「Tiger is Back !」(タイガーが帰ってきたぜ!)。アメリカのゴルフファンが、にわかに騒ぎ始めました。
アメリカPGAツアーの「ファーマーズ・インシュランスオープン」で、あのタイガー・ウッズが、久しぶりにいいところを見せました。4日間通算で3アンダー、順位のほうは23位でしたが、なにしろ予選を通過したのが、2015年のウインダム選手権以来、実に889日ぶり。4日間、持病の腰痛が全く飛び出さなかったということで、ウッズもかなりの手ごたえを感じているようです。
1月28日に発表された最新の男子ゴルフ世界ランキング。松山英樹は5位で変わらず、タイガー・ウッズは647位から539位に浮上。500位代というのは2016年6月25日付以来ということで、これでも上がってきたほうなのです。
とにかくここ何年か、ご難続きでした。2010年の女性スキャンダル発覚以来、私生活もゴルフのほうも、散々で、元奥様のエリンさんと離婚、慰謝料はなんと1億ドル。こんなのはすぐに返せる… と思っていたかどうかは知りませんが、2013年の優勝を最後に全く勝てなくなり、2015年には3度に渡って腰の手術を受ける羽目に。2016年の試合出場は、ついにゼロ。世界ランクも急降下、あっという間に50位以下に…。
久々に話題になったのは、去年の5月、アルコールか薬物の影響下で車を運転した疑いで米フロリダ州で逮捕されたときのこと。後ろ手に手錠をかけられて、目が宙をさまよっているように見える映像を見て、「これがあのタイガーか」とショックを受けたものです。
ウッズ本人も、すっかり自信と意欲を失くしてしまっていたようで、去年9月に「プレジデンツカップ」で惨敗を喫した際には悲痛な表情で
「今後のことは全くわからない」
と発言。引退の可能性さえ取り沙汰されました。この頃には、専属キャディーのジョー・ラカバに向かって、こう言ったそうです。
「前途がある若い選手へ乗り換えたほうが君のためだ。なんなら、僕が口をきいてあげるよ」。
ところがラカバは、頑としてこの申し出を拒み、ウッズの復活を信じ続けていたのだそうです。ですからラカバも、今大会の結果を受けて、復活への足掛かりだ! とばかりに、おおいに喜んでいます。
一時はかくも落ち込みに落ち込んでいたウッズの背中を押した出来事があります。それは、子供たちとのちょっとした一幕でした。去年、ウッズは、当時10歳の長女、サムちゃんと、8歳の長男チャーリーを連れて、サッカー観戦に。このとき、ウッズは、あのリオネル・メッシを、子供ふたりに引き合わせました。そして、得意そうな面持ちで、こう言いました。
「どうだい? ナマのメッシだよ。生きているレジェンドに会えるって、すごいことだろ?」
すると、子供たちが口々に、
「パパのいうとおりだね。でも、ボクたちも、ひとりのレジェンドと住んでいるよ」「そうだよ。パパが、いちばんのレジェンドだもんね」。
この言葉を聞いて、あのタイガー・ウッズが、ぐっ… と涙をこらえたそうです。
ウッズが最後にメジャータイトルをとったのは、2008年の全米オープンが最後。つまり、最愛の子供ふたりは、全盛期のウッズをまったく知らないわけです。それでも、自分のことを「レジェンド」と呼んでくれる…。この出来事が、タイガー・ウッズが久しく忘れていた闘志に火をつけたのだそうです。
今回の大会では、
「とにかく必死で一生懸命やっただけだ」
と殊勝に語ったウッズ。まだ、かつての天才ぶりは見せていませんが、 真剣な目で会見の言葉をこう結びました。
「今後はマスターズに向けて、しっかりと準備をしたいと思う」。
4月のメジャー第一戦、「マスターズ・トーナメント」。最終日のバックナイン、赤い勝負シャツを着たウッズの「タイガーチャージ」が、見られることになるのかどうか。本気のウッズが、帰ってきました。
1月31日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」