男子テニス・錦織 苦しかった2018年に学んだこと
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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、6日、約3年ぶりにツアー優勝を飾り、完全復活をアピールした男子テニス・錦織圭選手のエピソードを取り上げる。
「とてもうれしい。やっとタイトルが取れた。素晴らしい決勝戦だった。日本での決勝で彼(メドベージェフ)に負けていたから、今日はリベンジができてうれしい」
6日にオーストラリアで行われたツアー開幕戦・ブリスベン国際のシングルス決勝で、錦織圭がロシアのダニール・メドベージェフを6-4、3-6、6-2のフルセットで下し、約2年11カ月ぶりのツアー優勝を果たしました。
決勝戦、錦織は第1セットでメドベージェフにゲームカウント0-3と主導権を握られましたが、だんだんリズムをつかむと逆襲に転じ、第1セットを先取。第2セットは反撃を許しましたが、ファイナルセットは、ラケットを何度か叩きつけるなど集中力を欠いたメドベージェフのミスを誘って、錦織がリード。そのまま押し切り、通算12個目のタイトルを獲得しました。
錦織は世界ランク9位。メドベージェフは16位なので格下ですが、去年の楽天・ジャパン・オープン・テニス・チャンピオンシップス 2018決勝でストレート負けの屈辱を味わった相手だけに、喜びもひとしお。
しかも錦織は、2016年2月にメンフィス・オープンで優勝して以来、約3年ぶりのV。決勝ではなんと9連敗中でしたが、あと一歩のところで勝てなかった勝負弱さも返上する、実に大きな勝利でした。
一昨年8月、ラケットを操る右手首を故障し、競技生活最大の危機に陥った錦織ですが、あえて手術を回避。治療しながらプレーする道を選びました。「一生不安を抱えたまま、テニスをしないといけないのか?」と、つい弱気になることもあったそうです。
去年1月、ツアーの下部大会で復帰しましたが、全力でプレーができず、世界ランク200位以下の選手に1回戦で敗れたことも。最高4位だった世界ランクは、4月の時点で39位まで落ちこみました。
試合中に痛む手首。故障再発の恐怖との戦い……。普通なら心が折れそうになるところ、錦織はフォームをコンパクトに変えたり、サーブを改良するなど工夫を重ね、勝負勘を取り戻して行きました。そんな地道な努力が実り、全米オープンでベスト4入り。11月、世界ランクトップ10に返り咲きを果たしたのです。苦しかった2018年について、錦織はこう語りました。
「いろいろ乗り越えた1年だった。ケガもそうだし、メンタルもそうだし、体が強くなって痛みが出なくなったことも、例年にはなかったこと。乗り越えたというか、良くなったこともたくさんあったと思う」
「ようやくベストの状態で戦える」と自信を持って迎えた今シーズン。ツアー開幕戦で幸先のいいスタートを切った錦織の次の目標は、悲願のグランドスラム制覇です。14日にメルボルンで開幕する全豪オープン。挫折を乗り越え、一回り大きくなったいまの錦織なら、いきなり快挙を達成してくれるかもしれません。