日本におけるミサイル防衛(BMD)の問題点とは?

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8/30(水)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!④

北朝鮮のミサイル発射は領空侵犯にあたるのか?迎撃が難しい多弾頭弾(MIRV)とは?
7:16~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター鈴木哲夫(ジャーナリスト)

グアム方面ではなく北海道方面に発射したのは日本の探知能力を試す為?

昨日の北朝鮮によるミサイル発射に関連して、日本のミサイル防衛の実態について作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏に解説していただきます。

高嶋)いつも2週に1回ご登場いただいております佐藤優さんに電話が繋がっております。
佐藤さん、昨日のJアラートも含めて、何だかあっち向いてホイみたいなところに飛ばされて、迎撃と言っても、もしあれが日本に落ちて来るのだったら撃ち落とすことは可能だったのかということで、大いに不安も感じたのですが、佐藤さんはどんな印象を持ちましたか?

佐藤)まさにあっち向いてホイで、北朝鮮のやっていることはとんでもないことなのですよね。それはどうしてかと言うと「グアムに向けて撃つ、だから〇〇県は注意しておけ」と言っておいて全然違う方向に撃っているわけでしょう。要するに我々のイージス艦の配置やミサイルの探知能力をチェックしたわけですよね。
ただこのチェックされたものに対して我々は合格していますよ。そういう意味では察知する能力はあるということなのですよ。


ミサイル防衛には“領空侵犯”の認識が要

佐藤)ただひとつよく分からないのは「今までとどこが違っているか」ということなのですよね。今回の件では国際社会と日本の間に温度差があるような感じがするでしょう、その理由は実は今回“領空侵犯が起きているかどうか”ということを巡る話なのですよ。
これは意外と注目されていないのですが、領海と言うと12海里、領空と言うと陸上と12海里の上です。では高さはどれくらいまでだと思います?

高嶋)私は想像がつきませんねえ。

佐藤)実は国際法で決まっていないのです。一応大気圏内が領空となっているのですが、そうすると物理的には80km~120kmくらいを超えると宇宙空間になる。
宇宙空間は全面的に使用自由なのです。ミサイルを撃っても良いし人工衛星を飛ばしても良い。だから言わないだけで日本の上ではしょっちゅうロシアや中国のミサイルが飛んでいるのです。さらに人工衛星もしょっちゅう飛んでいるわけです。
今回小野寺さんが29日の午前の会見で「今回は日本の領空を2分間飛翔した」と言っています。しかし領空を飛翔すれば同時に領空侵犯になる。これは重大な国際法違反です。でもそうは言っていません。だから大体“上空”と報道している。
でも上空を通ることがけしからんというのであれば毎日世界中の人工衛星に対して抗議しないといけないわけですよ。


不意を突かれた形のミサイル発射 BMD100%機能はあり得ない

高嶋)もうひとつ、僕は昨日テレビのワイドショーなどをずっと観ていたのですが、いわゆる「北海道の方に撃たれたら自衛隊はお手上げです」なんて言った人は1人もいないのですよね。政府の方も何となく「大丈夫だ」というような言い方なのですが、これは本当なのですか?

佐藤)私はあまり本当だとは思っていないですよ。これはむしろ太平洋戦争中の東条内閣の「絶対国防権」みたいな「絶対に大丈夫だ」というような話で、この「ミサイル防衛システム(BMD)」自体というものが実際に100%機能すると思っている人は軍事専門家や外交専門家含め1人もいないと思いますよ。「機能すれば良いな」ということですよね。

高嶋)陸上型イージスシステム「イージス・アショア」だって配備には数年掛かると言うでしょう?

佐藤)その間にさらにミサイル技術は進みますから。まだ北朝鮮の場合は多弾頭弾(MIRV-マーヴ)と言ってホウセンカのように弾頭がバラバラといくつも飛ぶような物は出ていないですけど、ロシアやアメリカ、中国はそれを持っていますから、これは多弾頭だったら迎撃できないですよ。

高嶋)1発撃たれた本体の中に沢山の弾頭が複数の目標に飛び散っていくと?

佐藤)10発くらい飛び出して来ます。でも北朝鮮がこの技術を持つのも時間の問題なのですよね。
だからまさに今おっしゃっていた“パキスタン化”という事態が起きているのです。今回ギアが“上がらなかった”と見るのか、ギアが“下がった”と見るのか、難しいところなのですよね。
もしかするとここで「これは平和解決で行く。取引をするしか無い。核とIRBMだけは認める」という方向でトランプが舵を切る切っ掛けになるリスクはありますね。

高嶋)佐藤さんありがとうございました。

森田)たった今、金正恩労働党委員長の発言が入って来ました。「今回は対応措置の序章に過ぎない。アメリカの言動によって今後の行動を決心する」と述べております。

高嶋)何だか日本に有利な情報って1つも無かったですね。これでアメリカが妥協点を探りかねないという。

鈴木)そうですよね。これはやはり国民的議論が日本には必要ですね。

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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