話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、5月13日に復帰初ホームランを放ったエンゼルス・大谷翔平選手と、主砲・トラウト選手との絆にまつわるエピソードを取り上げる。
「捉えた感じも(スタンドまで)いく、と思いました。左翼は結構浅めなので、多少打ち損じでもいくのは分かっていたので、いくな、と思っていました」
13日(日本時間14日)、米ミネアポリスで行われたメジャーリーグ、ツインズ-エンゼルス戦。エンゼルス・大谷が、待望の今季初アーチを放ちました。
昨オフ、右ヒジの手術をしてから、この試合が復帰6試合目の大谷は、「3番・DH」で先発。1-2で迎えた3回、無死三塁の場面で打席に。
マウンドには、ツインズの開幕投手で、2年連続2ケタ勝利を挙げているペリオス。今季も5連勝中のエースでしたが、大谷は3ボール1ストライクからの5球目、外寄りの真っ直ぐを捉えると、打球はグングン伸び、115m先の左中間フェンスのはるか上にある電光掲示板を直撃! 飛距離131m、特大の今季第1号は、逆転の2ランホームランになりました。
大谷は9回にもヒットを放ち、2試合連続のマルチヒット(複数安打)をマーク。勝利に貢献しました。翌14日のツインズ戦でも3安打を放ち、ここ3試合で12打数7安打の固め打ち。打率を3割台に乗せました。
今季は二刀流ではなく“打者限定”で復帰した大谷ですが、その1発を、チームメイトたちも心待ちにしていました。
「みんな待っていた。彼が入るだけで打線が一気に変わる」(ラステラ内野手)
「これから何度も見られる光景だろう。同じチームで良かったよ。彼に対する配球を考えなくてもいいからね(笑)」(スミス捕手)
そして復帰第1号をことのほか喜んだのは、大谷の前を打つ、メジャーを代表するスラッガー、マイク・トラウト(外野手)です。三塁ランナーは彼でしたが、
「素晴らしい気分だった。ベース上にいて(大谷の本塁打を)見ることができた。彼にとってもいいこと。嬉しく思う」
今季のエンゼルスは、大谷復帰後の打順を「2番・トラウト、3番・大谷」にしています。昨今、球界では巨人の「2番・坂本、3番・丸」のように、2番に主砲クラスの強打者を置き、積極的に点を取りに行くオーダーが新しい潮流になっています。なかでも「トラウト・大谷」のコンビは「トラウタニ」と呼ばれ、メジャー最強の2&3番と言われています。
トラウトは、現在27歳。エンゼルス生え抜きのスターで、2011年、19歳でメジャーデビューを果たしました。12年にアメリカン・リーグ新人王、14年・16年にリーグMVPを獲得。さらにオールスターゲームでも、14年・15年と2年連続でMVPに輝く史上初の快挙も達成しました。
こんな勝負強いスーパースターをよそに流出させてはなるものかと、エンゼルスは昨年オフ、北米プロスポーツ史上最高額の12年総額4億2650万ドル(約471億5000万円)の超大型契約を結び、大きな話題を呼びました。この総額を12で割ると、年俸はなんと3554万ドル(約39億3000万円)。日本の球団1チームの総年俸を超えてしまう額です。
メジャー入りに際し、大谷がエンゼルスを選んだ決め手は、トラウトがいたからではないかという説もあるほどで、その真偽はともかく、世界のトッププレーヤーを目指す大谷にとって、最も刺激を受ける存在と言っても過言ではないでしょう。
2019年7月、25歳になる大谷とトラウトは年も近く、お互い尊敬し合う存在。普段も大の仲良しです。
2年前のオフ、エンゼルスとの交渉の席でも、テレビ電話でトラウトと会話。17年12月9日(日本時間10日)に行われた入団会見の際、こんなシーンがありました。実はその日がちょうど、トラウトの結婚式の日だったのです。
大谷は会見で、トラウトに「おめでとう!」と祝福メッセージを送ると、背番号について尋ねられ、こう答えました。
「本当は27番にしたいと思ったが、埋まっていたので17番にしました(笑)」
27番は、誰もが知るトラウトの背番号。記者たちは大爆笑し、このジョークで大谷は現地ファンの心をつかんだのです。
昨年(2018年)、大谷がア・リーグ新人王に輝いた際、トラウトはツイッターで「偉大なチームメートで、これまで見たことがないほど素晴らしい人間」と激賞した上に、何と日本語で「大谷翔平選手、おめでとうございます!!」と記したほど。
「トラウタニ」コンビが、エンゼルスをワールドシリーズに連れて行ってくれることを、ファンは心待ちにしています。