北朝鮮の核・ミサイル開発を止める究極の制裁とは?

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12/1(金)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③

急速に発達していく北朝鮮の軍事技術
7:10~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター宮家邦彦(外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所・研究主幹)

北朝鮮の核・ミサイル開発を止める究極の制裁とは?

北朝鮮が弾道ミサイルを発射 官邸を出る、麻生太郎副総理兼財務相ら(提供・産経新聞)

 

アメリカの提案する対北朝鮮への石油供給禁止に、中国とロシアは否定的

 

北朝鮮が一昨日発射した、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)は、7月に発射されたミサイルより大型化しており、1段目はエンジンを2つ束ね、推進力を増強したタイプであることが分かりました。ICBMの技術開発が急速に進んだ可能性があり、日米や韓国の当局は、ミサイルの性能分析を進めています。

北朝鮮はおととい未明のICBM発射から一夜明けた昨日、金正恩朝鮮労働党委員長が立ち会った発射の写真や映像を公開しました。今回の「火星15」は、同じ2段式で7月に発射した「火星14」より一回り大きくなっていて、先端部分も丸みを帯びています。

以前の火星14の1段目は、エンジンが1つでしたが、今回の火星15は、高度な制御技術が必要となる、2つのエンジンを束ねた「クラスター型」であることが分かりました。簡単にいうと、「推力が2倍になり、重い弾頭も乗せられる」ということで、韓国の情報当局の関係者は、「エンジンの問題を完全に克服した。このペースなら、大気圏再突入の技術確保も近い。アメリカは深刻に捉えている」と述べています。

一方、アメリカのヘイリー国連大使は、29日の国連安全保障理事会の緊急会合で、「戦争に1歩近づいた。戦争になれば、北朝鮮の政権は完全に破壊される」と述べました。アメリカは韓国との合同演習を、今月、12月4~8日に予定しており、航空機230機を投入する予定だそうです。また、ヘイリー国連大使は、「すべての国が北朝鮮との外交関係を絶ち、軍事・科学・技術・商業上の協力を制限すべきだ」と述べ、関係断絶を要求しました。トランプ大統領は中国の習近平国家主席に、「石油供給を絶つように求めた」というのも明らかにしています。

これに対し、中国外務省の耿爽副報道局長は、「我々は対話を通じた解決の精神で処理をする」と述べ、石油供給停止に、否定的な考えを示した他、ロシアのラブロフ外相も、「北朝鮮への制裁強化は、手段が尽きている」とし、否定的な姿勢を示しています。

トランプ大統領は30日のTwitterで、「北朝鮮から戻った中国特使は、小さなロケットマンに影響を与えなかったようだ」とつぶやき、中国特使の北朝鮮訪問は、成果がなかった、という認識を示しています。

 

ICBMはまだ未完成であり、今後も発射テストは続いて行くと考えられる

 

高嶋)とにかく、いままでの北朝鮮との関係で、ずるずると既定路線をずっと来て、とうとうここまで来た。
いまは、「新型と言われているミサイルの大気圏再突入技術はまだちゃんとできていない」とか、いろいろ言っていますが、また撃つのでは?

宮家)撃ちますよ。だって、今回はロフテッド軌道で4500キロの高さで飛ばしたわけでしょう? だけど、あれでは最終的にICBMにはならないから。ちゃんと普通の角度で撃って、1万キロメートル以上飛ばないと、本当に上手く行くか分からない。すると、当然、大気圏再突入の角度も違うし、そこで温度に耐えられるか、衝撃に耐えられるか……そこまでやらないと、「ICBMが完成した」と言えないですよ。

高嶋)ということは、「もう1度」を想定すると、日本の上空というのは、常に要警戒、ということですね。

宮家)地理的にそうですね。上を飛んでいくわけです。

高嶋)どの辺に飛んでくると思いますか?

宮家)アラスカとか、あまりアメリカの近くへ撃ってしまうと、当たってしまうかもしれないですからね。

高嶋)間違えて当たってしまったら、これはヤバいでしょう?

宮家)戦争になるかもしれません。
それともう1つ。1万キロ飛ばそうと思ったら、ハワイの上を飛んでいくこともあるのですが……これはちょっと刺激的ですよね。

高嶋)そうですね。

宮家)今回はそこまで北朝鮮は刺激したくなかった。恐らく、アメリカのことを考え、ロフテッドで日本海に落とした。ですが、これが最後でありません。

 

アメリカはかつてのABCD包囲網に近い制裁を検討している

 

高嶋)なるほど。ティラーソン国務長官の更迭云々も含めた、アメリカ側の対北朝鮮……今日の新聞とかを見ると、「北朝鮮への石油の輸出禁止」、国連の方でも中国にいろいろ言っているようですが、最終的にはまだやらないそうですね。

宮家)やらないでしょう。中国は、まだ北朝鮮を見捨てる気はありませんから。

高嶋)その辺の絡み合い、どうなります?

宮家)恐らく、アメリカがこれからやろうとしているのは攻撃ではない。「経済制裁以上で、武力行使未満の強い圧力」と言うのは簡単ですが、基本的には「軍事的要素と政治・外交的要素と、経済的要素を上手く組み合わせた、奥の手は無いか?」と。厳しい手ですよね。
たとえば原油を止めるとか、海上封鎖するとか。そして、物資の流通経路を断つ。これをやっていくと、戦争でも武力攻撃でも無いけれど、普通の経済戦争以上の効果があります。

高嶋)太平洋戦争前の、日本に対してのABCD包囲網のようですね。

宮家)そうですね。ちょっと言い過ぎかもしれませんが、アメリカは自分でやるより、向こうに手を出させた方が、やりやすいでしょう? それで、過剰反応をして誤算すれば、北朝鮮はそれで終わりだし。

高嶋)でも、「うっかりアメリカ本土に間違えて落としたらヤバい」という話を先ほどしましたよね。これ、「手を出させる」と言っても、北朝鮮もできないですよね。

宮家)手は出せないですよ。昔日本はやってしまいましたが、本来はやってはダメなのです。北朝鮮が合理的に判断したら、石油も出入りも止まれば、もうギブアップしなければいけないはず。北朝鮮はミサイルを持っているだけで、昔の日本よりも力はないですから。
ですから、それを狙っているのだと思います。アメリカがすぐに先制攻撃をするわけではなく、じわじわと……

高嶋)昔の日本の軍部と北朝鮮は違うと思いますが、追いつめられると、どんなバカな結論を出すのか、本当に分からないですよね。来年も心配が続きそうです。

 

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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