外国人就労拡大の最大の問題は日本の社会保障制度
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月30日放送)にジャーナリストの有本香が出演。代表質問においての消費増税、入管難民法について解説した。
代表質問スタート、安倍総理と枝野代表が激論を交わす
国会では昨日から安倍総理大臣に対する各党の代表質問が始まった。外国人労働者の受け入れ拡大に向けた法律の改正案を巡って、立憲民主党枝野代表からの「移民の受け入れ政策への転換ではないか」という指摘に対して、総理は「業種や期間も限られていて、指摘は当たらない」と反論している。
枝野代表)町の魚屋で、八百屋で、肉屋で、クレジット決済を利用する人などどれだけいるんでしょうか。
安倍総理)中小小売業に対し、ポイント還元といった新たな手法による支援を行うなど、引き上げ前後の消費を平準化するための十分な支援策を講じます。
飯田)いま国会の焦点とされているのは、この入管難民法の改正案というところですが。
有本)そうですね、今朝の朝刊各紙でもこの問題は出ています。外国人の就労拡大を自民党の部会が了承したということです。付帯決議的なものはついているのですかね?
飯田)永住とか資格を厳格化するとか、あとは年金や医療保険なども、きちんと確認しろというようなことはついています。
有本)「きちんと確認」というのは、どういう確認なのでしょうか。そこを制度的に担保しなければ、「きちんと確認しましょうよ」という、意気込みだけを盛り込まれてもあまり意味の無い話です。私はこの問題を取材して来て、警鐘は鳴らしていました。
飯田)月刊『正論』のなかでも書かれています。
日本の健康保険制度の特殊性~帯同していない海外に住む家族もカバーできてしまう
有本)雑誌『正論』のなかではシリーズ的に書かせていただきました。様々ポイントはありますが、基本、私は反対です。昨日、名古屋に行きました。そこでお目に掛かった方々には地方の経営者と言われる方も何人かいらっしゃって、やはり地方では人手不足が深刻な分野であることは、間違いありません。そこで外国人労働者を厳格に期限を定めて受け入れる、ということになっても、問題は社会保障制度ですね。内外の国民も、それからビジターとして来ている外国人も、日本の場合は区別無くこの社会保障制度に乗っかることができます。
これは良いように聞こえるけれど、実際移民を多く受け入れている、例えばオーストラリアなどにおいても、こんなことは有り得ません。国民あるいは永住権を持っている人と、一時的に働きに、あるいは留学に来ている人たちが、みんな同じプラットフォームに乗れるということはない。その方が異例なわけです。
飯田)はい。
有本)ここはしっかり線を引いてもらわないと、どうするのですか。
さらに1例を言うと、日本の健康保険制度の場合、国民健康保険を例にあげますと、派遣会社のようなところを通して来る際に、働きに来た方が会社の社会保険に入れずに国民健康保険に入るというケースがあります。国民健康保険でも、家族を帯同して来ない労働者の方々は、帯同していない外国にいる家族でも保険でカバーできる範囲になってしまう。ここなのですよ、日本の制度の特殊性は。一緒に住んでいない家族であっても一定の要件を満たせば、その人たちの医療費も含めて、日本の健康保険制度で面倒を見ることになってしまう。これが非常に特殊なのですよね。
飯田)海外で掛かったものも、ある一定の手続きを踏めばいい。
有本)そういうことです。
飯田)確かにわれわれが海外旅行に行ったときも、例えばクレジットカードで払っても「領収書と診断書があれば、お金が戻って来ますよ」と。同じシステムですよね。
有本)そうです。国民健康保険ですから、もともとは日本国民が外国に行って、医療費が掛かったときのための制度なのです。でも、そうではない形に利用することができる。
飯田)確かに。フルスペックということはそういうことだ。
本国に住む奥さんの出産一時金ももらえてしまう
有本)ときどき言葉を間違えて、「外国人による健康保険制度の悪用」という言い方をされますが、悪用する人ももちろんいるけれど、普通に使う分には悪用ではないのです。
飯田)制度上認められてしまっている。
有本)すでに問題提起が起きているのは、出産の一時金がありますよね、42万円ぐらいもらえる。これも日本に住んでいない、例えば日本にお父さんが働きに来ているけれど、奥様は本国にいらっしゃるという場合。これでももらえるということになる。何のための出産一時金なのだということです。
飯田)そうですね。
有本)日本において子供を産む人の負担を軽減するためのものでしょう?
飯田)そうですね、「少子高齢化のためだ」と言っているわけですよね。
有本)それなのに、日本に居住すらしていなくても貰えているというケースが、すでにあるのです。制度の穴ですね。これを塞がないで、意気込み的なもので「厳格に」と言われても、違うでしょうと思うわけです。
飯田)具体的な手当てを見せてくれと。
有本)ですからこの政策に関しては全く支持できません。そこを野党も具体的に突いて行くべきです。「移民政策ではないんですか」ということだけではなく、本当に国民のために、そういう穴について、きちんと細かく具体的に突いて行く必要がありますね。
消費増税はありえない
有本)それからもう1つ、消費増税。これは街場で聞いても賛成している人を、私はほとんど聞いたことがありません。
飯田)苦しくなるよねと。
有本)「低所得者に大きな打撃を与える引き上げが可能な状況じゃない」と、枝野さんもおっしゃっていて、その通りなのですが、これはかつて民主党だったときに決めた既定路線じゃないですか。
飯田)三党合意ってやつでね。
有本)そう。だから、いま枝野さんがこういう風に言っても、ちょっと説得力を持たないのは、そういう過去の経緯をみんなが覚えているからですよ。だとすると、まず最初に「いや、われわれも民主党時代に決めたことなんだけれども」と。「これは誤っていた」ということを最初に言うべきだと思う。
この6年間の安倍政権で、少なくとも経済は上向いて来ている。それをまず認めて、このマクロ経済の状況を見たときに、自分たちの6年以上前の決断は適切ではなかった、その上で、ということを言えば、説得力は増すのですよ。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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