ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月18日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。17日に行われた目黒女児虐待死事件での東京地裁の判決について解説した。
目黒女児虐待死事件~母親に懲役8年の判決
2018年3月、東京目黒区で当時5歳の船戸結愛ちゃんが両親から虐待を受け死亡したとされる事件で、東京地裁は17日、保護責任者遺棄致死の罪に問われた母親の優里被告に懲役8年の判決を言い渡した。判決の言い渡し後、裁判長は「しっかりと考えやり直してください」と言葉をかけた。
飯田)3日に初公判、そして昨日(17日)判決ということです。
洗脳された人間の心は複雑でわかりにくい
佐々木)懲役求刑されたのが11年、弁護側は懲役5年が相当として、その結果が8年。これはかなり重い判決ですね。心理的なDV(ドメスティック・バイオレンス)で抑圧されていたとして、それがどのくらい影響していたのかが争点になっていました。裁判官はそこまでの強い影響はなかったと判断しました。でも私は本当にそうなのかを、社会として深く掘り下げた方がいいと思います。日本でも洗脳支配による事件が多発しています。有名なところでは尼崎事件。一体何人死んだのかわからないぐらい、人がたくさん死んでいます。ある女性が長年にわたりたくさんの人を支配し、疑似家族のようにして人を次々と殺した。あとは北九州監禁殺人。40代の男が一家をコントロール下にして殺人を犯した。意外に人間は、簡単に支配されてしまうものです。昔、スタンフォード大学でスタンフォード監獄実験というものが、学生を集めて行われました。学生を囚人と看守に分けて、看守が囚人をいたぶるというもので、あっという間に看守側が残酷になり囚人側が精神的に支配されてしまい、1週間ほどで実験が中止になるという恐ろしいものでした。簡単に人間は支配されてしまいます。あと、ストックホルム症候群。ストックホルムで起こった人質事件で、長い間人質にされると犯人の支配下に人質が置かれてしまい、人質である本人たちは自分の意思だと思っていますが、支配している犯人たちに同情心を持ってしまうという状況になったのです。
飯田)尽くしてしまうと?
佐々木)そうです。1990年代後半に、ペルーで日本大使公邸占拠事件がありました。3ヵ月ほどにわたって日本大使公邸が占拠され、当時僕は取材に行っていました。実際にはペルー国軍が突入して、人質を解放して終わりましたが、人質のなかにはゲリラに対して同情心を持った方がたくさんいらっしゃいました。洗脳と言うと、ゾンビのように意識がもうろうとしてコントロールされるイメージがありますが、支配された人に会ってみると意外に普通の精神状態で、本人たちも正常な状態だと思っています。でもやはり支配されていて、人間の心は複雑でわかりにくいのです。必ずしも意識がもうろうとしているという、テレビドラマでやっているような状態ではなくても、コントロールされていることがあるのです。
母親がコントロールされていなかったかどうか掘り下げて分析するべき
佐々木)今回の虐待死事件でも、優里被告は本当にコントロールされていなかったのかどうか、実際どのくらい支配されていたのかを、もう少ししっかり分析して欲しいと思います。もちろんお母さんは懲役8年で有罪なのだから、悪い人なわけです。悪い人だけれど、本当に被害者の要素はなかったのでしょうか。よく薬物犯罪でもあるではないですか。売人は悪人だけれども、使ってしまった人は有罪になり、それは悪人なのかどうか。逮捕して有罪にするのではなく、病院に入れた方がいいという話もあります。それはこの事件にも言えることで、お母さんについてもっと掘り下げるべきだと思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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