米の北朝鮮への追加制裁は効くのだろうか

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9/22(金)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③

ポイントは中国とロシア
7:10~ひでたけのニュースガツンと言わせて!:コメンテーター宮家邦彦(元外交官・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

文在寅 トランプ 安倍

会談する(左から)文在寅韓国大統領、トランプ米大統領、安倍首相=2017年9月21日、ニューヨーク 写真提供:共同通信社

日米韓の3ヵ国首脳会談~北朝鮮へ最大限の圧力をかける方針で一致

安倍総理大臣、アメリカのトランプ大統領、そして韓国の文在寅大統領との、日米韓3カ国首脳会談は、日本時間の今日未明にニューヨークで行われました。3カ国は北朝鮮に対して、最大限の圧力をかける方針で一致しました。

また、韓国が決めたおよそ8億9千万円相当の北朝鮮向けの人道支援については、安倍総理とトランプ大統領が、「北朝鮮への圧力を損ないかねない」ということで、文在寅大統領に、慎重に対応するように求めています。

また、トランプ大統領はこの中で、「北朝鮮に独自の追加制裁を加える大統領令に署名した」と発表しました。

北朝鮮と取引をする企業や金融機関、それから個人の制裁対象を拡大するということです。とりわけ、エネルギー業や建設業、それから繊維業など、幅広い産業分野を対象にしたほか、北朝鮮と取引をする外国の金融機関に対しても、制裁を発動できるようにしました。

また、北朝鮮に入国したことのある船舶や航空機が、アメリカに入国することを180日間禁止するとのことです。

このあと、安倍総理とトランプ大統領は引き続き、日米首脳会談をおよそ1時間行いました。これについて安倍総理大臣は、「トランプ大統領が国連演説で、横田めぐみさんに触れ、拉致問題の重要性を世界に発信してくれた。日本の拉致被害者、北朝鮮に拘束されているアメリカ人の解放のために、日米でともにしっかりと連携し、協力していくことを確認した」と、このように話しています。

一方、金正恩朝鮮労働党委員長は、トランプ大統領の、北朝鮮に対し、「完全に破壊する」という国連演説について、「歴代もっとも暴悪な、宣戦布告だ」と非難し、「史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮する」と表明しています。

米の北朝鮮への追加制裁は効くのだろうか

制裁に即効性は無く、急速な効果は見込めない

高嶋)北朝鮮の問題について、日米韓首脳会談や、日米会談と北朝鮮に対して警告をしてきましたが、ほとんど手応えの無い状態でした。今回は多少は効き目があるのでしょうか?

宮家)まず、アメリカが単独で行った制裁ですが、アメリカはドルの世界をコントロールできますから、その意味では、よくやったというか、「ようやくやった」という感じです。
ただ、よく考えてみると、10年前から同じようなことが議論されていて、10年前にはバンコ・デルタ・アジア(BDA)を制裁して、上手くいくかと思ったら、結局、ひっくり返された。何もできなかった。
その反省を考えると、10年ぶりだけど、ようやくまともなのが出てきたと思います。

高嶋)ポイントは中国とロシア。特に中国です。この掴みどころの無い大国。これについて、外交官としてずっと研究されてきたと思いますが、どういう風に、この制裁措置は映っていると思いますか?

宮家)「アメリカと上手くやらなければいけない」というのは、首脳レベルなら思っているでしょう。だけど、上には上、下には下があるわけで、北朝鮮の国境の近くで商売している人がたくさんいるわけですよ。これで食べている人たちがいる。その人たちにとって、「お前は制裁だ」とされて「そうですか」となるわけがない。北朝鮮にはいろいろなものがあるので、当然密輸をする。関係者にいろいろなものを配って、黙らせてやりますよ。

高嶋)表が止めても、裏がある、ということですか?

宮家)そうです。「上に政策あれば、下に対策あり」という国なのですよ。ですから、ちゃんといろいろな手を私なら考える。「ドルが使えないなら他の通貨にしよう」とか、「闇の送金方法」とか。

高嶋)つまり、制裁は効かないと?

宮家)なくなるわけがないですよ。じわじわと効くけれど、即効性のある即効薬ではない。仕方がないけれど。これは中国だけでなく、ロシアも虎視眈々と狙っていますから。アメリカを困らせようと思って。

高嶋)トランプ大統領の性格と、それから周りは元軍人ばかりでしょう? マティスさんが、「話し合いだ」と言っていたのが、「いや、ソウルは手つかずのままで、一気に北朝鮮を潰す方法もあるんだ」とキツいことを言ったり、柔らかいことを言ったり、いろいろと織り交ぜていますね。

宮家)アメリカ政府としての方針は一貫としてあるはずなので、トランプが少しずれたら、それを直すために、バランスをとろうとしていることは間違いないですね。
結果的に、いまの基本方針というのが、「北朝鮮が手を出したら、必ずやる」と。だけど、それが先制攻撃をやるかは、言わない。こういうのが、基本的な立場だと思います。
アメリカの軍人ほど、戦争を嫌がる人たちはいない。だって、自分たちの部下が最初に死ぬのですよ? ですから、私はあまり心配していません。むしろ、誤算が生じるとしたら、それは北朝鮮側の可能性が高いのではないでしょうか。

米の北朝鮮への追加制裁は効くのだろうか

戦争が起こるとすれば北朝鮮の誤算から

高嶋)いろいろな方がいろいろな視点から仰るのですが、いまはとりあえず「戦争があるのか、否か」というその1点が気になる。よく言われているのは「ICBMがアメリカ本土に届く」とか「核の小型化、大気圏内突入の完璧な技術」、そのようなことを専門家は言いますが、宮家さんはどう捉えていますか?

宮家)状況は大きく変わりつつあると思います。「戦争が起きるかどうか」ということですが、これは関係当事者がみんな合理的な判断をする限り、それなりに抑止されているのだから、戦争が起きるはずはないと思います。ただし、戦争というのは往々にして、人間の歴史では「誤算」によって起きている。北の方が誤算をする可能性が高いと思います。

高嶋)どのようなケースですか?

宮家)アメリカが何らかの対応措置を取ったときに、それを「アメリカの総攻撃」と勘違いする場合。それから、「もしかしたら、いまなら勝てるかも」と思って、「やっちまえ」となった場合。昔、日本もやったでしょう? そういうことを考える人たちが出てきたときが、いちばん危ないと思います。
アメリカは、いままでは「戦争は、向こうが攻めてきたらいつでもやるけれど、本当はやりたくない」だった。だけど、アメリカ本土がもし危険に晒されるのであれば、「向こうが攻めてきたらすぐにやる!」くらいの違いは、これから出てくると思います。

高嶋)沖縄、グアム、横須賀、佐世保とかは入りますか?

宮家)可能性としては否定しませんが、もっと小さな事でも、物事は間違った方向に動く可能性は十分にあります。

高嶋)いま、北朝鮮のこの騒ぎのおかげで内閣支持率があがったと言われていますが、安倍さんはこれでOKだと思っていますか?

宮家)さあ、どうでしょうね。だってこれ、ひとつ間違えたら大変なことになりますからね。そんな簡単にOKとか、「選挙に役立つ」とか、そういう話では無いはずです。

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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