IS報復テロへの警戒は日本も必要~バグダディ容疑者死亡で
公開: 更新:
ニッポン放送「ザ・フォーカス」(10月29日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。バグダディ容疑者の死亡を受けたISの今後の動きにについて解説した。
ISからの報復が起こる可能性
アメリカの軍事作戦で、過激派組織IS(イスラム国)の指導者、バグダディ容疑者が死亡したのを受けて、アメリカ国務省は11月14日、関係各国の閣僚級による会合をワシントンで開催すると発表した。会合では、今後の掃討作戦の在り方を協議するものと思われる。
森田耕次解説委員)30ヵ国から40ヵ国集まるようですが、今後の掃討作戦のあり方を協議するようです。もう撤収してしまったアメリカ軍はどうするかということですよね。
佐藤)掃討作戦をやってもあまり意味がないのです。イスラム国は、本店と支店のような関係になっていないからです。ネットワークで、しかもバグダディみたいな人が勝手にISブランドを使ってしまっている。ですから、今回の報復は思わぬところで起こる可能性があります。
森田)メールもいただいています。横浜市の“りょうま”さん54歳男性の方、「バグダディ容疑者が殺害されましたが、これによりアメリカをはじめ西側諸国への報復はあるのでしょうか。特に日本の場合、来年は東京オリンピックがあり、ある意味テロの絶好のターゲットです。ビンラディンが殺害されてもアルカイダの活動が続いているのと同様に、今後のISの動きに不安を感じます」ときています。
佐藤)私も同じ不安を感じています。半分だけ空気の入った風船を想像してください。いま、シリアやイラクが風船の上の方を押さえると、下の方に空気が来るでしょう。そのようにして、中央アジアや東南アジア、日本に来る可能性は十分にあるでしょう。
森田)アフガニスタンなどにも戦闘員がいると言われています。
佐藤)日本のなかでも、数は少ないですがバグダディに共感を持って会いに行ったりするような人もいます。それが大学生を勧誘して、特に自殺願望のある人を集めたりしますから、日本だってテロの標的にならないわけじゃないし、外からではなく日本の内側から起きる可能性もありますから、本当に気をつけなければいけません。
森田)今回の作戦はヘリ8機で急襲をかけて、軍用犬も使ったようですが、2時間くらいで方が付いたようです。CIAのスパイも入り込んでいたようですね。
佐藤)でも、今回のバグダディクラスではなく、こんなことはしょっちゅうやっていると思いますよ。イランの外務省報道官が声明を出しているのですが、これが面白いですね。『そもそもISはアメリカがつくったのだろう』と言っています。確かに、アフガニスタンでソ連軍の侵攻に対応するためにつくったのですよね。用済みになったから処分しただけじゃないか、とイランは冷ややかです。この勢力はネットワークを持っているからなくなりません。今回のイランの冷ややかな分析は、客観的に情勢を見る際に役立ちます。
各国が情報協力
森田)一方で、トランプはトルコやロシアの名前を出して、支援に感謝しているということですから、ロシアからの情報提供もあったということですね。
佐藤)あったと思います。これに関してはロシアもトルコもアメリカも、よく協力しています。そして、名前は直接言っていませんが、イスラエルもです。イスラエルはいいネットワークを現地に入れています。
森田)そういう情報も集めながら、今回の作戦が成功したと。
佐藤)実は、日本もこのネットワークにはかなり食い込んでいるのです。最近はファイブアイズと言って、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドに日本とイスラエルを加えてセブンアイズにしようという動きも水面下であります。日本の対テロ対策能力はけっこう高くて、情報も持っているのです。これは首相官邸主導なのです。首相官邸における対テロ対策の能力というのは、国際社会でも認められてきて、日本も加わって欲しいという感じになりつつあるのです。
ザ・フォーカス
FM93AM1242ニッポン放送 月-木 18:00-20:20
番組情報
錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。