マスコミが取り上げない「日産事件のあること」

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ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(6月10日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。日産の前代表取締役ケリー被告が月刊文藝春秋で西川社長を告発したことを受け、日産事件の裁判のあり方を解説した。

マスコミが取り上げない「日産事件のあること」

【日産自動車2018年度第3四半期決算発表】会見する日産自動車の西川広人社長=2019年2月12日午後、横浜市西区の日産自動車グローバル本社 写真提供:産経新聞社

日産ケリー被告、月刊文藝春秋で西川社長を告発

カルロス・ゴーン被告と共に金融商品取引法違反の罪で起訴された日産の前代表取締役グレゴリー・ケリー被告が、6月10日発売の月刊文藝春秋の取材に応じ、西川広人社長が2013年、西川氏自身の新しい家を一旦日産の資金で購入するよう依頼して来たと話した。

飯田)2013年の春頃の話で、最終的には実現しなかったということです。それ以外にもいろいろ答えています。

日産事件で行われている「事実上の司法取引」

須田)犯罪行為に手を染めたのはケリー、ゴーン被告だけなのかということが言われていましたが、積極的かどうかは別として、指摘されている犯罪行為、金融商品取引法違反等に西川さんも主体的に関わっていたのではないかと、私は常に言って来ました。5年分の罪に問われて起訴されているのですが、その内の2年分に対しては、実は報酬をOKした西川社長のサインがあるのです。当時は代表権付きの社長ですから、代表権付きの社長がサインしたということは関わっているということです。もしこれを特捜部が犯罪行為だとするならば、形式的には西川さんも同罪です。ところが特捜部は西川さんに対しては、被疑者としての取り調べを行っていません。私は事実上の司法取引が行われたのだと見ています。この日産事件では司法取引が行われていて、本来ならば被疑者になるべき2人の人間が罪を免れている。ただその2人には、西川さんは入っていないのですよ。

飯田)入っていないのですね。

須田)そうです。だから先程「事実上の」と申し上げた点は、そこにあるのです。

飯田)西川さんは絶対入っているイメージなのですが。

マスコミが取り上げない「日産事件のあること」

【ゴーン被告保釈】弁護士事務所を出るカルロス・ゴーン被告=2019年3月6日午後、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

本来罪に問われるべき人間が逃されていいのか

須田)その後に市民団体の代表者が、西川社長も金融商品取引法違反ではないのかと東京地検特捜部に刑事告発しましたが、不起訴処分になっています。なぜ不起訴処分になったのか、西川さんはこういう言い方をしています。「わけもわからないままサインした。サインしろと言われたので中身を検証して見ていない」と。形式的にサインしたという言い方をして、それを“良”として東京地検特捜部は不起訴処分にした。ところがいちばん大きな問題は、6月10日発売の文藝春秋にあるケリー被告の告発インタビューを見ると、「充分承知していたどころか、あなたも見返りを貰っていたではないか」という部分がこの記事の最大のポイントです。そうすると、これは司法取引という正規の手続きを踏んでいるわけでもない、実質的なお目こぼしであるというところで、果たして本来罪に問われるべき人間が逃されていいのか。日産事件がいかに無理筋でやっているのかが見えて来ます。

マスコミが取り上げない「日産事件のあること」

会見する特別背任などの罪で起訴された日産の前会長ゴーン被告の弁護人、弘中惇一郎弁護士=2019年3月4日午後、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

ゴーン氏、ケリー氏と法人としての日産自動車も被告

須田)もう1つは、この金融商品取引法違反の裁判において、不思議なことが行われています。この事件の被告はゴーン氏、ケリー氏は当然として、もう1人いるのです。1人という言い方はおかしいですが、法人としての日産自動車です。

飯田)そうか、法人としての日産も被告の側になる。

須田)この3者が被告になっています。法人としての日産は、どちらかと言うと全面的に東京地検特捜部に降伏していて、むしろ検察側の立場です。調書をかなり作っている。これに対してケリー、ゴーン氏はまったく逆の立場。それが3者、同じ被告の席に座っている。だからゴーン被告の弘中弁護士は、不公平だと言って分離裁判を要求したのです。私も当然だと思います。

飯田)そういうことだったのですね。そこまでの解説は記事でも見ませんでした。そもそも利益相反の人たちが同じ被告席に座っているのはおかしい、ということなのですね。

須田)近代裁判ではあり得ないです。そこまでしてゴーン、ケリー氏を有罪に持ち込もうとしているのかということになる。裁判所もそれに加担しているのですよ。

飯田)証拠などがいろいろ出て来ますよね。あれは双方一致でないとできないものではなかったのですか?

須田)そういった点で言うと、一致してしまうのですよ。検察にとって都合のいい調書や供述調書については、日産ももちろんどうぞ使ってくださいと。ケリー、ゴーン氏が反対しても、被告がそう認めているのだから証拠採用されるのです。

飯田)そこは被告の合議ではなくて、3人いる形になりますけれど、1人でもOKを出してしまえばOKになるのですか?

須田)そうです。圧倒的に不利なのですよ。だから弘中弁護士は分離しろと言ったのです。

飯田)分離して、裁判官も別で立ててやるという方がいい。齟齬が出たら、そこでまた付き合わせて行くという別の方法もあるでしょうし。

須田)問題なのはマスコミがきちんと報道しないことです。見て見ぬふりをしていることです。

マスコミが取り上げない「日産事件のあること」

日産自動車前会長カルロス・ゴーン容疑者の勾留理由開示手続きが行われる東京地裁の法廷=2019年1月8日午前(代表撮影) 写真提供:共同通信社

日産事件は東京地裁の復活案件

飯田)なぜそこまでして、ゴーンさんの首を取りに行くのですか?

須田)国の何らかの意向が反映しているのだろうと思うし、もう1つはこの案件が東京地検特捜部の復活案件なのです。

飯田)郵便不正などから始まった検察の凋落を、ここで食い止めるのだと。しかも新制度の司法取引というものが。

須田)その司法取引の仕方も問題があると思うので、後々に禍根を残すでしょう。

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