アナタは覚えていますか? みんなが仰天した“年のアタマの大スクープ”【やじうま好奇心】

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新聞記者の世界には、“夜討ち朝駆け”という言葉があります。
いざ鎌倉、こりゃ特ダネだ!となれば、ド早朝だろうが、ド深夜だろうが、取るものもとりあえず駆けつける──常日頃から、こうした苦労を重ねているからでしょうか?
新聞記者という人種は、みな、お正月、それもできれば元旦付の紙面で、一面トップを飾りたい… という想いを抱いているのだそうです。
苦労したぶん、新年早々、自分の記事を眺めるのは、さぞや気分がいいことでしょう。
なにしろ元旦のスクープをものしたとなれば、翌日の1月2日は各社揃って新聞休刊日ですから、なおさらのこと、目立つ、目立つ!
しかも、年のアタマの一面記事の出来は、その新聞の購買意欲に直結する… とされているんです。
ですから、1月、2月は、新聞各社、「とっておきの記事」が掲載されることが多いのだそうですよ。

そこで今日は、正月気分を吹き飛ばしてきた「年のアタマのスクープ記事の歴史」を特集しましょう!
まずは…

■1995年(平成7年)1月1日 読売新聞朝刊第一面
「上九一色村でサリン残留物を検出」

山梨県・上九一色村(かみくいしきむら)で、猛毒ガス「サリン」を生成した際の残留物質が警察当局によって検出された… と、読売新聞が元日の1面トップで衝撃の大スクープを打ちました。

さて、この記事のどこが「衝撃的」だったのか?
前の年、1994年(平成6年)6月27日、長野県松本市において、初動捜査時の正式名称、「松本市内における毒物使用多数殺人事件」という、実に奇怪な事件が起こりました。謎の毒物による被害者は、死亡者8人、重軽傷者660人を数えた…。
やがて、謎の毒物の正体は、何者かによって噴霧された神経ガス、「サリン」と判明。この事件は、「松本サリン事件」と呼ばれるようになったのですが…
この読売のスクープ記事が出た1995年1月1日の時点で、「サリン」と「オウム真理教」との関係は、まったく世の中に、知られていませんでした。
ところが、記事の見出しには、「サリン残留物を検出」「松本(サリン)事件 直後」とある。
そして、上九一色村には、浅原彰晃ひきいる「オウム真理教」の施設が乱立しておりまして、このことは、すでにあまねく世間に知れ渡っていた…。

つまり、この記事は… ズバリいいますと、「松本サリン事件」と「オウム真理教」との関連を、「初めて」示唆したものだったんです!要するに、 事実上、「オウム真理教はサリンを作っているぞ!」と世に知らしめる記事だった!

この記事が出たのは、オウム真理教が、まさにサリンの量産に乗り出す直前のタイミングでした。オウム真理教のサリン量産と国家転覆計画は、まさにこの記事によって頓挫したともいわれています。
そしてこの記事こそは、その後のオウム事件報道の先駆けとなったわけですが…読売は、報復として、自分たちの会社にサリンをまかれる可能性もあったわけです。
(※実際、その可能性を危惧する声もあがったそうですが… 彼らは勇を鼓してペンをとったんです!)

もうひとつ、読売の「年のアタマのスクープ」をご紹介しておきましょう。

■2009年(平成21年)1月29日付  読売新聞朝刊第一面
 「日本漢字能力検定協会が 禁じられている利益20億円、文科省が調査へ」

意外と勘違いしている人も多いのですが、毎年のように「今年の漢字」を発表しているのは、清水寺ではありません。財団法人「日本漢字能力検定協会」というところが主催しているんです。
ところが…. この「日本漢字能力検定協会」が、住宅地の何億円もする土地や建物を購入したりして、セッセと「財テク」に励んでた!しかも、のちにもっと調べてみたら、公益事業では認められない、多額の利益をあげていた!
(※当時、理事長と副理事長が親子だったってことで、「漢検親子」なんて揶揄されたものです)
(※「漢検協会事件」として、報道は過熱する一方。結局、「漢検親子」は失脚いたしました)
そういえば今年2016年の「今年の漢字」は「金」でしたが… 「漢検協会」さん、大丈夫ですよね?

さて、続いては、産経新聞のウルトラ大スクープです。
年頭の大スクープとするには2月始めということで、ちょいと遅めではありますが…なにしろ、世界中を驚かせた大スクープですので、コレを外すわけにはいきません。

■1990年(平成2年)2月3日付 産経新聞 朝刊第一面
 「ソ連、共産党独裁を放棄へ」

記事の概要は、ソビエト連邦が、ごく近い将来、共産党政府を解散することを決めた…というもの。つまり、ソビエト連邦の解体を意味する、超弩級の大スクープだったんです!
記事を書いたのは、当時の産経新聞ソ連特派員、斎藤勉(さいとう・つとむ)記者。
世界に先駆けてものした、この「ソ連崩壊のスクープ」により、日本新聞協会賞を受賞しましたが…のちに斎藤さんが、ある講演で語った講演録が残っています。
スクープを手に入れた瞬間の熱と興奮が伝わる文章ですので、少しご紹介いたしましょう。

斎藤勉

産経新聞外信部長の斎藤勉氏 写真提供:産経新聞社

1990年1月。あるパーティーに出席していた私に、ウォッカ仲間のひとりが言いました。
「こんなところにいていいのか?」と。そして、ソ連共産党 が今後について記したある重大な文書を持つ人間を探せと言うのです。私は人脈を片っ端から当たり、(その)文書を持つ人物を、とうとう探し当てたのです。
さっそく 本人を訪ねたところ、「文書を渡すわけにはいかない。ポイントを話すから、書きとめろ」と言われました。最初の言葉は… 「ソ連共産党は、独裁を放棄する」。
私は、耳を疑いながらも、必死に(メモを)とり続けました。
夕方、興奮のあまり、道を間違えながら帰宅。
一気に書き上げた原稿は、幸運にも世界の新聞社を出し抜き、翌朝の一面を飾りました。

こののち、1991年12月、ソビエト連邦共産党は解散。直後、ゴルバチョフ大統領の辞任に伴い、ソビエト連邦が解体され、ソ連は「崩壊」しました。

さて、割と記憶に新しいところで、毎日新聞のスクープにいきましょう。

■2011年(平成23年)2月2日 毎日新聞朝刊第一面
 「力士が八百長メール」

大相撲八百長問題

大相撲八百長問題 緊急理事会後、会見に臨む放駒理事長(右端)。八百長の事実が判明すれば厳罰処分を下す意向を示した =両国国技館 写真提供:産経新聞社

かねてから星の売り買い、要するに「八百長」のウワサが絶えなかった大相撲に狙いをつけた毎日新聞東京本社は、ひそかに、「大相撲八百長問題取材班」を結成。力士による野球賭博事件で警視庁が押収した携帯電話に、八百長をうかがわせる多数のメールが記録されていることを突き止めまして、この日の朝刊でスッパ抜いたんです。
八百長疑惑について、日本相撲協会は、それまで、一切否定してきました。
『週刊現代』を訴えて勝った、『週刊ポスト』も訴えて勝った!
ところが、毎日新聞が突き止めたメールという電子証拠の前にはひれ伏すほかありませんで…八百長の存在を初めて認めました。
結果、力士・親方ら25人が追放される前代未聞の事態に発展したのです。

さて、最後にスポーツ新聞。
スポーツ紙の年頭のスクープは、芸能ネタが多いようです。

■2015年(平成27年)1月16日付け スポーツニッポン第一面
 「三船美佳 高橋ジョージ 離婚」

高橋ジョージ

【芸能 高橋ジョージ】三船美佳との離婚問題で取材に応じる高橋ジョージ(ロックバンド「THE 虎舞竜」のボーカル) 写真提供:産経新聞社

THE 虎舞竜の高橋ジョージさんと三船美佳さん。芸能界きっての「おしどり夫婦」として知られていましたが、離婚が不可避とのこのスクープに世間はビックリ。
ちなみに小見出しには『24歳差“おしどりロード”2度とは戻れない夜』との言葉が躍っています。
その後、おふたりは正式に離婚しました。

■2016年(平成28年)1月13日付け 日刊スポーツ第一面
 「ジャニーズ激震 SMAP解散 キムタク以外 独立」

当時は「SMAP解散?冗談でしょ?」と思ったものですがね….。
みんなが仰天した“年のアタマの大スクープ”をご紹介しました!

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1月4日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

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