山の日がやってくる!山岳遭難を減らすデジタルな取組 【ひでたけのやじうま好奇心】

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今年から8月11日は「山の日」の祝日です。
制定されたのが2年前なので、忘れていた人もいるのではないでしょうか。
山の日は、お堅く言えば、「山の恩恵に感謝し、自然に親しむ祝日」。今年は全国各地で、山の日の施行を記念したイベントも開催され、登山客も例年以上に増えるのでは…と言われています。

しかし、その一方で 懸念されるのが、山での事故や遭難。
警察庁によると、去年に全国で発生した山岳遭難の件数は2,508件と過去最高。死者・行方不明者も335人と過去最多。特に中高年が増加しています。

このような事態を踏まえ、自治体や関係団体は、「山の日」が始まると登山客が増え、事故も増える可能性があると、山の日をきっかけに遭難対策や、安全確保のための広報活動を強化。デジタル環境も整備して事故の防止に力を入れています。

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全国各地で力を入れているのが「Wi-Fiの整備」。
スマートフォンでのインターネットの利用がしやすいように、山岳地帯でも無線LANを使えるようにする取組です。

先日、富士山のすべての山小屋に、公衆無線LAN「Wi-Fi」が整備され、急増する外国人登山客もインターネットが利用しやすい環境が整った※とニュースになっていましたが、まだまだ各地の山岳地帯では、電波の届かないエリアもあり、事故や遭難時に連絡が取れずに救助が難航するという状況があります。※(産経ニュース 2016.6/29刊)
特に増加する外国人登山客の場合、自由に使えるWi-Fi設備がないと、日本の関係各所と連絡が取りづらくなるので、積極的なWi-Fi整備が必要なんですね。

そして、遭難事故を減らそうと積極的に呼びかけているのが登山計画書の提出。地域によっては義務付けや罰金の制度を設けているところもあります。

登山計画書は、名前の通り、登山の計画を記した書類のこと。
登山する人の名前・性別・年齢・住所・緊急連絡先、また出発日時、登山ルート、どんな装備をして山に登るのかなどを書き込み、自治体や警察などに届け出て、家で待つ家族や登山する本人も携帯しておく…というものです。
これを準備していれば、万が一の場合でも、救助隊が遭難場所を探しやすくなり、救助できる可能性も高まります。

最近は、「登山届」もデジタル化が進んでいて、多くの自治体や県警が、日本山岳ガイド協会が運用するオンライン登山届「コンパス」と利用協定を結び、情報共有をしています。

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【画像】コンパスHPより

オンライン登山届「コンパス」は、登録することで自治体や警察などと情報を共有。
下山した時に「下山しました」と報告しますが、下山の知らせがなかった場合には、下山予定時間の3時間後、5時間後に 登山者へメールで連絡。
万が一、7時間が過ぎても返事がない場合は、緊急連絡先として記載されている家族のもとへ連絡がいき、それでも連絡が取れない場合には、遭難の可能性があるとして自治体や警察が対応をすることになります。

最近の山での事故や遭難、救助活動などを見ていると、登山届を出さずに山に登っている人がほとんどだそうです。
登山の前にはしっかりと登山届を出してください。

またデジタル技術の活用でいえば、最近はスマホのGPS機能を使って、遭難した場所を正確に把握するシステムも山梨県警などで運用されています。
これまでは、遭難の110番通報を受けると、携帯電話の電波を受信した基地局の情報から位置を割り出していましたが、山の中には基地局が少ないので、正確な場所を特定するのが難しかったんですが、このシステムを使うと、より詳細な遭難場所がわかるそうです。

そして登山に出掛ける前に役立つシステムとしては、「グレーディング」の取組も進んでいます。
グレーディングとは、簡単にいえば「山の難易度」を記したもの。
長野県山梨県などの自治体がホームページで公開しています。

登山ルートごとに「体力レベル1~10」「難易度レベルA~E」が記されていて、登る予定の山が自分の体力に合っているか、登山ルートの難しさがどのくらいかが簡単に分かるようになっています。
最近は「体力低下を意識しない中高年」や「山の怖さを知らない初心者」が、いきなり難しい山に挑戦して、遭難事故になるケースも増加しているので、こうした目安を作ることで、遭難事故の事前防止を目指しているんですね。

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山での事故防止のために救助システムはどんどん進化しています。
しかし救助システムがどれだけ進歩しても、救助は最後の手段であり、最も大切なのは、自分の技術や体力を知り、無理のない計画を立てることです。
今年は「山の日」の制定で、夏山登山に出掛ける人が増えると思いますが、充分に準備・計画をしたうえで出掛けて下さい。

7月21日(木) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

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