ラーメンが映画界を席巻する“ナゼ”『ラーメン食いてぇ!』
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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第369回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、3月3日から公開の『ラーメン食いてぇ!』を掘り起こします。
身体の底からラーメンを欲する!“飯テロ”青春ラーメンムービー
世界中でもっとも愛されている日本食は、いまや寿司でもなければ天ぷらでも和食でもなく、ラーメンです。大手ラーメンチェーンが海外展開を図るなど、いまや「RAMEN」は世界共通語。国内でも、ガイドブック片手に人気ラーメン店を訪れる外国人観光客の姿を目にする今日この頃。人種や国を問わず多くの人を惹きつけるラーメンは、いま、映画界をも席巻中。
「中華蕎麦とみ田」に完全密着、現代日本のラーメン文化を鮮烈に描いたドキュメンタリー映画『ラーメンヘッズ』(全国順次公開中)。斎藤工と松田聖子の共演でも話題のシンガポール・日本・フランス合作映画『ラーメン・テー』(2018年公開)。そして、ラーメン好きの心の叫びがそのままタイトルとなっている異色作が『ラーメン食いてぇ!』です。
読者による圧倒的な賞賛を経てPV数150万回以上! 林明輝による脅威のweb漫画「ラーメン食いてぇ!」を実写映画化した本作。
妻を亡くし、店を畳むことを決意したラーメン店の店主。新疆ウイグル自治区でのテレビ取材中に事故に遭い、遭難した料理研究家。ラーメン店主の孫で自殺願望を持つ女子高生。この3人が一杯のラーメンをきっかけに運命を変えていく、人生ラーメンムービーです。
主人公の茉莉絵を演じるのは本作が初主演となる中村ゆりか、茉莉絵の親友・コジマ役には葵わかなと注目の若手女優を起用。さらに石橋蓮司、片桐仁などベテラン俳優が脇を固め、究極のラーメンをめぐって、一度はつまづいた人生からの物語をハートフルに奏でていきます。
片桐仁演じる料理研究家が「ラーメン食いてぇ〜!」と叫ぶたびに、そして美味しそうにラーメンを食べる主人公たちの姿が映し出されるたびに、観客の胃袋は刺激されまくり。SNSなどで美味しそうな料理画像を“飯テロ”と呼ぶことがありますが、これぞまさに“飯テロ”映画の極み! 身体の奥底からラーメンを欲すること間違いなし。
食欲という人間の根源的な欲望が揺さぶられるのと同時に、人間の最大の喜びは、大切な人たちと一緒に美味しい食事をすることなのかもしれないということにも気づかされます。
ラーメン映画と言えば、伊丹十三監督の『タンポポ』が真っ先に思い浮かびます。それから『幸福の黄色いハンカチ』で、高倉健がラーメンをむさぼるように食べるシーンも印象的ですね。
今ではすっかりワールドワイドな存在となってしまったラーメン。映画ビジネスは、流行のものをいかに取り入れるかも指針のひとつ。そういった意味では、ラーメンは映画のテーマになり得る時代が到来したということなのでしょう。
ラーメン食いてぇ!
2018年3月3日から新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:熊谷祐紀
原作:林明輝「ラーメン食いてぇ!」(講談社「イブニングKC」所蔵)
出演:中村ゆりか、葵わかな、宅間孝行、森尾由美、水橋研二、片岡礼子、永岡佑、黒羽麻璃央、ふくまつみ、片桐仁、石橋蓮司 ほか
©林明輝/講談社・2018「ラーメン食いてぇ!」製作委員会
公式サイト http://ramen-kuitee.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/