韓国の考える“強い国”とは?【報道部畑中デスクの独り言】

By -  公開:  更新:

文氏「勝利宣言」が行われた光化門広場 喧騒から一夜明けて何事もなかったかのように 忘れ物の傘が…後方はソウル総合庁舎

文氏「勝利宣言」が行われた光化門広場 喧騒から一夜明けて何事もなかったかのように 忘れ物の傘が…後方はソウル総合庁舎

「国を強くする指導者であってほしい。民主主義を守り、法を守る大統領であってほしい」…大統領選挙は文在寅氏に入れると話した79歳の男性の声である。

韓国大統領選挙では高齢者の集まる公園のある鐘路(チョンノ)、若者の街、弘大(ホンデ=日本でいえば原宿のような街だという)で有権者に話を聞いた。
今回の大統領選挙は「世代間格差」が大きな特徴だと言われた。

つまり、若者を中心した層は革新系「共に民主党」の文在寅氏に投票し、戦争を体験した高齢者は保守系「自由韓国党」の洪準杓氏を支持した…なるほど出口調査では確かにその傾向が強かった。
ただ、私が取材ではたまたまだったかも知れないが、各世代で支持は様々であった。

若者の中でも軍隊を経験して間もない男性は安全保障が一番大事だとして、洪準杓を支持した。
また、有力3候補に隠れた形だが、取材では4番手だった保守系「正しい政党」のユ・スンミン氏の人気が意外に高かった。
得票率は6.76%と伸び悩んだが、「文氏に票が集まり過ぎないように」とユ氏に入れた人もいたのだ。
さらに、2番手の洪準杓氏の得票率は24.03%と世論調査を上回り、いわゆる「シャイ保守」が動いたことがうかがえる。
そう考えると、過半数に届かなかった文氏の41.08%という得票率は、韓国人としての「バランス感覚」であり、「民意」であったと言えなくもない。

国会議事堂 テレビ各局のブースも

国会議事堂 テレビ各局のブースも

とは言え、勝敗そのものは文氏の圧勝。

冒頭の男性のコメントに戻る。
韓国が考える「強い国」とは何だろう?

日本流に考えれば、北朝鮮の脅威に対抗するため、THAADを配備し、関係国と緊密に連携をとる…ということになる。
しかし、韓国ではむしろ北朝鮮とパイプを太くすることで、北朝鮮問題について自らがキャスティングボートを握り、アメリカや中国などの大国、そして日本に対し「モノを言える国」…男性の声からはこんな解釈ができてしまう。
文氏は公約で「北朝鮮の核問題の解決」をいの一番に挙げた上で、「朝鮮半島新経済地図」構想、「南北朝鮮の市場の統合」「南北基本協定」を挙げていた。
さらに討論会では「自主国防」を掲げ、独自の韓国軍ミサイル、原子力潜水艦の必要性を訴えていた。
そして、大統領就任宣誓では「条件が合えば平壌にも行く」と対話路線を明確にした。

就任宣誓は議事堂前、大型モニターで公開された

就任宣誓は議事堂前、大型モニターで公開された

今回の選挙は朴槿恵政権の清算(韓国では「積弊の清算」という表現をしていた)が大きなポイントであったこと、朴政権への怒りが革新系の文氏に票を向かわせたことは疑いない。
しかし、同時に上記のような構想についても有権者はYESを出したことになる。
そこから透けてくるのは、韓国では人々が潜在的に「祖国統一」への想いを持っているのではないだろうか?
そして、朝鮮半島が統一されれば、「韓国も核保有国になれる、それが強い国…?」…

もちろんこれは極論中の極論であり、文政権やその支持者がそこまで考えているとはさすがに思えないが、北朝鮮との対話路線をとるということは、そんな極論も将来の可能性としてはどうなのだろう。
…日本はあらゆる選択肢をテーブルに載せ(時にはテーブルの下に隠し)、隣国との付き合い方を探っていくべきではないか…選挙戦、お祭り騒ぎの熱気の中でそんなことが頭をよぎった。

就任宣誓のモニターに見入る人たち

就任宣誓のモニターに見入る人たち

そんな中で、5月14日朝、北朝鮮がミサイル発射を強行した。
文政権が発足して4日後のことだった。

金正恩氏の真意を測る術はないが、文大統領はこれを「強く糾弾する」と批判した。
「対話は北朝鮮の態度が変化した時に可能になる」とも述べ、早い段階での対話はしばらくなさそうだ。
その一方で、「対話の可能性は開かれている」とも話す。北朝鮮への圧力強化にも触れていない。
さらに「北朝鮮の判断が誤らないよう挑発には断固とした対応をとらねばならない」と述べている。

韓国では北朝鮮問題について、有権者から「長いことこの状態(休戦状態)なので、それほど関心がない」「絶対戦争にはならない。それは破滅を意味するから」という声が聞かれた。
以前述べた通り、そこには日本ほどの緊張感は感じられなかった。

今回の北朝鮮のミサイル発射は文大統領にとっては想定外だったのか?
だとしたら…文大統領を支持した韓国がある意味不憫にも感じる。
原則主義者と言われる文大統領は初志を貫徹するのか?
軌道修正するのか?
国際社会に向けた「賭け」に踏み出した韓国の新政権は早くも岐路に立たされている。

就任宣誓後、声援に応える文大統領(写真左)

就任宣誓後、声援に応える文大統領(写真左)

Page top