トランプ大統領が関税撤廃の“合意はない”というワケ

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月11日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。トランプ大統領が追加関税の撤廃に合意したという中国の発表を否定したニュースについて解説した。

トランプ大統領が関税撤廃の“合意はない”というワケ

米ケンタッキー州の選挙集会で演説するトランプ大統領=2019年11月4日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

追加関税の撤廃に合意せず。トランプ大統領が中国側の発表を否定

アメリカのトランプ大統領は11月8日、米中貿易協議を巡って両国が掛け合っていた追加関税の撤廃について、「何も合意していない」と述べた。中国側は段階的に追加関税を撤廃することで合意したと発表していたが、これを否定したということになる。

飯田)中国側は合意したと発表しましたが、1日もかからずに否定ということになりました。

トランプ大統領が関税撤廃の“合意はない”というワケ

中国・北京で建国70周年記念軍事パレードに参加する(前列左から)習近平国家主席、江沢民元国家主席、李克強首相(中国・北京)=2019年10月1日 写真提供:時事通信

現時点では条件に対しての中国の実行がないということ

須田)どちらの言っていることも正しいのだろうと思います。どういうことかと言いますと、この追加関税の撤廃に関しては、さまざまな条件が付いています。特に大豆を中心とする、農産物の大量買いということも条件に入っています。それについてはまだ実行されていないわけですから、実行度合に応じてアメリカ側は、徐々に追加関税を撤廃することになるのだろうと思います。最終的には、条件のなかに知的財産権の問題も含まれていますから、そこを中国がクリアできるかというところは不透明ですね。トランプ大統領が「撤廃に合意していない」と言っているのは、現時点では何も実行に移されていないのが実態なのではないでしょうか。もう1点注意しなくてはならないのは、トランプ大統領、特にホワイトハウスにとって、現時点で対中国の問題に関して、何か決定的なことを決めることはしないだろうと思います。11月に入り、来年(2020年)11月に予定されているアメリカ大統領選挙が本格化しています。

飯田)あと1年を切りましたね。

トランプ大統領が関税撤廃の“合意はない”というワケ

27日、米ホワイトハウスで「イスラム国」の指導者バグダディ容疑者について話すトランプ大統領(ロイター=共同)=2019年10月27日 写真提供:共同通信社

外交問題は大統領選挙が終わるまでペンディング状態となる

須田)トランプ大統領は完全に大統領選挙シフトを敷いていて、外交や安全保障問題などについては、すべてペンディング状態になっているのが実態です。

飯田)基本は先延ばし。

須田)そうですね。肝心なことについては大統領選挙後、自分の再選が果たされた後にすべて決めるということです。いま何かアメリカの内政や国政、外交に影響を与えるようなことが決まるはずがない。今回はアメリカの有権者のことも考えると、「ここは否定だな」ということになったのではないでしょうか。

トランプ大統領が関税撤廃の“合意はない”というワケ

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

トランプ大統領よりも議会のほうが中国に対して強硬派

須田)中国側も認識しなくてはならないのは、実はアメリカ国内の情勢を見てみると、トランプ大統領よりも遥かにアメリカ議会の方が中国に対して強硬派だということです。むしろトランプ大統領の方が「まあまあ」というスタンスを取っていることを、中国側はどう認識しているのだろうかと思います。

飯田)ひと頃は「パンダハガー」と言われて、中国寄りの議員もいると言われていたではないですか。ところがここへ来て、共和・民主問わず中国に対しては厳しいのが主流になっていますね。

須田)パンダハガーが多いのは民主党だったのですが、中国に対しては共和党以上に強硬派になっているのが実態です。ですから基本的には、アメリカは中国を敵と認識し始めたということです。それをアメリカ国民が支持しているという構図になっているのだと思います。

飯田)ロビー活動が中国は強いと言われて来ましたけれども、この辺は綻びが見えるということですか?

須田)アメリカの、特に東海岸を中心としたエスタブリッシュメントは、これまで中国は発展途上の段階にあるから、それが先進国の仲間入りを果たすに当たっては、きちんと人権問題についても対処するだろうと考えていた。しかし香港問題などを見ると、完全に裏切られてしまった。そこでガラッと対応が変わりました。アメリカはよくも悪くも、人権に対してすごく敏感ですから。これに対して中国は改める気配もない。

飯田)そこは歴史的にも、自由や権利を戦って勝ち取って来た国ということですか?

須田)ただその辺は、自らの正義や正しさを信じて疑わない国民性があって、それを押し付けて来る悪い部分がある。それが中国に向かってしまったというのはあります。

飯田)この対立は、あと何ヵ月という話ではなくて、あと何年どころか何十年もということになりますか?

須田)そうですね。ですから新冷戦というのは、最初はかつての米ソ冷戦みたいなことが起こり得るのかと思っていましたが、アメリカ国内のムードを見ると、それとは異なるもののようですね。

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