ブラピも惚れたアカデミー作品賞『ムーンライト』とは?【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第176回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、3月31日から全国公開の『ムーンライト』を掘り起こします。

純粋で美しい、愛の物語

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アカデミー賞授賞式では、作品タイトルの読み違えという前代未聞の出来事に見舞われたものの、作品賞、脚色賞、助演男優賞の3部門に輝いた『ムーンライト』。
それが功を奏してか、本作の知名度は日本でも急上昇。
4月末の劇場公開の予定だったにもかかわらず「少しでも早く観たい!」という映画ファンの声に応えて、3月31日からの全国公開が決定しました。

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マイアミの貧困地域で暮らす内気で引っ込み思案な少年シャロン。
学校では“オカマ”といじめられ、家庭では麻薬常習者の母ポーラから育児放棄されていた。
家にも学校にも居場所がないシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の友達であるケヴィンだけ。

やがてシャロンは、ケヴィンに対して友情以上の感情を抱くようになるが、自分が暮らすコミュニティではこの感情が受け入れてもらえないと気付き、誰にも思いを打ち明けられずにいた。
そんなある日、学校で起きた事件をきっかけに、シャロンは大きく変わっていった…。

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人種問題、貧困、LGBT…と、数々の重いテーマに色彩豊かで革新的な映像美で斬り込んでいく『ムーンライト』。
そのタイトルどおり、自分の居場所を探し求める主人公を、月明かりのごとく美しく描き出します。

ひとりの少年の成長を少年期・青年期・大人になるまでと、3つの時代構成で綴った本作。
ドラッグ、いじめ、虐待、父親の不在と、たくさんの傷を負いながらも強く生きる主人公シャロンを、時代に分けて、トレバンテ・ローズ、アッシュトン・サンダース、アレックス・ヒバートの3人の俳優が演じました。

ほかに、麻薬常習者の母親ポーラに『007』シリーズのナオミ・ハリス、主人公の少年の面倒を見る麻薬ディーラーのファンを本作でアカデミー賞最優秀助演男優賞に輝いたマハーシャラ・アリ。
メガホンを取ったのは、これが長編2作目となる新鋭バリー・ジェンキンス監督。
ブラッド・ピットが製作総指揮を務め、映画史に刻まれる純粋で美しい愛の物語が誕生しました。

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「黒人社会の中でゲイとして生きていくことの痛み」について、私たち日本人にはピンとこない部分があるのも正直なところかもしれません。
それなのに何故、この映画は観る者の感情移入を誘い、自分の人生と重ね合わせたくなるのでしょうか。
それは本作が「人生についての物語」だから。

自分は何者なのか、自分は何になりたいのか…。
それは他の誰かに決めさせるものではなく、自分で決めることなんだ。
人間ならば誰もがぶち当たる“生きる”こと。
年代や性別を超えて、月の光のような優しい眼差しを私たちに向けてくれる一作です。

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ムーンライト
2017年3月31日からTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
監督・脚本:バリー・ジェンキンス
エグゼクティブプロデューサー:ブラッド・ピット
出演:トレバンテ・ローズ、アッシュトン・サンダース、アレックス・ヒバート、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、アンドレ・ホーランド ほか
©2016 A24 Distribution, LLC
公式サイト http://moonlight-movie.jp/index.html

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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