ソフトバンクが優勝を飾った後、かつてないプレッシャーが襲い掛かった、といえば達川ヘッドコーチでしょう。まず、クライマックス・シリーズがある。そして、セ・リーグも同様ですが、日本シリーズで古巣の広島と対戦する可能性が圧倒的に高い。やりにくいことはわかっていますが、
「シリーズで戦ってみたいね」
とも漏らしている。勝負師の血が騒いでいます。
「セ・リーグでカープの黄金時代は、最低でも5年は続きそう。2軍にもすごい選手がいる。えらいチームになった」
と真顔で解説しています。
工藤監督は、優勝が決定した試合で、
「いろいろな人の助言、アシストがありました」
と涙を流しました。昨年、最大11.5ゲーム差を逆転され、苦渋を飲んでいます。その要因のひとつに、自身がドタバタしすぎ。監督らしくない、という指摘があった。同じ轍は踏まない。今季は監督と選手のパイプ役はすべて達川ヘッドが行ったようです。デーンと構え、要所を締める。これぞ、監督の見本のように。
昨年オフ、工藤監督は、
「一緒に戦っていただけませんか」
と達川さんを口説き落としています。当初、ヘッドコーチを置く構想はなかったものの、元楽天監督の田尾安志さんから、
「優勝したいなら、絶対にヘッドコーチを」
とアドバイスを受け、達川ヘッド招へいを決めたとか。11年オフ、工藤監督は横浜DeNA監督就任がほぼ確実な状況でした。というわけで、「達川さん、鹿取さんをぜひ、コーチに」と希望を伝えると、「人事決定はフロントの役目」と高田GMからピシャリ。白紙に戻った経緯があります。
達川さんも、「還暦を過ぎたら、ユニホームは着ない」と誓っていましたが、工藤監督の熱意に打たれた。が、条件をひとつだけつけています。
「王会長に聞いてほしい」。
それを王会長へ伝えると、
「もちろんだ」
と即答だったようです。達川ヘッドは、王会長には返さなければならない恩義がある。95年、王監督時代のホークスへバッテリーコーチに迎えられたものの、結果を出せず1年限りで退任。
「申し訳ないことをした。あの時の借りを返すため、精一杯つとめる」
と話していました。
その決意は揺るぎません。入団から常に工藤監督へ寄り添い、決してでしゃばるようなことはしない。担当記者に囲まれても、それは同じでした。かといって、冷たくすることはありません。河島英五の時代遅れを鼻歌まじりで歌いながら、ヒントを与えてくれる。時代遅れには、目立たぬように、はしゃがぬようにといった詩があります。
16日、ソフトバンクは西武戦で優勝を決めました。お決まりのビールかけがあり、てっきり選手は、その勢いで夜の街へ繰り出すものと達川ヘッドは思っていたようですが-。誰も出かけない。
「今の選手は、何を考えているんじゃ。かわっとる。騒ぐときは、騒げばいいのに」
と時の流れに首をひねっていました。
9月21日(木) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」