巨人が王手~原監督の“意表”の仕掛けに応えた亀井

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、10月10日のクライマックスシリーズ(CS)・ファイナルステージ第2戦で日本シリーズ進出に王手を掛けた巨人・原辰徳監督の采配にまつわるエピソードを取り上げる。

巨人が王手~原監督の“意表”の仕掛けに応えた亀井

5回巨人1死一、二塁、打者丸のとき、亀井が三盗を決める。三塁手北條=2019年10月10日 東京ドーム 写真提供:共同通信社

「(5回の重盗について)まあ、チャンスがあったというところで。それを見逃さなかったというところですね」

10日に東京ドームで行われた、セ・リーグのCSファイナルステージ第2戦、巨人-阪神戦。第1戦、セ最多勝投手・山口俊の好投で、阪神に5-2で快勝した巨人ですが、第2戦も投打が見事にかみ合い、6-0で連勝。優勝チームに与えられるアドバンテージの1勝も含めると3連勝となり、11日の第3戦に勝てば6年ぶりの日本シリーズ進出が決まります。

セ3位から、2位・DeNAを破ってCSファーストステージを突破。勢いに乗って東京ドームに乗り込んで来た阪神。かたや、試合間隔が空いたブランクが懸念された巨人でしたが、この2試合を観る限りそれは杞憂で、チームの総合力の差をまざまざと感じさせる内容になりました。

巨人が初回、併殺崩れの間に1点を先制し、迎えた4回……追加点が欲しい場面で、ゲレーロが貴重な2ランを放ち3-0。この1発もかなり効きましたが、さらに阪神へダメージを与えたのが、5回の亀井・坂本勇による重盗(ダブルスチール)でした。

初回も1番・亀井の二塁打、2番・坂本のヒットから先制点につなげましたが、5回も亀井が二塁打の後、坂本が四球で歩き、一死1・2塁のチャンスを作ります。

バッターは3番・丸。ここで原監督は、阪神3番手の左腕・島本がランナーがいても足を高く上げ、クイックが遅いのを見逃しませんでした。普通ならベンチは動かず、丸のバットに任せるところですが、指揮官はあえて「重盗」のサインを塁上の2人に送ったのです。

まず二走の亀井がスタートを切り、少し遅れて一走の坂本がスタート。2人が走った瞬間、スタンドから「おおっ!」というどよめきが起こりましたが、阪神ベンチもまったく無警戒。完全に虚を突かれた捕手・梅野は送球すらできず、茫然と立ち尽くすだけでした。

二・三塁になったことで、丸の犠飛で4点目が入り、さらに4番・岡本がタイムリーで5点目。これで勝負あり、というムードになり、重盗が結果的に試合を決めるビッグプレーになりました。

巨人はホームラン中心の大味な野球、というイメージがありますが、今季はレギュラーシーズンでリーグ2位の83盗塁を記録(1位は100盗塁の阪神)。重盗は4度も成功するなど、足を絡めた攻撃もたびたび仕掛けています。敵のお株を奪う“足攻”がまんまと成功し、原監督もしてやったりというところでしょう。

そして、指揮官からの突然の要求に、阿吽の呼吸で応えたランナー2人も見事でした。セCSにおける重盗は、2008年のファイナルステージ第3戦で巨人が記録して以来11年ぶりの2度目ですが、実はこのときも仕掛けたのは原監督、二走は亀井でした。

当然、原監督の頭のなかには、11年前の記憶があったはず。意表を突いた仕掛けの裏には、「カメちゃんならきっと成功させてくれるだろう」という絶大な信頼感があったのです。

第2戦では初回にも、阪神先発・高橋遥の150キロの真っ直ぐを右翼線に弾き返すと、迷いなく二塁に向かい、ヘッドスライディングを披露した亀井。

「シーズン中には絶対しないですけど、流れというか、チームを盛り上げるために、大事なところ」

その言葉通り、チームに流れを引き寄せ先制点につなげたこの二塁打。この日3安打を放ち、CS2試合で7打数4安打と、37歳のベテランがリードオフマンの役割をしっかり果たしていることも、巨人の強さの秘密なのです。

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