ガソリン代はこのまま高止まりするのか
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ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(5月3日放送)に外交評論家の宮家邦彦が出演。アメリカの新たなイラン制裁について解説した。
アメリカがイラン産の原油全面禁輸開始
アメリカのトランプ政権は現地時間2日の午前零時、イランに対する経済制裁に伴い、イラン産原油の全面禁輸を開始した。原油の輸出が国庫収入のおよそ4割を占めるとされるイラン経済に大きな打撃となることは確実で、原油相場は上昇傾向が続く可能性がある。
飯田)アメリカはもともとイラン原油の禁輸を打ち出していましたけれど、一定の国、日本もそうですけれど、には猶予措置があった。
宮家)8か国でしたかね。それがそろそろ1年近くやっているわけでしょう、猶予はもうだめよという話でしょうね。私自身はイランの核合意からアメリカが離脱したことは良くないと思うけれど、もともとあの核合意が立派な合意かと言われれば私は全然立派だとは思っていないんです。
イランも北朝鮮ほど悪くはないけれど、やはりどうしても一部には核開発したい人がいて、昔は秘密裡にそれをやっていたこともあった。だから、2014年国際社会はイランにちゃんとタガをはめようとしたということです。しかし、私に言わせれば、タガははまっていなかった。要するに、イラン核合意なんてまるで不十分だと思っていたので、珍しく今回はトランプさんと意見が合うんですよ。
イランの何が悪いんだという人もいますけれど、私に言わせれば、あれだけの大国が、あんな変な体制の下で、石油の豊富な湾岸の反対側のアラビア半島の産油国に対して圧力を加え、さらにイラクを実質的に取り、シリアに介入し、そしてレバノンにもイエメンにも介入をしているわけですね、ちょっとやりすぎじゃないかと。
そういう意味では私はイランも相当反省しないといけない点が多いと思っていますが、我々にとってとりあえず直近の具体的問題は、ガソリン代が上がっていることです。毎日1円ずつ上がっていくような気がしますよ。うちの近くでは今150円を超えています。
本来であればイランの原油生産分がマーケットで減るわけですから、アメリカが増産できればいいのだけれど、それができないからサウジアラビア、アラブ首長国連邦に増産を、というように言っていますけれど、そんなに簡単に増産が出来る状況じゃないかもしれない。第一に、サウジアラビアからすれば増産はいいけれど、逆に値段下がっちゃうじゃないかと。
飯田)そうなりますよね。
宮家)こういう心配がある時は皆なかなか増産しないものです。原油の値段は高くなっているわけだから。経済の力学としては必ずしもうまくいかないんですよね。私は残念ですけど、短期的にはガソリン代はこのまま高止まりするだろうなと心配しているわけです。
もっと大きな問題は、イランが中長期的にどうなるかです。これだけ厳しい経済制裁が再開され、2014年以前の状態に戻ってしまった。イランの核合意ができたときは、イランの一般庶民も、ヨーロッパがイランに投資するからイラン経済もどうにかなるだろうと思っていたのですが、それが下手すると全部チャラになっちゃったわけですよ。
イランとしては2つの選択肢しかない。一つ目は、ごめんなさいと、交渉をやり直して完全に核兵器開発計画を廃棄で合意するという選択肢。でも、あのイランがそんなことやるわけないじゃないですか。
そうなると、もう1つの選択肢は、イラン政府により強硬な連中がまた戻ってきて、再びやりたい放題をやる可能性です。これが心配ですよね。その意味でも、イランは国際社会の懸念をもう少し真剣に考えないといけないと思うけれども、アメリカのやり方も決してうまいやり方だとは思わない。当分両者のガチンコが続くということだと思います。
飯田)かつてイランでは、ハ―タミーさんという穏健派が行き詰って、アフマディーネジャードさんという強硬派になったことがあります。同じようなことになるかもしれない。
宮家)ハータミーさんが大統領に選ばれたとき、私は外務省でイランの担当課長でしたからよく覚えています。直観的にハーターミー政権の行く末は難しいと思いましたが、やっぱりあまり成功しなかったですね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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