またも繰り返される北朝鮮のいつものやりかた

By - NEWS ONLINE 編集部　公開：2018-08-07 　更新：2021-01-28

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（8月7日放送）にジャーナリストの有本香が出演。ARFと日朝会談、拉致問題について解説した。

ARF議長声明、不可逆的な非核化の文言が消える

シンガポールで開かれたARF（ASEAN地域フォーラム）の議長声明が発表された。焦点である北朝鮮の非核化について、北が約束した完全な非核化を実現することや、核ミサイル実験の自制を続けるように促しているが、北朝鮮が反発するCVID（完全かつ検証可能で後戻りのできない非核化）の表現は盛り込まれなかった。

飯田）声明では、4月の南北首脳会談で発表した板門店宣言や、米朝首脳の共同声明の完全で迅速な履行という努力継続を促したと。この2つの声明というのは、朝鮮半島の非核化ですよね。

有本）北朝鮮の非核化ということではないです。朝鮮半島の非核化というのを北朝鮮側から見れば、在韓米軍の核です。北朝鮮のリ・ヨンホ外務大臣がこの地域フォーラムで演説して、「アメリカが行動を示さない限り、自分たちが先に動くことは絶対に無い」つまり一方的な非核化には応じられないと言っているわけです。やれやれまたかという話です。

飯田）また、20年以上前から同じことを見続けているような気がしますが。

有本）もう四半世紀同じことの繰り返しですからね。困ったから表に出てきた、そしてちょっと殊勝なふりをしてみせるけれども、必ず噓をつく。あるいはごねていって、自分たちの欲しい物は手に入れる。一方で安倍総理は北朝鮮との様々な問題解決に向けて、ご自身と金委員長の対話が必要だと言っています。日朝首脳会談ですよね。これに関して積極的な姿勢を見せている。

自分だけが得をしたい北朝鮮の本音は変わっていない

飯田）昨日広島で行われた会見でも、そのように言及と。

有本）北朝鮮の場合わからないのが、例えば北朝鮮のメディアや閣僚も含めた関係者が表向き何を言っているかということと、北朝鮮自身がいまその思惑で動いているかは少し違いますからね。日本のメディアがよくやるのが、「北朝鮮の本音はどこにあるんでしょうか」。いや、本音は自分たちのスタンスは全く変えないまま、周りの国から取るものは取りたいということでしかないわけじゃないですか。

飯田）彼らの国益最大化というのはそこにあるわけですね。

有本）そこにしかないので、本音がどこにあるのかなんていくら言っても意味の無いことなのですけれども、その都度の思惑は変わるわけですよね。日本と話をして、一部譲るところは見せながら、日本からより一層のものを引き出そうとしているのだとすると、もちろんそれにそのまま乗る必要はないのです。例えば、日本は拉致問題を抱えていますよね。本当は韓国だって被害者はたくさんいるしアメリカにだっているのですが、これはもう日本固有の問題のようになっているから、日本が独自に北朝鮮との間で解決する問題だと考えると、日朝首脳会談に積極的なのは当然の姿勢だと思います。

飯田）ここの対話のドアについては、常に開いているということですね。ただ、無条件でというのはないと。

拉致問題解決よりも日朝国交正常化の論調

有本）日本国内でこのところメディアが大きく言っている「日朝国交正常化が先だ」みたいなね。それをしないと拉致問題解決に結びつかないというような論調を言い立てていますけれど、それはやっぱり違うだろうと思います。以前お越し頂いた横田めぐみさんの弟さんの拓也さんもおっしゃっていましたけれども、「そういうことじゃないんだ」と。拓也さんははっきりと「そういうのは自分たちにとっては非常に迷惑なノイズでしかない」と、迷惑行為だとおっしゃっているわけだから。拉致被害者のご家族がいちばんの当事者で、その人たちが「何でもいいから解決してくれ」と言ったって不思議でもないわけですよ。でもそれをご家族が言わずに、筋を通して全員一括で帰国させて欲しいと言っているわけですから、その筋は安倍総理も曲げられないだろうというところはあるでしょうね。
ただ、日朝は水面下ではかなり濃密に接触をしているという情報もあります。

飯田）いろいろなパイプというか、チャンネルはある。それがどこまで結実するかということですが、当然日朝で首脳会談をやるとなったら、会うための会談ではだめだということですね。

有本）そこに結果がついてくるという見通しがないと、会うべきでないというのが筋論ですからね。今回もARFに北の外務大臣が行って、各国と接触をしていますよね。北朝鮮という国に関して国際社会も関心を持っている。イランとの関わり合いというのも、ここにきてクローズアップされていますね。

飯田）イランと北朝鮮の関わり合いですね。

有本）非常に国際情勢が複雑怪奇で、更に凄いスピードで動いているので目を離せないし、でも日本側のスタンスというのはあまりぶれさせるべきではありません。