中国が「米と追加関税撤廃で合意」と発表する理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月8日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。米中の追加関税の撤廃について解説した。
追加関税の段階的な撤廃、中国の報道官がアメリカと合意と発表
中国商務省の高峰報道官は7日、米中両国が貿易協議の進展に応じ、互いが発動している追加関税を段階的に撤廃して行くことで合意したと記者会見で明らかにした。ただ、ロイター通信は制裁関税の扱いをめぐって米中の交渉は難航していると報じており、両国の主張が食い違えば部分合意の署名が遅れる可能性もある。
飯田)市場はこの報道に好感ということで、ニューヨークダウ平均株価は史上最高値を更新、2万7674ドル80セントで取引を終えたということです。
マーケットに対する中国からのメッセージ
宮家)今回の発表はまさに中国が目指しているものです。私は今でも米中の合意は遠いと思っています。ただ、いまの状況が続くと世界経済もおかしくなる。特に中国商務省の人たちは、中国経済を非常に心配しているのだと思います。発表内容を見ればわかりますが、具体的な数値や、具体的な時期は一切発表されていません。ということは、中国は完全撤廃を一括でやりたかったけれど、段階的にやるということである程度譲歩したのでしょう。アメリカが強いのだから仕方ないですよね。つまり、これは中国お得意の「発表のための発表」ですよ。なぜ発表のための発表をするかというと、中国経済のことを考えて、ここで「何らかの合意があるのだ」、「このままガチンコの喧嘩を続けるわけではないのだ」というメッセージを、市場に対して送るということです。うまいやり方だと思います。しかしよく見れば中身はないわけだから、結局は私がいつも言っているように、仮にできたとしても一時的、限定的、表面的な合意しかできない。今回もその一環です。
アメリカからも同様なメッセージが出る可能性も
宮家)今回、アメリカは何もコメントを出していません。中国が一方的に出しているということは、中国にとってはこうした発表がすごく大事ということなのです。しかし、米国で大統領選挙が本格化して、例えばアメリカ経済の数値がおかしくなるようなことがあれば、当然トランプ政権からも同じようなメッセージが出て来ます。それは中国に対してというよりも、マーケットに対してですね。今の米中は、交渉の実態がよくないに決まっているので、この種のメッセージをマーケットに出せるかどうかというゲームをやっているように見えます。
大統領選挙の争点は「足元の経済」
飯田)宮家さんが番組のなかで前に指摘されていましたけれども、アメリカ大統領選で負けた大統領は、足元の経済がよくなかったということが大きい。
宮家)常にそうです、外交は票になりません。
飯田)それは日本もアメリカも変わらない。
宮家)日本のマスコミからは「大統領選挙の争点は何ですか?」と聞かれますが、私の経験では外交が主要な争点になったことはありません。冷戦時代に一時的にはあったかもしれませんが。その点は基本的に日本も同じです。「オールポリティクス・イズ・ローカル」と言いますが、ワシントンではなく、地方の、地元の自分たちの生活が来年よくなるのか、ならないのか、そういうことで選挙民は判断するのです。大統領選挙は来年(2020年)11月です。浮動票の有権者の多くは普通は9月になってから投票態度を決める。8月まではお休みです。9月上旬にレイバー・デイという祝日週末があり、翌日の火曜日に出勤して、さてまた仕事をしなくてはと考える。そこでふと、「あれあれ、もう2ヵ月で選挙だな」となる。さてどちらに入れようと、ここでようやく決め始めるのです。それまでの世論調査は、あまり意味がないと思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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