これって追加緩和?【イイダコウジ そこまで言うかブログ】
公開: 更新:
先週末、日銀の金融政策決定会合があり、若干の政策変更がありました。メディアでは、「追加緩和決定!」と報じられています。
『日銀が追加緩和、上場投信買い入れ6兆円に』(7月29日 日本経済新聞)http://goo.gl/6VMW0I<日銀は29日の金融政策決定会合で追加金融緩和を決めた。英国の欧州連合(EU)離脱決定で世界経済の不透明感が強まり、企業や家計にも悪影響が及びかねないためだ。現在は年3.3兆円の上場投資信託(ETF)の買い入れ額を6兆円に増やすことが柱で、金融機関のドル資金調達の支援策も強化した。政府が打ち出した28兆円規模の経済対策と連携し、国内景気の底上げに向けた相乗効果を狙う。>
追加緩和というのでどれだけの規模かと思えば、年3.3兆だったETFの買い入れを6兆にすると。年80兆の金融緩和をすでにやっている中でプラス3兆ですから、これは微々たるもの。正直な話、これを追加緩和といっていいのかどうかという程のミクロな追加緩和です。期待していた市場は正直な反応を示しています。
『NY円急伸、一時101円台 日銀の金融緩和に失望感』(7月30日 朝日新聞)http://goo.gl/nfvePw<29日のニューヨーク外国為替市場は、日本銀行が決めた追加の金融緩和に対する失望感が広がり、米景気に不透明感も強まったことから、円を買ってドルを売る流れが加速した。対ドルの円相場は一時1ドル=101円97銭まで値上がりし、約3週間ぶりの円高ドル安水準をつけた。>
もともと黒田日銀の緩和手法というものは、良くも悪くも「サプライズ」が持ち味でした。「黒田バズーカ」と言われた2013年4月の「異次元の量的緩和」をはじめ、2014年10月の黒田バズーカ第2弾も、市場の裏をかくタイミングのサプライズと、大方の想定を超える規模のサプライズの組み合わせで効果を上げていました。それを考えると、今回の「ショボさ」が際立ちます。それだけでなく、こうした戦力の逐次投入はミスリードを生みやすく危険です。案の定、そもそも金融緩和に批判的な左派メディアを中心に、社説でも批判されています。
『社説 日銀の追加緩和 いよいよ手詰まりだ』(7月30日 毎日新聞)http://goo.gl/lvCIZ4
『日銀追加緩和 通貨の番人はどこへ』(7月30日 中日新聞)http://goo.gl/v05Anl<日銀は上場投資信託(ETF)の購入額拡大という小粒な追加緩和を決めた。政府の期待には応えたが、金融政策の手詰まり感を露呈し、中央銀行としての信認も一段と失うことにはならないか。>
毎日など社説の見出しから"手詰まり"と掲げていますし、中日も"手詰まり感"という言葉を使っています。実際には、黒田総裁が会見で語っているようにまだまだ緩和の余地があるはずです。国債一つとっても、現状日銀が保有する国債は全体の3分の1。ということは残りの3分の2は残っているわけですね。ところが、そもそも金融緩和の効果って怪しいんじゃない?という報道が多かったところに、こうした小出しの対応。人によっては「日銀ってこれしかできないんじゃないの?」と思ってしまいます。
それに、ETFの3兆円程度の積み増しで追加緩和と言えるのか?好位的に捉えれば、株価の下支えによって資産効果が発生。個人消費に効くと言えないこともないんですが、それもタカが知れています。
それでこんな誤解をされるくらいなら、追加緩和せずに9月にドカンとやった方が良かったのかもしれません。
(飯田浩司アナウンサー 「イイダコウジ そこまで言うか」ブログ」 8月1日分より)