イランのタンカー解放~それでも米との関係改善にはならない

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月16日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。イギリス領ジブラルタル当局が、7月に拿捕したイランの大型タンカーの解放を発表したニュースについて解説した。

英領ジブラルタルの自治政府がイランの大型タンカーを解放

イベリア半島南部のイギリス領ジブラルタルの当局は15日、EUヨーロッパ連合によるシリア制裁違反の疑いで、7月に拿捕したイランの大型タンカーの解放を発表した。イランは中東ホルムズ海峡でイギリスのタンカーを拿捕していて対応が注目されている。

飯田)シリアに原油を運ぶのではないかという疑いで、拿捕したというものでした。

宮家)EUの制裁に基づいてということです。イギリスはまだEU加盟国ですが、離脱したらまた話は別なのかもしれませんけれども。いずれにせよ、これが対イラン関係改善のきっかけになるかと言うと、おそらくならないでしょう。ただ、緊張緩和にはなると思います。イランもこれで拿捕したタンカーを解放するでしょう。あの人たちは基本的に、「目には目を歯には歯を」、ですから。問題はイギリスよりもアメリカの方です。アメリカはこの解放に反対していました。アメリカの態度が変わらないということは、簡単には解決しないということ。イランも自制はしていますけどね。これまでの一連の動きを見れば、最初は停まっているタンカーに手を出して、次は動いているタンカーの喫水線の上に穴をあけ、アメリカの無人機も撃墜したけれど、それ以上はやらないのですよ。

飯田)人が乗っているものは落とさない。

宮家)それをやったら大変なことになりますから。アメリカはそれを待っているわけです、対イラン攻撃をやりたい人たちが一部にはいますからね。その意味では、ある程度、双方とも自制が効いているのですよ。これが関係改善のきっかけになったらいいとは思うけれども、根本的な問題は解決していないでしょうね。

イランが間違えなければ、このままの小康状態が続く

飯田)イギリスでは、メイさんが退陣して、ジョンソンさんが首相になるというなかで、ジョンソンさんとトランプさんは悪くはなさそうだ、ということが言われていますが。

宮家)どちらかと言うと、似た者同士ですからね。

飯田)その関係であれば、アメリカが反対したらイギリスも動かなそうだと思うのですけれども。

宮家)しかしEUの制裁では、拿捕したイランのタンカーは制裁の対象となる国に行ってはいけないということで、イギリスはイランからその確約を取ったと言っているのでしょう。

飯田)そうですね。行かないという確約を取ったと。

宮家)そうなるとイギリスとしても「分かりました」、としか言いようがないので、解放するしかないでしょう。

飯田)あまり伸ばしていると不当だということになってしまう。

宮家)もし本当にそう言ったのであれば、捕まえておく理由がなくなる。当然これにアメリカは反対しますよ。しかしそんなことを言ったって、不当な対応はできませんからね、まずはこれでよかったのではないですか。

飯田)ただ、緊張緩和までは行くけれども…。

宮家)ある程度緊張は緩和するけれども、いまのような小康状態が維持できれば、とりあえずは万々歳ではないですかね。これ以上エスカレートして行くことが心配だったのですが、イランだって自分の力の限度はわかっていますから。アメリカと軍事的に喧嘩して勝てるわけはないのですから、そこは彼らもよく分かっています。イランは絶対にそこはやらないですよね。アメリカの方は、イランが判断をミスして攻撃を仕掛けて来ようとしたら、アメリカ国内、特にトランプ政権内の一部の人たちには、イランをやっちまえと言う人たちがいる。そういう人たちが喜んでイランを攻撃しましょう、となります。それはどちらにとってもよくないことですよね。イラクと違って、イランのように大きい民度の高い国と戦争をしたら、アメリカは二度とやめられなくなりますよ。イラクだってあんなに時間がかかったわけですから・・・。こうした戦争でも平和でもない状態が何年か続いていつの間にか、危機が去っていたというようにならないかな、と思っていますけれどね。

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