ニッポン放送「ザ・フォーカス」(11月5日放送)に中央大学法科大学院教授、弁護士の野村修也が出演。日韓首脳の接触について解説した。
およそ1年ぶりの日韓首脳の接触、茂木外務大臣は「評価は難しい」と発言
茂木外務大臣は5日の会見で、安倍総理大臣が訪問先のタイで韓国の文在寅大統領とおよそ10分間会話したことについて、「大きな評価をするのは難しい」と述べた。また、文大統領が高官級の協議を提案したことについては、「高官というレベルの問題よりも、協議内容が重要だ」と指摘している。
森田耕次解説委員)安倍総理大臣は4日、韓国の文在寅大統領とタイの首都バンコクでおよそ10分間言葉を交わしました。安倍総理はいわゆる元徴用工の訴訟問題について「日韓請求権協定に基づく日本の原則的立場に変更はない」と文大統領に伝えました。韓国側によりますと、「懸案は対話で解決すべきだという原則を確認した」ということで、文大統領は「必要であればさらにハイレベルの高官級協議を行う案を検討したい」と提起し、安倍総理は「あらゆる方法を通じ、解決策を模索するよう努力しよう」と応じたとしています。今回の接触について、茂木外務大臣は5日の記者会見で次のように述べています。
茂木外務大臣)昨日、安倍総理が首脳控室で文在寅韓国大統領と約10分間言葉を交わしたと。空いているソファーに腰かけて会談したと。安倍総理から文大統領に対して2国間の問題に関する我が国の原則的な立場を伝達したということでありまして、外務大臣を含め、外交ルートでの意思疎通は引き続き継続していきたいと考えています。今回のいわゆる10分間言葉を交わしたことをもってそこまでの大きな評価をするのは難しいと思います。
接触したこと自体を成果にしようとしている韓国
森田)このように、茂木大臣は「大きな評価をするのは難しい」と述べていますが、一方で文在寅大統領は「対話の始まりになり得る意味のある会合を行った」と発言しています。メールもいただいていますが、千葉市美浜区の“ちやばあば”さん「日韓首脳の接触をちゃっかり写真に撮って、これを利用するのでしょうね。アメリカに向けての「努力していますよ」ポーズですよね」といただきました。確かに事前に予定されたものではなく、文在寅大統領自らの呼びかけで実現した接触でしたね。
野村)国内向けを含めて、あの写真に1つの成果を見出そうとしているのだと思います。通訳を交えて10分間ということは、実質は5分間ですよね。そのなかで、文大統領のお母さんが亡くなったのでお悔やみを申し上げたわけです。さらには即位礼に来ていただいたお礼も述べていますから、実質はほとんど何も話していないということだと思うのです。だとすると、これを首脳会談の位置付けにすることはまったくできなくて、ある意味では接触をしたということに過ぎないと思います。日本側から見れば、こういう形で話し合うことは悪いことではないと思います。問題は、譲歩しないことですよね。いま日本側が示しているのは、旧徴用工問題については韓国に支払い済みなのだから、韓国側で国内の制度を整えて持って来てくれ、ということを言い続けているわけで、今回もそれを変えようとしているわけではないですよね。そこの部分を変えずに議論するのであれば、接触すること自体は悪くないと思います。
韓国はかなり焦ってきている
森田)韓国が近づいてきた狙いはどのようなところにあると思いますか?
野村)韓国はかなり焦っている面があると思うのです。特にGSOMIAの期限が来ています。
森田)今月の22日に期限で23日に失効予定ですものね。
野村)アメリカはこの破棄に対して強い懸念を表明していますから、もしかすると今回の接触を1つのきっかけとして日本との交渉のために、破棄を延期する方向に持って行くのかなという気もします。
森田)韓国の経済はどうなのでしょうか。半導体材料の輸出管理の見直しを日本がしましたが、その辺りの影響は。
野村)かなり効いていると思います。WTOに提訴はしていますが、WTOの結論が出るには数年かかると言われています。そうだとすると、これだけで韓国経済を回復するのは難しいと言えます。
森田)12月に日中韓首脳会談がありますが、そこで日韓の首脳会談が開かれるかどうかというところが注目されるかもしれません。
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