。
地元で試合を行うのは、7月3日のセレッソ大阪戦まで待たなければなりません。
昨日はJリーグの村井チェアマンも視察。
「胸が熱くなった」と両チームを称え、また、多くのサポーターがジェフ市原時代の巻のレプリカユニホームを着用して声援をおくっていました。
サッカーの力を改めて感じた1日です。
(原文)青木政司
5月16日(月) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」