ツイッターでイランに報復示唆するトランプ氏の思惑
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月5日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。ウランの濃縮度を引き上げるとしたイランに対し警告したトランプ大統領のツイートについて解説した。
トランプ大統領がイランへの対抗措置を匂わす
アメリカのトランプ大統領は、イランのロウハニ大統領がウランの濃縮度を引き上げる方針を表明したことについて、「イランよ、脅しには気をつけろ。脅せば誰も経験したことのないほどの強さで、自分に跳ね返って来るだろう」などと対抗措置を匂わせ、ツイッターで警告した。
飯田)ロウハニ大統領は3日、ウランの濃縮度を核合意の上限にとらわれず、7日以降、必要なだけ高めて行くと発表。トランプ大統領がそれに対して、ツイッターで対抗措置を匂わせたということです。
トランプ大統領もイランも本音では戦争はしたくない
宮家)トランプさんが一体何をやりたいのか、多くのアメリカ人もわかっていないのです。今朝、たまたま面白そうだから印刷して持って来たのですけれど、僕が尊敬するワシントンの中東の専門家がこう言っています。「トランプさんはサプライズと不確実性を好み、脅威の認識や政策の選択肢については常に思い付きで対応し、自分の本能を常に信じ、敵対する人たちへの対応でもカオスを望む傾向がある」と。これはまさにいまトランプ政権がやっていることです。
トランプさんはこれでイランを挑発しているように見えますが、彼の本音は戦争なんかやりたくないのだと思います。大統領選挙中、彼は、前任者たちがイラクで、アフガニスタンであんな戦争をやったと批判して来たのです。そのトランプ氏がイランで戦争を始めたら、本当にジョークですよ。ではイランはどうかと言うと、イランも戦争をやりたいわけがないのですよ。イランがやったと言われるタンカー攻撃を思い出してください。写真を見ればわかりますが、船の喫水線の上に機雷を付けたわけでしょう。機雷というものは、沈ませるために船の底に付けるのです。ということは、攻撃者はタンカーを沈ませたくないのです。つまり、「私の気持ちをわかってくれ」ということです。彼らも戦争したいとまでは思っていないのですが、無人機とはいえ、アメリカの軍隊の偵察機を撃ち落としたということは、イランのどこかが狂って来ている可能性があると思います。計算とか、命令系統とか、誤算が始まっている可能性がある。それが最も心配なのですが。
イランに現在の核合意から自ら離脱させ、さらに厳しい核合意を結ぼうとしている米
宮家)しかし、状況は簡単ですよ。イランがウランの濃縮度を上げるという、つまりイランがいままでの合意から離脱をほのめかすということでしょう。それは、トランプさんにとっては「待っていました」、というものです。カオスを望んでいる彼は、どんどんやってください、と。彼の本音は戦争なんかしないで、いまの核合意はだめだから、まずは自分は合意から撤退し、イランに対しては最大限の圧力をかけてイランにも合意から離脱させる。そして新たに力の立場から、イランにはより厳しい、新しい核合意を結ばせようとしているのだと思います。
飯田)最後はイランに壊させるわけですね。
宮家)そう。そして核合意が壊れたら、もうヨーロッパもロシアも中国もないですから、改めてもう1度交渉をやり直そうと思っているのだと思います。そううまく行くかはわかりませんが。イランからすれば、核合意をあそこまでやったのにチャラにされて、もっと厳しい合意を結ぶだなんて、そんなもの誰もやりたくないですよ。やりたくないから強硬派が米国との対話を壊そうとしているのです。先ほどの私の友人のトランプ評と、いま実際に起きていることを見ていると、米国に戦略があって、それがしっかりと練られた上で、着実に一歩一歩イランを追い詰めて行くというものとはまるで逆です。やはりトランプさんは、本能に従いカオスを求め、サプライズと不確実性で思い付きの外交をやっていると言わざるを得ないですよね。
アメリカにとって核の問題のある国は北朝鮮とイラン
宮家)今アメリカにとって核の問題がある国は、北朝鮮とイランです。北朝鮮はもう持ってしまっているから、なかなか対応が難しい。しかしイランは持っていないから、まだ強気で行けるということなのでしょう。これが裏目に出て誤算が生じて、とんでもないことが起きないように祈るしかないと思います。
飯田)アメリカ兵に血が流れたら、ただでは置かないと。
宮家)それをやったらイランは終わりですよ。イランもそこまでやらないでほしいと思います。
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