■売れ残った犬のその後、知っていますか?
千葉県内に住む日浦茜さん。3年前に結婚し、今はご主人と1歳半になる息子さん、そして愛犬のしょこ(ミニチュアダックスフント、7歳、メス)と一緒に忙しい毎日を送っています。
小さいころから大の犬好きで動物専門学校で学んだ経験もある茜さんと、しょことが出会ったのは、今から約7年前のこと。
しょこは、当時茜さんが働いていたペットショップで販売されていたのです。ミニチュアダックスの中でも珍しいブルータンという美しい毛の色をしているしょこは、いつもお客さんの人気者。毎日のように「かわいい!」と褒められ、だっこされるのですが、生後半年近くになっても、しょこが購入されることはありませんでした。
「ブルータンのダックスフントは珍しい分、価格が高く、そのショップでもしょこは一般のダックスフントの3倍近い価格で販売されていました。
しょこを気に入ったお客さんはたくさんいたのですが、価格が高すぎたため、しょこは売れなかったのです」。
そうこうしているうちに、生後半年近くになってしまったしょこ。本来はまだ子犬ですが、ペットショップでは生後半年にもなるとすっかり「売れ残り」扱いをされてしまいます。売れ残ったしょこを心配していた茜さんは、ある日、衝撃的な事実を知ってしまいます。
「店側が、しょこのことを『繁殖犬にしよう』と話しているのを偶然知ってしまったのです。その店で行われていた繁殖方法は、紐でつないで動けなくしたメス犬のところにオス犬を放す…というひどい方法。しかもメスは体がボロボロになるまで何度も繁殖に使われると聞いていたので、いてもたってもいられず…」。
大いに悩んだ茜さんは、当時つきあっていた今のご主人に相談をしました。
「主人もしょこを可哀そうに思ってくれ、ちょうど私の誕生日が近かったので、誕生日プレゼントとしてしょこを買ってあげると言ってくれました。お店の方でも『もう生後半年も過ぎてるから…』と、大幅にディスカウントしてくれました。とはいえ犬を飼うのは大きな出費。でもつらい運命からしょこを救ってあげられて本当によかった。主人には今も感謝しています」。
■お出かけ大好き!元気なしょこを襲った突然の病とは…?
こうして茜さんのもとにやってきた、しょこ。まるで最初から茜さんと暮らすことを知っていたかのように、初日からすっかり茜さんの自宅でリラックス。緊張する様子もなく、ごく自然に新生活になじんでいったそうです。
「しょこは、とてもマイペースで穏やかな性格。子犬の頃は物をかじってイタズラすることもありましたが、ほとんど私を困らせたことはありません。ショップにいた頃、いろんな人に抱っこされてきたせいか、知らない人に吠えついたりすることもないですね。」
その後、茜さんの結婚・出産を経て生活環境が変わってもしょこは、マイペース。ごく自然にその変化を受け止めてくれたそうです。
そんなしょこの一番の楽しみは、なんといってもお出かけ!とにかく外に行くのが大好きで、茜さんたちがお出かけの用意を始めたら、いそいそと自分のキャリーに自ら乗り込んでスタンバイ!茜さんがいつもお出かけに持っていくエコバックに入っていることもあるそうです。
「さあ、でかけよう!と思ってエコバックを持ち上げたら、なんだか重い。中を見たらこっそりしょこが入ってるんですよ(笑)。いったいどれだけお出かけが好きなんだ~と、家族みんなで大笑いしました」。
こんなふうに毎日楽しく過ごしている茜さん一家としょこですが、実は約2年前、しょこの身に一大事が起きました。
「あるとき、何気なくしょこの身体を触ると、前足の付け根にぶよぶよとした水ぶくれのようなものがあるのに気づいたんです。イボかな?と思っていたら、不思議なことに翌日にはなくなっていました。」
すると半年後、また同じ場所に同じようなぶよぶよができているのを発見。さすがに不安になって、病院に行き、調べてもらうと、なんと、それは「肥満細胞腫」という悪性の腫瘍、つまり癌の一種だったのです。
「しょこは当時まだ5歳と若かったので、とにかく転移が心配でした。獣医師の勧めにしたがって、すぐに手術で腫瘍を切除。術後も半年間、毎月定期検診に通いました」。
当時、茜さんは妊娠中で、初めての出産を間近に控えていました。
「生まれてくる子どもとしょこを仲良く遊ばせてあげたい…。その夢があったから、身重での通院も全く辛くありませんでした」。
■しょこが「この家に来てよかった」と思ってくれるように
その後、幸いしょこの癌は再発せず、今は、茜さんが夢見たとおり、お子さんの良き遊び相手になってくれています。
「しょこが元気になってくれて、本当に嬉しいです。でも、再発の可能性がゼロになったわけではないので、しょこの健康管理には気を遣っています」といいう茜さん。
毎日の食事には、免疫力を高め、がん予防効果があるというブロッコリーやきのこなどを意識して加えるようにしているそうです。
「仕事に家事に育児…と、毎日忙しいですが、しょこのための時間は私の生活の一部。時間や労力と引き換えても余りある幸せをしょこからもらっています。たとえば疲れ果てて帰ってきたとき、玄関まで『おかえり~!』と走って出迎えてくれる姿。冬になると『寒いよぅ~』とでも言いたげに、私のふとんに潜り込んできて、ぐっすり眠っている寝顔‥等。何気ない日常の一コマ一コマが、すごく大切なものに思えます。」
そんな茜さんには、今、楽しみにしていることがあります。
「子どもがもう少し大きくなったら、お散歩のときにしょこのリードを持たせてあげたいなって思っています。そして家族でいろんなところに出かけて、楽しい思い出をたくさん作りたいですね。7年前、いろんな偶然が重なって我が家にやってきてくれたしょこ。将来、お別れの日が来たときに、『ここのうちに来てよかったなあ』と思ってくれるように、これからも仲良く、楽しく暮らしていきたいと思います。」