■映画「八重子のハミング」の宣伝部長!?
都内にある映像制作会社・北斗でプロデューサーを務める、野村展代さん。担当する映画「八重子のハミング」(佐々部清監督作品)の公開を5月6日(土)に控え、目下、広報活動に忙しい日々を送っています。
実は野村さんは北斗の唯一の社員。撮影や社外での打ち合わせなどから帰ると、オフィスで一人黙々と事務作業に励む…のかと思いきや、オフィスでは力強い相棒が野村さんの帰りを待っていました!
相棒の名は、こまち。今年で13歳になるメスのミックス犬です。
「私がオフィスに帰ってくると、ちょこちょことやってきては、私の足元にごろり。うとうと居眠りしたりおやつをねだったり‥と、まったく即戦力にはなりませんが(笑)、こまちには、これまでたくさん助けてもらいました」と目を細める野村さん。
「例えば、書き仕事に煮詰まったら一緒に散歩にいったり、おやつを食べたり。判断に迷ったときは、どうしようか?と相談したり。心が折れそうになった日は、ただただギュッと抱きしめさせてもらったり…。もちろん、こまちは言葉では何も答えてくれませんが、こまちに語り掛け、触れ合っているだけで、自然と心が落ち着いて前向きな気持ちになれるのです」。
ここ数年は、『八重子のハミング』のために東奔西走する野村さんを、ずっとそばで見守っていたこまち。野村さんは、たまの息抜きに、こまちの写真を撮って、自身のSNSにUPするようになりました。
「そしたら、思いがけずたくさんの人に『いいね!』をいただいたり、お会いした時に『あの犬、かわいいね!』と褒めていただくようになったんです。そういった方々が、ついでに映画に関する投稿も読んでくださるので、こまちは『八重子のハミング』の宣伝部長に昇格ですね(笑)」。
■「もらい手がいなければ、保健所行き」。
ペットショップの軒先で汚物にまみれていた子犬たち
こんなふうに毎日仲良く過ごしている野村さんとこまちですが、実はこまちは野村さんの飼い犬ではありません。こまちは、野村さんが所属する会社・北斗の親会社で、建築関係の事業を展開する株式会社アディックの経営者・加藤さん夫妻の飼い犬なのです。
北斗のオフィスはアディックのオフィスの2階、加藤さん夫妻の自宅の一角にあるので、こまちは毎日、気の向くままに自宅とアディックのオフィス、北斗のオフィスを自由に行き来しているというわけです。
こまちが加藤家にやってきたのは、今から13年前のこと。
娘さんの中学受験が終わったのを機に念願の犬を飼い始めることにした加藤さん夫妻は、当初、チョコレートカラーのラブラドールレトリーバーを飼うつもりで、各地のペットショップを回っていました。
そして埼玉県内のあるペットショップでお目当てのラブラドールをみつけたのですが…、結局、そのラブラドールが加藤家にやってくることはありませんでした。
「そのペットショップの店先で『もらってください』と書かれた大きな箱をみつけてしまったのです。箱の中には、近所の人が持ち込んだのでしょうか、たくさんの子犬が詰め込まれていて、汚物まみれになっていました。その子たちは、一定期間のうちに引き取り手が現れなければ、保健所につれていかれるとのこと…。これを知った娘は、その場でラブラドールを断念。1匹の子犬を箱から取り出して、『この子を連れて帰りたい』と言ったのです。その子犬が、いま、ここにいるこまちなんです」と加藤さん。
そんな偶然で加藤家にやってくることになったこまち。今では加藤家にとって、そしてアディックにとっても北斗にとってもかけがえのない存在になっています。
■オフィスに犬がいる。そのメリットは…?
現在、こまちの肩書は「株式会社アディック 総務課癒し係 警備課長」!
その肩書通り、こまちは毎日オフィス中をくまなく警備しています。知らない人が会社に来ると、ワンワンと吠えてお知らせ。トラブルがあって社内が穏やかならぬ雰囲気になってくると、どこからともなく現れ、とぼけた仕草で笑わせてくれることも。社長室で社長とお客さんが深刻な話をしていると、トコトコとこまちがやってきて社長の横の椅子に着席、じっと耳を傾けていたこともあるそうです。
さらに、こまちは同社の入社面接官としても大活躍。
「面接時にこまちが近寄らなかったり、警戒心をあらわにした人は、ダメなんです。採用しても長続きしなかったり、トラブルメーカーになったり。こまちは、すごく人を見る目があるんですよ。だから、こまちはわが社の警備課長だけでなく、人事課長でもありますね」と加藤さん。
「こまちは言葉を話しませんが、そのしぐさと存在感だけで、場を和ませたり、人を癒したりできる才能の持ち主。こまちのおかげで、うちの会社は従業員同士のトラブルは、まずありません。もちろん、犬が苦手な方やアレルギーの方への配慮は必要ですが、オフィスに犬がいることのメリットはとても大きいと思います」とのこと。
そんな人間たちの期待を知ってか知らずか、こまちは今日もマイペースに2つのオフィスと自宅を行ったり来たり。今日も野村さんがオフィスに戻ったのに気づくと、北斗のオフィスにトコトコとやってきて、野村さんの足元にぐで~んと身を投げ出しました。野村さんが体をなでてあげると、「仕事終わるまで、ここにいるね」とでも言いたげに野村さんを一瞥して、まぶたを閉じるこまち。
「映画『八重子のハミング』は、若年性認知症になった妻を支える家族の姿を描いた作品で、キーフレーズの一つが『優しさには限界がない』という言葉です。もちろん人間同士にも当てはまる言葉ですが、犬と私たちの関係にも当てはまると思うんですよね。犬は何の見返りも求めず、私たちに無限の優しさを注いでくれるのですから…」。
野村さんがプロデュースした「八重子のハミング」は5月6日公開。
野村さんとこまちのエピソードを思い浮かべつつ、ぜひ映画館で、無限の優しさに満ちた心温まるストーリーをお楽しみくださいね。
☆映画「八重子のハミング」
公式HP:http://yaeko-humming.jp/https://youtu.be/F6TGWafSI78