ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月5日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。日産の前会長であるゴーン容疑者が再逮捕されたニュースについて解説した。
ゴーン容疑者、4回目の逮捕~オマーンから5億6千万円を流用か
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が中東オマーンの販売代理店に、日産から支出された資金の一部を私的に流用し、合わせて5億6千万円あまりの損害を与えたとして、東京地検特捜部は昨日(4月4日)、特別背任の疑いでゴーン容疑者を再逮捕しました。特捜部が1度保釈された被告を再逮捕するのは異例で、ゴーン容疑者は容疑を全面的に否認しているということです。
飯田)ゴーン容疑者の弁護人である弘中惇一郎弁護士は昨日、日本外国特派員協会で記者会見をしまして、この逮捕に関して抗議しています。
宮家)それは弁護人だから当然ですね。まずあるのは形式論で、この釈放中に再逮捕するのは、おかしいではないかという議論です。人質司法なんて言う人もいますが、余罪…そちらが本丸だと思われますが、それが出て来れば、再逮捕もやむを得ない。形式の問題は別途議論すればいいと思います。
ゴーン容疑者の「中東」と「日本車」という環境
宮家)問題はこれが事件の本丸になるのかどうか、ということです。これって中東ですよね。私は正直、事実関係は分かりませんから、お話しできるのは一般論でしかないことを予めお断りしておきます。
中東はどちらかと言うと私の専門でした。サウジにも行ったし、UAEやオマーンにも行きました。オマーンはアラビア半島の南にあって、いい国です。いい人も多い。だけど対岸がイランですから、いろいろな商売があり、ある意味で上手く生き延びて来た人たちです。
それともう1つは車。私は外務省を辞めた後、車を外国に売っていたことがあります。その頃、私のところに日本の自動車会社の専属代理店をやりたいという中東の人が来たことがありました。中東では日本車はとても人気があります。ですから売りたい。代理店は、独占して日産の車だけを売れるわけですから、これはおいしいのです。みんな代理店になりたくてしょうがない。メーカー本社の方も、ちゃんとやってくれるところかどうかを見極めて選ぶ、こういうことでした。
この2つの経験からお話しできること。これはあくまで推測ですが、自動車会社の代理店になって、そして車を独占的に流してもらえば、その会社の社長さんが何か言うと、代理店はまず言う事を聞きますよね。
飯田)一般論としてお話を伺っていると、立場が全然違う。
ドルを使ったことでアメリカの財務省がその流れを追跡か
宮家)ゴーンさんは元々レバノン系だから、中東にも知人が多い。そうなるといろいろなことが可能になって来る。
でも、あくまで一般論ですが、やるならばドル以外でやりなさいよということです。ユーロでやる方法もあったはずです。それなのに、今回のようにドルを動かせば、アメリカの財務省はそれを追跡できるわけです。
資金の流れを調べると、オマーンからアメリカの会社にどうも送金されているらしいと分かる。そうすると今度はアメリカの会社のどこに送ったか、その会社がどういう会社で、そこから似たような額、または一部が日本に流れている。もしくは、ある人の口座に流れていたことが分かったとしたら、「ちょっとおかしいのでは?」ということになるのです。他の通貨でやればここまで追跡されなかったのに。アメリカはちゃんと見ていますよ。
こういう形で本丸が見えて来たのではないでしょうか、でもあくまでもこれは一般論ですよ。
捜査して行くうちにオマーンルートの情報が出て来て、それが本丸に近いものであるのだとしたら、再逮捕もおかしくはないのかなという気もします。
飯田)新聞各紙一面はゴーン容疑者4度目の逮捕を報じていますが、読売新聞は一面トップの見出しで『流用容疑 米と捜査共助』とまで書いています。
宮家)特ダネですね。
飯田)アメリカのドルに関しての情報は当然集まっているわけです。
宮家)オマーンにしろ、中東の国だとなかなか協力を求めることは難しい。ゴーンさんサイドの関係者もいるかもしれない。でもアメリカだったら第三者ですから、アメリカでの資金の流れがしっかりと把握できたのであれば、立件しやすいと考えたのでしょう。ようやく光が見えたのかもしれません。
飯田)これで捜査が進んで行くと、今後どういうものが出て来るのか。
余りにも大きい35億円という額
宮家)ご本人は否定するだろうと思いますが、報奨金と言えばプロモーション費用です。こんな額は扱ったことがないから分かりませんが、35億円の送金というのはすごい額です。35億を儲けるって大変なことですよね。
飯田)一体、車を何台売ったのだろうという数字です。
宮家)湾岸アラブにそんなに人口があるわけではない。もしかしたらそれはイランに流れているのかもしれない。
飯田)そうするとアメリカにとってみてもセンシティブな話になって来ます。
宮家)やったという根拠は私にはありませんが、あの地域にはもう1つの顔があって、イランとの密輸と言ったら言い過ぎだけれど、あの辺はイランと交易しています。イランは経済制裁をされていますから、欲しいものは手に入りにくい。でもお金持ちはいますから、欲しい物を手に入れるにはその人たちに頼むのかもしれない。
飯田)なるほど。
宮家)そう考えると、納得できないわけではないのだけれど、勿論、事実はわかりません。
飯田)そうなって来ると、フランスがなぜあまり反応していないのか、いろいろ考えてしまいますね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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