歴史ある素晴らしいものが集まっている博物館や美術館って何か起きそうな気がしませんか?
映画の世界のような何かが…例えば、ルーブル美術館が登場する『ダヴィンチコード』やアメリカ自然博物館が舞台の『ナイトミュージアム』などなど。
昼間は人々で賑わい展示物はじっとしているけれど、夜、誰もいなくなると何かが起きそうなちょっとワクワクする雰囲気。しかも映画のセットのような佇まい…
そんなミュージアムが東京駅のすぐそばにあるのはご存知ですか?
東京駅丸の内南口前にあるビル、JPタワーの商業施設KITTE。
全国各地のこだわりの名品や日本のモノづくりの粋が集結、素敵なショップやレストランが並んでいます。
その2階と3階にあるのが「インターメディアテク」という変わった名前のミュージアム。
日本郵便(株)と東京大学総合研究博物館(UMUT)が協働運営している公共貢献施設です。
ここには、1877年の東京大学(当時は帝国大学)の創学以来、蓄積に蓄積された学術文化財が展示されているのです。140年にも及ぶ東京大学の研究の歴史です。
素敵なショップの奥にある入り口に一歩足を踏み入れると、本当に映画のワンシーンに紛れ込んでしまったような錯覚に襲われます。広い吹き抜けのエントランスは、壁も床も天井もまっ白!アカデミックな雰囲気が漂っています。緩やかな大きな階段の脇には、巨大なワニの骨の標本が壁に張り付いています。7mくらいはあるでしょうか…天井を目指し、尻尾を振って今にもよじ登っていきそうです。
部屋の中に入ってみましょう!この不思議な感覚はなんなのでしょう。
天井が高く広々とした細長い室内は、1931年に竣工した旧東京中央郵便局の局舎を改装したもので、郵便物を仕分けしていた場所。マホガニーのこげ茶やベルベットの赤…壁一面の棚に圧倒されます。まるで大英博物館のようなレトロで重厚な雰囲気。
その中で目を引くのが、マサイキリンやミンククジラ、ウマなど大きな骨格標本の数々。夜誰もいなくなったら『ナイトミュージアム』よろしく動き回っているかもしれません。沢山の鳥やうさぎやタヌキなど…剥製の動物達の目も輝いています。
ここに展示されているのは、東大で研究されて来たものばかり。動物や鳥の骨格・剥製をはじめ、ヒトデや貝、鉱物、植物の標本、土偶に仏像、設計図やエレベーター、螺旋状の数理模型、医療機器にエジプトのミイラまで、本当にありとあらゆるものが並んでいます。それだけ多岐に渡り、深い研究が続けられて来たという証でもあります。
あまたの展示物は、資料室のようにただ雑然と置いてあるのではなく、とってもおしゃれにディスプレイされ、芸術品のようにも見えます。
クラシカルな展示用のケースやキャビネットは実際に教育の現場で使われていた什器で、帝大時代のものが多く、19世紀にタイムスリップしたような気分が味わえます。扉のガラスは、昔のものらしく表面が少しゆがんでいていい味が出ています。木枠はマホガニーやら何やらのとてもどっしりしたものです。
こんなにレトロで素敵な空間が、古い学術標本や什器などのある意味リサイクルで出来ていることに改めて驚かされます。
ふんわりと古い図書館の香りもします。ひとつひとつの展示物の歴史が醸し出しているものなのでしょう。どれだけの研究者の情熱を経てここに並んでいるのか…そんなことにも思いが及びます。
このミュージアムは、博物学の全盛期19世紀から高度情報化を実現した21世紀までの3世紀にまたがるにまたがる時代をつなげることを目的としています。現代のミュージアムは、私たちが自分を取り巻く世界をどのように受け止めてきたのかということを俯瞰的に見せる場であり、そこからどのような新しい見方や表現を導き出すことができるのか、その可能性を探求し提示する場なのです。
それがまさしくインターメディアテク。古いものをリデザインし、新しい価値のもと次の世代につないでいるのです。
そんな素敵なミュージアムですが、驚くべきことに、なんと入館が無料なのです。館長の西野嘉章さんは「ミュージアムは本来無料であるべき。社会の支援を得て、多くの人々に観ていただきたい」と話しています。
電車を待つ間に、お買い物のついでに、気軽に行けるミュージアム。もちろんわざわざ出かける意義もあります。
私も時間が空いた時、ちょっと疲れた時は、時空を超えたこの場所に身を置きに訪れています。古さと新しさがマッチングした重厚な空間は、一体自分がどの時代のどの国にいるのか、一瞬忘れさせてくれます。
インターメディアテク…この不思議なミュージアムはあなたを新たな気づきへと導いてくれるかもしれません。
JPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」
千代田区丸の内2-7-2 KITTE 2・3階
休館日 :月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
開館時間:11:00~18:00(金・土は20:00まで)
入館料 :無料
レポート:ひろたみゆ紀