9日目が終わった大相撲夏場所は、横綱白鵬-大関稀勢の里の一騎打ちムードが漂ってきました。
それにしても、きのうの白鵬が勢をわずか0.9秒で片づけた一番が、またもや相撲ファンの物議を醸しだす結果に。
左の張り手を繰り出し、右からの肘打ちでモロにくらってしまった。もちろん、かちあげは反則ではありません。
ただ普通は、番付が下の力士が窮余の一策で行うもの。
当然ながら、「横綱がやるものではない。絶対に勝ちあげなどをやらないのが品格というものだ」。それが、親方衆の声。
相撲ファンの声です。
ましてや、現在の白鵬の三種の神器といえば、張り差し、肘打ち、ダメ押し。
品格どころの話ではない。
でも、八角理事長は
「おれは、かち上げが好きだった。勢のあたりが良ければ、かち上げにはこられない。頭でかましたことがないからなぁ。情けない。弱すぎる。」
と白鵬を擁護し、また、藤島審判長(元大関武双山)は一発KOを喫した勢にダメ出しをする。
そもそも白鵬は69連勝の双葉山のたいへんな信奉者で、その戦い方に心酔している。
でも、そういう相撲はとれない。
さらに周囲から、何度も批判があっても張り手とかち上げを行うことには、あまり悪いことだとは感じていない様子。
というのも、モンゴル相撲では正当な技のひとつ。
かつては、朝青龍、それから張り差しは日馬富士もかなりやっている。
31歳、大横綱の道を突き進んできた白鵬ですが、本人が感じているほど人気がついてこない。
日本人には判官ひいきという習性があることをご存じないのかもしれません。
象徴的だったのは4日目の正代戦。
これも強烈な張り手、それからダメ押しで批判の対照になりました。
正代の左ほほには約20センチものひっかき傷が残っていたそうです。
この日は、とりわけ場内は、正代への声援がものすごい。
熊本出身だけになおさらでしょう。
「私は楽しみという言葉が好きではない。相撲はゲームじゃないから。」
勝負の世界は勝たなくては何もならない。
2020年の東京五輪まで現役を続けるためには、絶対に勝ち続ける。
連日、土俵からはヒールに転じても、白鵬の気迫が伝わってくることは間違いありません。
(原文)青木政司
5月17日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」