日本の歴史を考えるとわかる北朝鮮問題?

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9/21(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③

争点は既に「非核一・五原則」
7:10~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター佐藤優(作家・元外務省主任分析官)

国連 安倍

国連総会の一般討論演説を行う安倍首相=2017年9月20日、ニューヨーク(代表撮影) 写真提供:共同通信社

安倍総理大臣が国連総会で一般討論演説~大半が北朝鮮問題についての内容

安倍総理大臣は日本時間の今日未明、ニューヨークで国連総会の一般討論演説を行い、北朝鮮の脅威が差し迫っており、核・ミサイル開発を放棄させる為には圧力が必要だとして世界各国に結束を求めました。また日本人拉致問題にも触れ、解決の為全力を尽くしていくと決意を表明しました。

森田解説委員)ニューヨーク訪問中の安倍総理は今日午前3時頃から国連総会の一般討論演説を行いました。およそ16分の演説の大半を北朝鮮問題に割きました。

安倍総理)脅威はかつて無く重大です。眼前に差し迫ったものです。対話とは北朝鮮にとって我々を欺き時間を稼ぐ為、むしろ最良の手段だった。対話による問題解決の試みは一切が無に帰した。必要なのは対話ではない、圧力なのです。

森田解説委員)その上で安倍総理は国連の加盟国に国連安保理の制裁決議を厳格かつ全面的に履行するよう求めました。
また拉致問題では「被害者が1日も早く祖国の土を踏み、父や母、家族と抱き合うことができる日が来るよう全力を尽くしていく」と述べました。
安倍総理はこの演説に先立ってイランのロウハニ大統領とも会談しまして「国連の安保理決議を厳格に実施することが重要だ」と述べて、北朝鮮と長年の友好関係にあるイランの取り組みにも期待感を示しています。
安倍総理としてはこの国連外交を通じて各国と連携して北朝鮮に対処することで、今後の選挙戦で強力な政権基盤を持つ必要性を訴える意向と見られています。
一方アメリカのトランプ大統領は日本時間の昨日、一般討論演説を行いまして、北朝鮮について「アメリカが自国や日本など同盟国の防衛を迫られれば完全に破壊するしか選択肢が無くなる」と警告しました。およそ40分のトランプさんの演説では「悪」という言葉を3回使いまして、冷戦時にソ連を「悪の帝国」と呼んだレーガン元大統領を彷彿させました。また金正恩朝鮮労働党委員長については「ミサイル発射を繰り返す“ロケットマン”」と茶化しました。
ただアメリカのマティス国防長官は「ティラーソン国務長官が先頭に立って北朝鮮問題については外交努力による解決を望んでいる」と語った他、ティラーソン国務長官も当面は制裁決議の成果の行方を見守る構えと見られています。
こうした中、北朝鮮の李英浩(リ・ヨンホ)外相が先程一般討論演説を行う為ニューヨークに到着しまして、報道陣の問いかけには一切答えなかったということですが、北朝鮮の外相の演説は22日に予定されているということです。

日本の歴史を考えるとわかる北朝鮮問題?

会談を前にイランのロウハニ大統領(右)と握手する安倍首相=2017年9月19日、ニューヨーク(代表撮影) 写真提供:共同通信社

軍事的解決はあり得ない~これからの争点はSLBMの日米共同運用を主眼とした「非核一・五原則」

高嶋)昨日のトランプ大統領の「核開発・ICBM(大陸間弾道ミサイル)開発を止めなければ北朝鮮を完全破壊する」と、あのトランプさん独特の言い回しの本当の意味と本気度というのはどんなものなのでしょうか?

佐藤)本気では無いですね。これはどういうことかというと、国内向け・国際社会向けに“手は尽くした感”を出す為の儀式です。それで最終的には交渉による平和解決になります。
というのは、ICBMが完成してしまったらこれは本格的な戦争になるのです。だから開始する前に何かやらなければいけない、その場合ひとつは攻撃ですよね。北朝鮮の、例えば金正恩を狙う。あるいはミサイル・核施設を狙う。それを始めた場合には北朝鮮は北緯38度線のところに長距離砲を置いていますから、これはそういうことがあったら自動的にソウルに向かって飛んで来るわけです。そうするとおそらく35万人くらいの死者が出ると見られていると。その中でもアメリカ人は韓国に20万人はいますから、数百人、下手すれば1,000人以上死ぬかもしれない。そうしたら今のアメリカの政権、人命尊重の状況では持たないです。そうすると第2次朝鮮戦争のリスク、それはどんなに少なく見積もっても10万人くらい死ぬ、日本でも数千人死にますよ。横田には朝鮮国連軍の後方司令部がありますから、当然攻撃対象になりますから。こういうところに踏み込むか、北朝鮮の核兵器と長距離弾道を除く運搬手段、これを認めるかというこういうゲームになるわけですよ。
そうすると、9回まで野球があるとして今は3回裏くらいで、残念ながらこの3回裏は北朝鮮側が勝ったと認めないといけないと私は思うのです。次は4回表に進まないといけない。
4回表では何をやるかというと、日本に限定しますが、抑止力の強化しか無いです。だから非核三原則の「持ち込ませず」を外すだけでは不十分。なぜならばアメリカはどこに核兵器を配置するのかを言わないから。「持ち込ませず」と言っても日本に核があるという保証にはならない。だから運用面において、実際潜水艦になるのですね。その潜水艦を共同運用していく海上自衛隊の人たちもSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)のボタンを押すことができるという仕組みを作るというくらいしか無いと思うのです。

高嶋)共同というと、それは日本も関わるのですか?

佐藤)そうです。だからこれは今後大きな争点で、まだ私くらいしか言っていませんが「非核二原則」ではなく「非核一・五原則」です。持ち込ませると言ったってアメリカはどこに持ち込んでいるかを言わないわけですから。あるいは既に持ち込んでいるかもしれないし、そんなことは分からないわけです。だから「持たず」の「持つ」のところを半分譲らないといけないのですよ。そんな話になると思います。

北朝鮮を中から変えていく“軟着陸作戦”~日本の第2次世界大戦終結時の歴史から学ばなければいけない

佐藤)ただそれと同時に北朝鮮と国交正常化して“9回”までに何をやるかというと、北朝鮮との貿易や交流を進めて、おそらく1日1$~3$の賃金で配給に頼っている北朝鮮の人たちが製造業やIT・アパレルで普通に仕事をすればお米も買えて肉も買えて野菜も買えて、運動靴もTシャツも買えてとなると、その欲望によって独裁者に対して面従腹背になって来るのです。そうなると独裁者もそういった民衆の声を無視できない。これはソ連崩壊の過程がそうでしたから。そういう形で中から構造を変えていく。
その中でまずは核を使えないようにして、それから核廃絶に向けていくという形で、最終的には我々自由社会、それから大量消費文明というものを持っている社会が勝つのですよ。

高嶋)その“軟着陸作戦”というのは私もとても賛成です。確かに衣食足りて礼節を知るじゃないですが、生活が変われば自分のところの為政者に対する見方も変わって来るのは当然であって、ソ連の例もあります。どれくらい掛かりますか?

佐藤)これはどんなに長くても10年です。長期ではなく中期スパンです。例えば日本で考えてみましょう。8月15日まで鬼畜米英だったわけですよね。それなのにその年の日本の大ベストセラーで数百万部出た本が「日米英会話帳」ですから。だから10月には大変な親米国家になっているのですよ。

高嶋)あれは特別日本人が変わり目早いというわけではないのですか?

佐藤)そうではないです。それは今までアメリカ人が来たら、目をくり抜かれ耳を削がれ鼻を削がれると言われていたのが、食料品を持って来る、医薬品を持って来る、政府も解体しないで関節装置になると「あれ? 聞いていた話と違う」と。

高嶋)北朝鮮の暴発はあり得ないですか?

佐藤)あり得ますよ。要するに先制攻撃をした場合に「死なば諸共」と。歴史の中に「朝鮮民族」というアメリカと戦って全滅した民族がいたという記録が残れば良いという風に思い詰めたらあり得る。
ただ昭和20年の3月とか4月の日本人はどうだったでしょうか? 東京大空襲の後で勝てるなんて思っている人はいないですよ。しかし降伏すると思っている人もいなかったと思う。いつ玉砕するのか、その中で「横暴なアメリカに対して東洋の日本人という民族が歴史に存在したという名前が残れば良いじゃないか」くらいの感じの人はけっこういたと思いますよ。だからそれと同じような状態にしてはいけないわけですよ。そうすると日本の歴史から学ばなければいけないです。
アメリカが日本の国体維持を認めましたよね。北朝鮮もそうなのですよ。こういうことを言うと今日本の世論の中では顰蹙を買って総理はお叱りを受けるかもしれないけども、金王朝を認めるというところからスタートしなければいけないと思うのです。

高嶋)でも佐藤さん、そこで私が訊きたいのは、天皇陛下をマッカーサーが認めたというのはある意味日本人の総意があったと思うのですよ。だけどもし北朝鮮の金王朝の実態みたいなものを国民が全部知ったら、あれは上に頂いてそのままの体制で良いと思いますか?

佐藤)皆が知ればね。ところが今金日成の時代からこういうことを教えているのです。「首領福」と「人民福」という考えなのです。幸福――すなわち、人民は「我々はこんなに素晴らしい首領をいただいている」という幸福がある。そして首領は「こんなに素晴らしい人民を持っている」幸福があると。「首領福」「人民福」という形でおしえて外部世界を教えていないですからね。
だから北朝鮮においてはあの体制は良い体制ではない、苦しいとは意外と北朝鮮人は思っていない、今の体制というのはそれなりに正統性があると認めていると思いますよ。どんな独裁国家でも消極的にであれ国民が支持していないところでは成り立ちませんから。だから北朝鮮に関しては「悪の王国」なのですけど、国民から全く支持されていないとは思わない方が良いと思う。

高嶋)金正恩は10年経つと43歳ですがどうなりますかね。

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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