名曲「雪の降るまちを」はラジオドラマの時間を埋めるために作られた?

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名曲「雪の降るまちを」はラジオドラマの時間を埋めるために作られた?

きょう1月8日は、成人の日の祝日。
これまでも、休日の月曜日は「音楽特集」を、お送りしてきました。
夏のお盆休みの時は「夏の童謡」
10月の体育の日は「運動会で流れる音楽」
そこで!きょうは「冬の童謡」についてお送りします。

1曲目は、今流れています「たきび」。作詞は、巽聖歌さん。岩手県生まれで、あの北原白秋に師事した詩人。18歳の時に上京して、横須賀など知り合いの家を転々。そして1930年代、東京の新井薬師から中野に向かう途中の住宅街、現在の中野区上高田に、家を借りて13年間住んでいたそうです。そしてその場所を、朝、そして夕方、散歩しながら見た景色、情景がこの「たきび」の歌詞のモデルになっていると言われていて、現在も中野区のその辺りには「垣根」が残っていて、また歌碑も作られています。

この曲が、NHKラジオの「幼児の時間」という番組で初めて放送されたのは1941年(昭和16年)12月9日。この前日、12月8日、太平洋戦争が開戦されました。日本軍当局からの「たき火は、資源の無駄遣いに過ぎない、また敵機空襲の標的になり兼ねない」などのクレームを受けて2回放送し、その後は放送自粛になりました。

そして戦後、「たきび」の放送は再開されましたが、今度は、消防庁からクレームが入った。表向きでは「火災防止」ということでしたが、一説によりますと、GHQの支配下において、反乱の象徴とも見える「屋外の火」を禁ずるためと、言われています。しかしそんな警告にもめげず、「たきび」の人気は、全国の幼稚園や保育園や小学校に広まり、1952年(昭和27年)からは小学1年生の音楽の教科書にも掲載されるようになった。

ちなみに教科書に掲載する際には必ず挿絵に、火消し用のバケツが描かれていて、それも「火災防止」のクレーム対策と、言われています。

続いては「かあさんの歌」。作詞、作曲は、窪田聡さん。
作られたのは1956年(昭和31年)。窪田さんは東京の下町、墨田区で5人兄弟の4男として生まれました。この詩の情景は農村。東京生まれの窪田さんにとって、農村の風景は第二次大戦中、疎開先の長野県の信州新町で見たもの。戦後、窪田さんは早稲田大学に合格しましたが、親からもらった入学金を持って家出し、勝手に製油会社に就職。その後、職を変え、そして何度も引っ越しを繰り返していった。そんなある日、兄弟が、窪田さんの居場所を見つけ、両親に連絡しました。すると母親から、窪田さんの元へ、郵便小包が届くようになった。その小包には、窪田さんが小さいころ好物だったチョコレートや
身体を気遣ってビタミン剤。さらに、手編みのセーターも入っていたそうです。
その後、窪田さんは曲作りを始め1956年(昭和31年)「うたごえ新聞」に、「かあさんの歌」を投稿したそうです。反抗心から、一度も「かあさん」とは呼んだことがなかった窪田さんが作った「かあさんの歌」は、ペギー葉山さんや、ダークダックスが歌い大ヒット。長野県の信州で、記念の歌碑が作られた際には、窪田さんのお母さんも駆け付け、息子を褒め讃えたそうです。

最後は「雪の降るまちを」。
この歌はとっても悲しい歌でした。まったく個人的な話なんですけど、この曲が流行っていた頃、小学校5年生ぐらいだったんですけど。父親が事故で死にまして。父親がいなくなった冬の夜、ラジオからこの曲が流れてくると、母親が泣くんです。それでね、私にとって忘れられない曲になりました。

この曲は、ラジオドラマの挿入歌だったんです。1947年から放送されていたNHKのラジオドラマ「えり子とともに」。戦後、新しい女性の生き方を模索する女性のお話。当時のラジオドラマは生放送でした。リハーサルで、セリフや音楽の時間を合わせ、30分の本番に臨んでいた。しかしある日、リハーサルで、どうしても、時間が余ってしまった。プロデューサーは、セリフを増やすように脚本家の内村 直也さんにお願いしましたが、無理だと断られた。それならばと、歌詞を書いてくれと再びプロディーサーが内村さんに頼んだ。仕方なく、スタジオの隅っこで、内村さんが詩を書き上げ、そして、ラジオドラマの音楽を担当していた中田 喜直さんが、その詞に曲を付け、わずか1日で完成したのが「雪の降るまちを」。この曲は、ドラマの数分間を埋めるための曲だったので、1番しか作っていなかったそうなんですが、放送終了後、問い合わせが殺到したため、慌てて2番と3番を作り、その後レコード化したそうです。

 

1月8日(月)高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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