中国がカナダ人逮捕を認める~アメリカはなぜ中国を警戒するのか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月14日放送)に国際政治学者の高橋和夫が出演。中国外務省が発表したカナダ人拘束について解説した。

中国がカナダ人逮捕を認める~アメリカはなぜ中国を警戒するのか

ファーウェイのショップ=2018年12月9日、中国・深圳(共同) 写真提供:共同通信社

ファーウェイの幹部逮捕で報復か~中国がカナダ人2人の拘束を認める

中国外務省は13日の記者会見で、いずれもカナダ人のマイケル・コブリグ氏とマイケル・スパバ氏を拘束していることを認めた。2人とも中国国家の安全に危害を及ぼす活動に従事していた容疑で、コブリグ氏は北京市国家安全局、スパバ氏は遼寧省丹東市国家安全局の取調べを受けている。

飯田)カナダ当局は今月の1日に、中国通信機器ファーウェイの孟晩舟副会長をバンクーバーで逮捕しています。こういう動きを見ていると冷戦のときみたいだなと思ってしまいます。

高橋)米中の経済面での冷戦かもしれないですよね。貿易面での摩擦も激しいですし、このファーウェイ幹部の方は、バンクーバー経由でラテンアメリカに行こうとして、空港で抑えられています。バンクーバーは中国系、特に香港の方が沢山不動産を買って、ホンクーバーなんて呼ばれているくらいです。この方もそこに住宅を持っています。背景にあるのはもちろん貿易摩擦もあるのですが、ハイテク分野の将来の覇権を巡る、米中の対決の構図が強いと思います。
中国の習近平さんもAI(人工知能)を制する者が世界を制するというような言い方をして、中国がこの面で主導権を取りたいということを言っています。これにアメリカは脅威を覚えているのだと思います。もう1つは、中国はこれまでに大変な発展を遂げて来たわけですが、どうやって技術的に中国が発展したのかと言うと、アメリカに言わせれば、アメリカの企業のコンピューターにハッキングして知的財産を盗んで行って、それでいまの中国がある。こんなことはもう許さないぞ、という中国のサイバー面での行儀の悪さに苛立ちが出て来ているのだと思います。

中国がカナダ人逮捕を認める~アメリカはなぜ中国を警戒するのか

中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟最高財務責任者(CFO)(ロシア・モスクワ)=2014年10月2日 写真提供:時事通信

豊かになったらパンダではなく、ドラゴンとなった中国

飯田)ちょっと前までは、親中派もアメリカのなかには沢山いました。いまは一色に、特にITに関しては中国を許さない、というようになって来ていますね。

高橋)アメリカのなかでは、中国の発展を助けて中国が豊かな国になれば、アメリカやヨーロッパのようにまともな国になるという幻想があったのです。しかし、結局中国がどんどん経済的に強くはなるけれど、ちっとも自由にはならない。それで夢から醒めたら強い中国がいた、という感覚です。これは日本の中国を見ている人もみんなそうですよ。だんだん自由な中国になると何となく期待していたらそうじゃなかった、というところがあると思います。

飯田)クリントン政権やブッシュジュニア政権で寛容政策と呼ばれたものだと思いますが、資本主義は入ったけれども民主主義は一切入らないということでしょうか?

高橋)専門家の間でよく言われていたのは、「中国は豊かになったら優しいパンダみたいになるんだ」と言うパンダ派の人たちと、「怖い龍になる」と言うドラゴン派の人たちがいたのですが、どうもドラゴンズが勝ってしまったなという感じです。中国から技術を盗まれるのも嫌なのですが、実は中国は盗まなくても自分で技術を作る力を蓄えつつあるんじゃないかというのも脅威なのです。アメリカ人が思って来たことは、アメリカみたいな自由な社会だから技術が進むということだったのですが、国家が統制して応援したらそれなりに伸びて行くという、新しい発展のモデルを中国が示したのも、アメリカにとっては脅威なのだと思います。

飯田)そうなると、価値観からして衝突することになって来ますね。

中国のハイテク技術躍進はかつてのスプートニク・ショックの再来

高橋)そうなのです。かつて、アメリカはそういった技術面の挑戦をソ連に受けたわけです。人工衛星を最初にソ連が打ち上げることで、アメリカは全力を挙げてそれに追いついたのですが、いまはスプートニク・ショックの再来なのだと。アメリカは本腰を入れて中国との技術競争に勝たなくてはいけないという議論や雰囲気が、だんだん浸透しているような気がしますね。

飯田)それは、アメリカファーストの別の側面でもあるということでしょうか?

高橋)それが、アメリカの将来の技術と経済を守るという側面だと思います。同時に、アメリカの都合の良いところはアメリカファーストなのですが、同盟国はアメリカについて来て欲しいところがあって、ジャパンファーストやヨーロッパファーストは許さなくて、「中国のファーウェイを買うな、アメリカのもので技術面はお願いします」と言って来ていますよね。

中国がカナダ人逮捕を認める~アメリカはなぜ中国を警戒するのか

中国広東省深圳市にある華為技術(ファーウェイ)本社キャンパス(ゲッティ=共同)=2018年12月7日 写真提供:共同通信社

日本の携帯各社が、ファーウェイ製品の撤去に

飯田)日本の携帯各社も、ファーウェイ製の基地局の機器もどんどん撤去して行くと。昨日ソフトバンクも、現状使っている物もどんどん替えて行くという話をしていました。政府調達も替えて行くし、日本は基本的にアメリカと歩調を合わせる形になっていますね。

高橋)ソフトバンクという会社はアメリカに対する投資も大きいですから、それがある意味人質です。ですからアメリカの意向に逆らわない。中国製のハイテク機器を入れたら情報が盗まれるのではないか、という懸念は前から言われていたのです。じゃあアメリカの機器を入れたら大丈夫かと言うと、それはアメリカが盗むだけですが、アメリカは日本の同盟国だからということなのでしょうね。

飯田)それほど無体はして来ないと信じたい。

高橋)信じたいですよね。メールだって何だって、グーグルを使えばアメリカの会社ですからね。アメリカは自由に読めるわけですから、アメリカに盗まれるか中国に盗まれるかの違いかもしれないですね。

飯田)メールも頂いていまして、“ヤスユキ”さん45歳、自営業で港北区の方。「この中国の対応、まだこの時代になってもそんなことをしているのかと呆れてしまいます。ファーウェイにはよっぽど後ろめたいことがあるのだな、と客観的に見て感じました」と。いきなり拘束、容疑分からずとなると、びっくりしてしまいますよね。

高橋)ファーウェイに言わせれば、ファーウェイの幹部もいきなり拘束ですからね。容疑はイラン絡みの不正ということなのですが、誰が見ても別件逮捕だろうと思っています。それはアメリカ並と言うのですが、いまアメリカが酷いから、アメリカ並にやられると酷いのですよね。

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